第19話 飛ぶ斬撃か!?

 時折ガタガタと揺れる馬車の中そろそろ臀部が痛くなり始めたその時、誰も口を開かないままかと思いきや、シゲルさんがふと口を開いた。


「アーサ君、あの大猪を狩ったことは悪いこと、間違いだったと思っていますか?」


 あれ以来ずっと黙っている俺を案じてか、シゲルさんはそう優しく問い掛けてきた。


 別にそんなことを思っていたわけではないが、とはいえ何かで胸がつかえているかのように気持ちが悪いのは確かである。


 とはいえ、なんと言い返したものか上手く答えられずに黙っているとシゲルさんは1つの話を始めた。


「実は、あの大猪は多くの人を殺していたとすれば、どうですか?薬草などを積みに森に行った人の多くがあの大猪の被害にあっており、我々はその討伐も兼ねていたとすれば、どうですか?」


 ・・・と言われても、その質問にも上手く答えられない。


「それでは、フィーさん、貴女はどうですか?」


「わ、わたし!?」


 すると突然話を振られてフィーは驚いたが、彼女はしばらくうーんと眉をひそめて考え、答える。


「・・・まぁ、被害もなくなるわけで、良いことかな?」


 一方で、フィーのその答えにニッコリとシゲルさんは笑うと続けて尋ねる。


「でも、一方であの大猪は森の番人の役目を担っており、森の動物たちにとっては必要な存在であった。我々が狩ったことであの森の動物たちに被害が出たとすれば、どうですか?フィーさん」


「えぇ!?うーん、人間は被害にあってたわけだし、でも森の動物には必要であったわけだから、狩ってはいけない?狩ったほうがいい?あれ?あれれ!?」


 そのフィーの慌てようにシゲルさんは満足げに笑う。


 とはいえ、俺もそんなフィーと同じで頭の中が混乱している。あの時、大猪に恨みがあったわけではないし、奴に会いに行って攻撃を仕掛けたのはこちらである。勿論、人間相手ではそのようなことをしてはいけないことは分かっているし、そもそも人間相手にそんなことはしない。


 なら、人間相手でなければいいのだろうか?生きているように見えるけれども、所詮あの大猪もNPCであって死んだところで何も問題はないはずだ。問題はないというか、ただのデータなのだから、ただのゲームなのだから一々登場キャラクターたちのことを心配するなど阿呆らしい。


「俺は別に殺しても良かったと思いますよ。だってここはゲームだろ?俺たち以外は皆NPCなわけで殺すも生かすのもプレイヤーの自由だ」


「ほう」


 間違ったことは言っていないはずだ。ゲームをする人でNPCに気を使って遊ぶ奴などほとんどいない。気にするにしても同じ人間が操るプレイヤーぐらいで、NPCはそんな俺たちの引き立て役に過ぎないのだから。


 だというのに、俺のその答えを聞いてシゲルさんは何やら意味深な表情をしてるのが気に食わない。


「ふむふむ、ということはアーサ君はシルヴァリアにいる人を虐殺しても構わないということですね」


「はぁ!?」


 今度は、突然シゲルさんは物騒なことを言い出した。勿論、例え話なんだろうがそれにしてもあまりにふざけている。


「ど、どうしてそんな話になるんだよ!?別にそんなことは言ってないだろう!」


「そうですか?シルヴァリアにいる人達もNPCですよ?彼らを殺したところで現実の世界では罪になりませんよ。だって、”我々以外は皆NPCなわけで殺すも生かすのもプレイヤーの自由”なんですから」


「・・・ぐ」


 そう笑顔で言うシゲルさんに対して二の句が継げられない。わざわざ俺がさっき言った言葉まで使って反論の余地を無くした上に、おそらくこちらが何と言い返してもまだ絶対何か言い返す、そんな顔をしている。


