第3話 偶然
「ここだよ。入って」
案内されてきたのはマンションの3階の角部屋
『お、お邪魔します』
「ここで少し待ってて」
男の人はそういうと早歩きでどこかの部屋へ入って行った。やっぱり迷惑だったのか、帰った方がいいのだろう...そう思った時
「制服濡れちゃってるから風邪ひかないうちに風呂でも入れば?俺のスウェットだからでかいかもだけどこれに着替えて」
と言いながらバスタオルとスウェットを渡してきた
会ったばかりの見ず知らずの人にどうしてこんなにも優しくしてくれるのだろう と考えながら『すみません』とだけ言い洗面所の扉を閉めた。
学校以外で人の優しさに触れたのはいつぶりだろう。
お風呂から出て渡されたスウェットに着替える。下着までは濡れていなかったのが幸いだ。
「少しは落ち着いた?」
あれ、この人髪の毛が濡れてるのに先にお風呂譲ってくれたんだ。
『はい、おかげさまで。』
「ん、よかった。そういえばまだ自己紹介してなかったよね?俺は上澤幸太」
そうだ、名前聞き忘れてた
『...久保優奈です。あ高2です。』
そういうと上澤さんはニコッと笑った
「優奈ちゃんね!誘った俺が言うのもあれだけど名前も知らない男の人の家にくるなんて 危ないよ?というかよっぽど嫌なことがあったんでしょ?」
あ、普段なら軽く警戒はする。でも、この人は少しチャラいが悪い人には見えなかった。
『でも、どうして私なんかを?』
「見たことあるような気がしたからかな?葉月山高校の制服だよね?リボンが青だから2年生だってすぐ分かった笑 偶然だね!実は俺そこの3年なんだ笑」
だから笑ったのか、こんな先輩がいたなんて知らなかったな。
「それでなぜ君は泣いてたの?」
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