自分との付き合い方

あれから数日が経ち、花はすっかり枯れていた。

けれど花から伸びている根のようなものはまだ首に存在している。花そのものは薬を飲んだその日の夜にポロっと取れてしまった。こんなにすぐ治るものだっけ?もう少し時間がかかるのでは?と思いつつ、速効性が強いものだったのかと単純に感心した。

そして不思議なことにあの薬を飲んでから肌の艶がやけに良い髪の毛までもがつやつやしている。これだけなら何の文句もないのだが…


二つ俺の生活に支障を与えている。それは身長と体重の増減が激しいことだ。少しの変化だったら俺だってダイエット女子とかではないので気にしない。通常ではありえない短期間での増減が起きているから驚きなのだ。

まず身長、夜寝ている時に関節がじわじわと痛み出し、全身に広がっていく。痛いは痛いのだが激痛はないのでそのまま寝落ちてしまう。

そして翌朝起きると着ていた洋服が小さくなってパツパツやダボダボになっていたりする。体重は普通に飲み食いしてるだけだと一気に5〜6キロ落ちてしまった。さすがに慌てた俺は食べる量を増やし食べ物を高カロリーなものにしてみた。そうすると体重は10〜15キロ程一日で増えていた。ここでまた普段の食生活に戻すと激しい吐き気に襲われて、トイレから一歩も出られなくなってしまう。最初はそれなりに怖かったのだが、大学での授業や課題が溜まっていたので痛みや吐き気に構っている暇がなかった。そして全てが落ち着いた頃、その痛みや不自然な体重の増減にも慣れてしまっていた。

怪奇現象のような出来事も日常になってしまえばさほど気にならない。こうしてこの現象をほったらかしにして毎日を過ごし、すでに数週間が経っていた。


もう俺はこれと上手に付き合っていく方向性を考えてはじめている。病院に行けばいいだけの話だが、命に別状がないのなら極力病院には近ずきたくない。

起きた時に服がきつくなるのなら大きめの緩い服を着ればいいし、一日のうちここまで体重が変わるなら三食のうち一食だけを高カロリーでジャンキーなものを大量に食べればいいことに気づく。バランスをとれば案外生きていける。けれど薬を飲む前よりも不便さを感じるの事実だ。けれどいくら調べても俺と同じ症状の人はいない。いないのなら病院に行っても解決策は見つからない気がする。残念なことに俺には学校で相談に乗ってくれるような気のいい友人は居ないので全てを自力で乗り切らなければいけない。

ネットは散々調べたからもう薬の開発元に直接聞いたほうが早そうだな。今日は午後の講義はパソコンの課題を提出して早めに電話してみよう。


午前の講義が終わり学生たちが思い思いに過ごしている。教室に残って喋りながら弁当を食べている女子たち、中庭ではチャラついた輩が意味もなく大声をだして騒いでいる。


俺は賑やかなキャンパスをあとにして、駅近のファーストフード店に入る。昼は必ずここに着てハンバーガー二つと特大ポテト、コーラのLサイズなどを頼んで席に着き、後は無言で食べるのみ。

隣では男子高校生たちがゲームをしながらわちゃわちゃしていて羨ましい。

最後に誰かと楽しく会話しながら食事をしたのなんていつだろう。というか最近誰かとまともに話をしたのいつだったけ。長いこと他人とコミュニケーションを取ってないことを痛感する。


俺は別に一人が好きなわけではないんだ。

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