 そんな俺とフィーの様子に見かねてか、ずっと黙っていたレイが口を出す。


「結局、何であろうと私たちの行動は善悪の両方を兼ね備えているんだよ」


「ほう!」


「罪を犯した人なら殺して良いのか、罪を犯しても殺してはいけないのか。ただ道行く人を殺して良いのか、道行く人は殺してはいけないのか。そんな善悪なんていうものは法律やら規律やらの客観的な総意がなければ、本人の意思に委ねられたものなんだよ」


「なるほど、なるほど」


「私は殺しは悪だと思っている、だからその意思を変えずに行動している。だからといって人やNPCを殺さないわけじゃない。こちらのためなら殺すこともある」


 レイはそう言い切るとそっぽを向いて黙ってしまう。というか、こんなに話をする彼女を初めてみた気がする。


「いやいや、レイさんに言われてしまいましたねぇ」


 すると、シゲルさんは自分のちょび髭をさすりながら嬉しそうに話し出す。


「アーサ君、私も誰かを殺すことは悪いことだと思いますよ。それは、こんなゲームの世界になっても変わらない意思です。でも、悪だと自覚しているからと言って絶対に殺しをしないなんてことはありません。今回みたいに猪を狩ることもあります。ただ悪だと自覚しているからこそ、先の行動に移すのです。この猪の死を無駄にしないためにも、この猪を多くのことに活用していきましょう。感謝を込めて」


 そして、途中で息を吸ってから言い切る。


「だから、アーサ君、君はその善か悪かを貫き通すのです。それを貫かないようであれば、いずれ君か君の大切な人に被害が及びます」


「善か悪かを貫き通す・・・」


 結果的に考えると、やはりあの時に大猪を刺すべきだったのであろう。俺の手で楽にさせるべきだった。この世界に閉じ込められた時から、あの狼たちを殺そうと剣を握った段階から、生きるために殺すことを貫かなければならなかったのだ。


 なのに、あの瞬間に殺すことへの善悪を悩み、貫くことができなかった。


 そして、命を弄んでしまったのである。


 自分に直接的な死の恐れがなかったことを理由に、あの状態の大猪を殺さないという偽善を選ぼうとしたのかもしれない。しかし、それでは、シゲルさんの言う通りにいつか俺やレイ、マサムネや皆に被害が及ぶかもしれない。


 そんなことはさせない、させないためにも強く意思を決めた。もうこの世界はただのゲームというわけにはいかないのだ。その手を躊躇えば、俺や俺の知っている誰かが傷つくのだから。


 すると最後に、シゲルさんは「それからあと1つ」と言ってもう一つ言葉を付け足した。


「それでも、世の中には殺しを善と捉える人もいるんですよ」と。


 その言葉がどういう意味を持つのか、気になったので尋ねようとしたその時、突然馬車がガタガタと激しく揺れたかと思うと今度は急に停止した。


「ちょ、ちょっとー!?ベッキーなにしてんのさー!!」


 馬車の中が無茶苦茶になる中、フィーがたまらず運転席に向かってそう叫ぶとベッキーは馬の先の路上を指差していた。


「ひ、人が・・・」


 心配そうにそう言ったベッキーの指先には、確かに1人の青年が路上でうつ伏せの状態で倒れていた。


「ベッキー・・・、まさか跳ねちゃったの!いい、殺しには善悪が・・・」


「殺してません!跳ねてません!!」


 そんなフィーたちのやり取りは無視して、俺とレイは急いで馬車から駆け降りると、路上にうつ伏せで倒れている青年の下へ向かう。


「うえ!?何だこの傷!?」


 近くに行って青年を抱き起して確かめてみると、彼の背中の数か所に切られた後あり、その血が服をべっとりと染めていた。


 俺が周りを警戒する中、レイがすかさず青年の生死を確認すると、幸いなことにどうやら彼は息はまだしているようだった。青年はただ意識を失っているだけだと分かり、またその右手にはSCシステム・クリスタルがないことからも彼はNPCだと断定できる。


 だが、青年は路上で倒れていた割には身なりが整っていることからも、それなりの身分のある人なのかもしれない。それに首からは何やら高価そうなペンダントをぶら下げており、腰にも高価な装飾の施された剣を装着している。


 ただ、何故こんな青年がそろそろ日が暮れる時間に、しかも1人でいたのだろうか。しかも、その背中を切りつけられいる。もしかすると、彼は何かに巻き込まれたか、今も巻き込まれている可能性もある。


 だとすれば、俺たちもここに長居するのは危険だと思い、レイに「彼を馬車に乗せよう」と提案しようとしたその瞬間、突然山の中から男の声が響いた。


「あぁ、いたいた!こんな所まで逃げちゃってさ・・・」


 すると、そんな呑気な声と共に妙な身なりの男が目の前に現れた。しかも、その男の右手には驚くことにSCが光り輝いている。


「ん!?あんた・・・、もしかしてプレイヤー!!」


「あ、あぁ・・・」


 その妙なプレイヤーは俺たちを見るやいなや、パッと顔を明るくして話しかけてきた。だが、久々に会えたプレイヤーだというのに、目の前のこの男から感じる気配は何故かあまり良いものではなかった。例えるなら、夜中のコンビニの前で屯してガヤガヤとうるさい若者の様。


「なんだ!まだここに居座ってるプレイヤーがいたとはなー、いやー驚き驚き。皆して北に逃げたかと思ってた」


「北に逃げた?それに、そっちこそプレイヤーみたいだが、こんな所で何をしている」


「あ?俺?俺は遊んでただけ」


 遊んでた?一体誰と。他にもプレイヤーがいるのか?ならとにかく一緒に街に来てもらって彼を保護したほうがいいか。日が落ちて暗くなれば、ここも危険になる。話は街でも聞けるだろう。


「・・・そこのNPCと」


 しかし、妙なプレイヤーはニタッと笑った。


「はぁ!?遊ぶって、この人は怪我してるんだぞ!」


「今・・・人って・・・言ったか?」


「あ、あぁ・・・」


 何もおかしなことは言っていない、現にこの青年は背中に怪我をしている。だというのに、目の前のプレイヤーは信じられないといったような驚きの顔を見せたかと思うと、彼は下を向きだんだんと肩を揺らし、徐々に笑い声がその口から漏れ出した。


「あはははは!!人って・・・、お前!そいつはNPCだろ!?人じゃないだろ!どう見ても!人は俺たちみたいなプレイヤーのことを言うんだぜ!」


「た、確かに彼はNPCだが、この世界では俺たちプレイヤーは”冒険者”で彼みたいなNPCは”国者”って呼ぶだろうが!」


 目の前のプレイヤーの態度に少しイラつき、声を上げて反論する。


「ぷっ!冒険者だって、バッカじゃねーのかよ!あはははは!!なになに、そういうプレイなの?設定なの?ここはゲームですよ、ゲーム!」


 このプレイヤーの態度は本当にイラつく。そんなんこっちも分かっとるわい!!


「まぁーまぁー、お前の遊びの邪魔はしないからさぁ。そのNPCこっちに返してくれよ」


「嫌だね、断る!!」


「ああ?」


 ムカついていたのもあって、条件反射的にそのプレイヤーの言葉を断ってしまった。全く、ゲームの中に閉じ込められてもこんな腹の立つ人間はいるのだな。本当に嫌になる、嫌になったから「嫌だ」と言ってやったぜ。


「・・・なんだよ、その断るって」


「断るものは断るって言ってるんだよ!この人は俺たちが連れて行く!大体、お前の態度が気に食わない!!」


「はぁ?・・・あぁ、ムカついてきたわ。マジで、クソがよ」


 すると、あちらも腹を立てたのか妙なプレイヤーはそう言うと自身の右手のSCに触れ、そこから一本の剣を取り出した。


「ムカつくからさぁ・・・、お前も死んどけやッ!!」


 そう叫び、妙なプレイヤーは手にした剣を大きく横に振りかぶった。だが、その剣の長さではまずこの距離で当たることはない。愚かな奴である。


 というわけで、彼が剣を降り終わったタイミングで突っ込むとしよう。彼には悪いが盾でその顔でもぶん殴って少し痛い目を見てもらおう。


「塒捲けッ!『蛇身ノ牙』ッ!!」


「ッ!?アーサ!!伏せろ!!」


「!?」


 だが、突然レイの声が両耳に響き、その声と同時に右耳の方から何かが飛ぶ妙な音がした。嫌な予感がしてすかさず身を屈めるが、ガキィンという金属の響く音と共に右側頭部に衝撃が走った。


「ぐぅあッ!?」


「チィ・・・」


 何が起こったのか、何をされたのか分からないまま、もう一度目の前の男に目を向ける。だが、彼と俺の距離は何1つ変わっていない。剣の長さも変わっていない。それでは何が俺の首を裂こうとしたのだろうか?


 すぐさま慌てつつも盾と剣を構え直しながら考える。だが、そんな慌てた俺の姿を見て、目の前の彼は嬉しそうに笑っている。


「避けろ!アーサ!!」


 先程の青年をシゲルさんに任せたレイが俺の後方から弓を射る。


 驚くべき早打ちで矢が放たれたが、彼が剣を振るうと、剣にもあたっていないにもかかわらずその矢は空中で叩き落された。


「な、なんだ!?飛ぶ斬撃か!?」


「違う!あれは・・・」


 レイが答えを言う前に、その男は剣をもう一度大きく縦に振った。すると、俺よりも後方にいるにもかかわらずレイはその攻撃を弓で受け、彼女の弓はバッサリと破壊される。


「こ、こいつは!?」


 そして、その光景を横から見ていた俺の目に写ったものは、いくつもの刃とそれを繋げる鋼鉄のワイヤーであった。


「どうやら、そろそろ気づいたみたいだねぇ。そうさ、こいつは俗に言う『蛇腹剣』ってやつさ。最も、はそうじゃないみたいだがな」


 自慢げにそう言った男が剣を振り回すと、剣は再び複数の刃へと形を変えまるで鞭のように蛇のようにしなった。


 さすがファンタジーな世界のゲームである。よく分からない鉱石があれば、よく分からない製造方法で現実世界にない剣も作れるのかよ!正直言ってずるいぞ!!


 だが、からくりが分かればどうということはない。


 すぐに盾を突き出し、目の前の男目掛けて突進を仕掛ける。奴の剣の形状は要するに鞭。であれば、離れているよりは近づいた方が戦いやすい。


「はっ!無駄無駄!」


 しかし、男はその俺の行動を笑い飛ばすとまたあの剣を振った。今度は右から左に振ったので、刃は左から来る!


「タイミングはもう覚えた・・・、よッ!」


「なに!?」


 頃合いを見計らって盾を振り、その刃を弾く。こっちは何度も死線を潜り抜けてきたのだ。今更、このようなことがあっても驚きはするが怯みはしない。


 そして、『蛇腹剣』が元の形に戻るより速く間合いを詰め、男の焦ったその顔に一撃拳をぶち込もうと足に力を溜める。しかし、俺に間合いに入られているというのにその男はにやりと笑っているだけだ。


「だから馬鹿なんだよッ!!」


 その表情に何か嫌な物を感じたが時は既に遅く、男の左手には先程まではなかった新しい剣がもう一本。しかも、その剣の先は俺の太ももにザックリと突き刺さっていた。


「がぁぁッ!?」


 そのあまりの痛さに後ろへ下がるが、刺された足には力が上手く入らずヨタヨタと後ろのめりに倒れ込む形になってしまった。


「お前、プレイヤーと戦った経験ないだろ?」


 目の前で余裕ぶった表情を見せるその男は俺の胸を蹴り飛ばし、仰向けになった胸に足を載せてじろりと顔を見下してくる。


「ぐっ!!?」


「対人戦ではさぁ・・・、右手のS・Cに注意すること、これゲームの常識」


 そして、男は躊躇なく剣を振りかぶる。


「死んで覚えな、これもゲームの常識」


 俺の目にはにやりと不敵に笑う男の顔が写り、次の瞬間、その男の左腕に矢が刺さる姿が写った。


「あぁぁぁぁ!?いっっってぇなぁーーー!!!おいッ!!」


 男は刺さった矢を抜き、その矢を射った張本人を睨もうとするが、こちらへ突進してくる存在に気付くと彼は咄嗟に後ろに跳んで回避した。


 俺が状態を起こそうとすると、なんとそばにはいつの間にか駆けつけていたフィーが槍を構えて来てくれていた。


「危機一髪だね」


 どうやらシゲルさんとフィーのコンビネーション技のおかげで一命を取り留めたようだった。あと少し遅ければ死んでいたかもしれない。同じ人間であるプレイヤーにゲーム感覚で殺されていたのかもしれなかったのだ。


「お待たせしましたッ!!」


 すると今度は、ベッキーの運転する馬車がものすごい勢いでこちらへと走ってきた後に、目の前で急停止した。


「フィー!!」


「はいよ!!」


 そのベッキーの声と共にフィーに強引に抱きかかえられ、馬車内で待機していたシゲルさんとレイに引きずり込まれるまま俺とフィーは馬車の中へと転げ入る。


 そして、残されたあの男を見向きもせずに、俺たちを強引に乗せた馬車はそのまま速度を上げ、その速度を維持し続けたまま乱暴にもその場から走り去った。


「ナイス、ベッキー!」


「ありがとうね、ベッキー」


「いえいえ、それよりあの男は?」


「・・・どうやら、追ってはこないみたいだな」


 しばらく馬車を走らせた後、レイが後方を確認して追いかけてこないことを知らせてくれた。


 刺された太ももがまだ痛むが、シゲルさんの応急処置のおかげで大分ましだ。それにしても、あのプレイヤーは何だったのか。しかも、彼は何の躊躇いもなく人間である俺やレイに対して殺す気で攻撃を仕掛けてきた。どう考えても常人の考えではない。


 それに、この青年はいったい何者で、何故あのプレイヤーに追われていたのか。彼が目を覚ましたら尋ねたいことが色々とあったが、俺たちを乗せた馬車は一先ずシルヴァリアへ帰ることを優先し速度を上げていく。


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 一方、1人山道に残された男は腕に受けた傷に包帯を雑に巻きつけながらも手ごろな岩の上に腰かけていた。


 しばらくすると、1人の女と1人の男が山中からその姿を現した。また、その2人とも全身血だらけであったが、体に怪我はないことからそれは彼らの血ではないと思われる。


「おせぇぞッ!!」


 すると、そんな彼らを目にした瞬間、矢を受けた男は2人を怒鳴りつけた。


「だってー、コジロウ君がずっと女の人を切って遊んでいるからー」


 女の方はもう1人の男を指差して言い訳をする。


「はぁ!?アラフィネ!お前だって、直ぐ殺さずに遊んでたじゃねかよ!」


 コジロウと呼ばれた男もアラフィネを指差して反論する。


 睨み合うそんな血だらけな2人であったが、しかしコジロウがふとあることに気が付き、声を出す。


「どうした?ユウマ!?お前、怪我してるじゃねぇか?なんだ、NPC相手にてこずったのか?」


 それは心配というよりは中傷するような口調であり、コジロウはニヤニヤしながら腕に矢を受けたユウマというプレイヤーに近づく。


 だが、そんなコジロウの態度に腹を立てたのか、ユウマは叫んで答える。


「うるせぇッ!!近くにまだプレイヤーがいやがった!そんでそいつらにあのNPCを取られた!」


「へぇー!まだプレイヤーっていたんだ」


 その話にアラフィネは口に手を当てニヤリと笑う。その顔は嬉しそうな表情であったが、新しいおもちゃを見つけたかのような笑顔である。


「くそッ!!とりあえず、一旦都に戻んぞ!あの国王に報告する」


 苛ついた様子でそう言うとユウマは腕を押さえつつ、歩き出した。


「はーい」

「ういー」


 残りの2人も特に反論もしないまま賛同すると、彼の後を追う。彼らが目指すのは「カゴシマ」国の大都市バルバラ。そこにいるこの国の王様に会うために彼らは歩き出した。

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