第12話

 ことの発端は、この街の教会に所属するあるシスターが、行方不明になった事が始まりだった。

 教会での生活に嫌気がさしての逃亡した、口の悪い者は男と駆け落ちしたなど、幾つもの噂話が教会内で囁かれたが行方は一向に知れず、失踪から一週間が経過した。

 ある時、街に買出しに出ていた彼女をよく知る人間が、彼女の持ち物が売買されようとしている現場に遭遇。

 売ろうとしていたホームレスを問い詰めると、ロンディニウムを東西に流れるテズ川に続くある下水道の奥で場所で偶然見つけたという。報告を受け教会は直ぐに捜索隊を派遣すると、失踪したシスターの体の一部を発見したのだという。

情報収集の過程で、同様に体の一部を残して失踪した人間が居ることを知り、教会はこれを連続殺人事件ではないかとみている。

話終えたリリムが脱力して肩を落とした。

話の中で被害者の状態をさらりと流したが、彼女自身は調査資料で詳細を知っているのだろう。話の後半、リリムの唇は僅かに震えていた。夏南は目の端で美冬を見ると、色々想像したのだろう、口に手を当てて目を見開いている。

美冬には悪いが、詳しい話を聞く必要がある。

「髪の毛とか爪でも拾ったのか?」

「そんな物拾ったとしても誰の者か分からないわよ

・・・・・・頭よ頭、顔は無事だったから直ぐに消えたシスターとわかったのよ」

 リリムの言葉に美冬が息を呑む、対照的にシィは口の端を僅かに釣り上げた。

犯人が遺体の一部を捨てたのだろう、しかし捨てるのなら顔をそのままにしておく理由が分からない。

「警察には届けたのか?」

「届けたって話を聞いたわ、夏南

だけど捜査は殆ど進んでいないわ」

 原因に心当たりがあるリリムは、呆れたと言わんばかりに言い放った。

 この国の化け物へに対する対処は軍と正導教会が行っている。二つの組織、前者は軍統合本部、後者は内務省の管轄にある。広範囲に被害が及びそうなものは軍が対処、小規模なものは警察がその処理にあたる。

警察は請け負う事件の規模から、化け物絡みの案件において軍よりも立場が弱い。更に対応するのは主に正導教会で、自分たちは調査の補助しか許されておらず、その不満から教会への風当たりが強い。

 嫌な話だが、今回の事件被害者が教会の人間なので、小規模で士気の低いチームが捜査に当たっている可能性は否定できない。

 無論、警察にも事件に全力で取り組む警官を夏南は知っている。しかし、このロンディニウムの人口は600万人を誇る。それに比例して各組織は大きくなり、自然と質の低い役人も多くなる、よくある話ではあるが割り切れない。

「くだらない縄張り意識もあるだろう

しかし、捜査が進まないのは、残された人体の一部から得られた情報を正しく扱えていない可能性があるぞ」

 医学に詳しいシィには、何か思い当たることがあるのだろう。

「首は切断されたとして、それは人の手では到底不可能な方法、もしくは大型の獣にでも噛み千切られたような跡があったのではないのか」

 いつの間にか、シィの目は気怠さが消え鋭さを湛えている。

「流石は銀の花と呼ばれるシィ先生ね

首の断面は、大きく鋭い歯で噛み砕かれたとしか言いようのない跡があったわ」

 大きな歯と聞いて、美冬がこちらに視線を送る。夏南はリリムにバレぬよう首を振った。件のシスターは龍に食われたと見ていいだろうが、昨日のことをはっきり話せば俺たちの素性がバレ、美冬の体のことを教会に知られる可能性がある。

リリムが警戒して迂闊な行動に出ない為に、ある程度加工した情報を伝える必要がある、それについては話しながら考えることにしよう。

「シィ先生の指摘以前の問題よ

警察はこれを人間の犯行だとして、捜査からうちの教会を締め出したのよ」

 リリムが興奮した様子でテーブルを叩くように両手を置く。

独自の情報網から警察の内情を知っている夏南とシィは勿論、リリム経由で軽く知っている程度の美冬も驚きで顔を見合わせた。

「勿論、教会は状況証拠から犯人は化け物だと、何度も抗議したわ

そしたら、割ける人材が居ないと言って、2,3人のチームを作ったのよ、あの税金泥棒ども!」

 リリムの手が何時の間にか拳となり、静かに震えていた。

彼女の父親は、正導教会で教皇の補佐を行う教務省に勤める枢機卿という、娘の姿からは想像も出来ない人物である。彼女は知らないだろが、裏では化け物退治専門機関<銀鈴>の責任者を兼任しているので公の場に姿を現すことは殆どない。表の仕事の一環で警察と折衝で頭を悩ませる父の姿を、リリムは見たのだろう、本気で怒っているのが分かる。

「それで無知蒙昧な警察に替わって、教会に所属する優秀なシスターがこの街に派遣されたって訳かい」

 シィが横から口を挟む。

 銀鈴という手札を持つ人間がそれを切らず、リリムのような目立つ人間を使う理由が俺と同じく分からないのだろう。

「そうよ

この街の警察とその上から睨まれて動きが取れない父に替わって、この私が殺された皆の敵を取るわ」

握った拳を胸に当てて一人闘志を燃やすリリム、それとは対象的に夏南は大きく息を吐いた。

「何よ、文句あるの!」

「いや、別に」

警察の上は内務省、その上なら国会議員が絡んでいかもしれないという話である。

事の大きさに夏南は目眩がしそうになった、これでは銀鈴を受かつには動かせない。枢機卿は娘を捜査員に仕立て上げて相手の出方を伺うつもりのようだ。酷い話のようだが、彼女の破滅的な性格は広く知れ渡っている、多分護衛をつけて教会内部に枢機卿が捜査に乗り出したという暗黙のメッセージを送り、警察側には娘にすがるしかないと印象付けたいのだろう。

噂通りの食えない男である、会ったら手が出るだろう。

「立派です、リリムさん」

 教会の内情や世間の噂に疎い美冬は、普段のギスギスした関係を忘れて、リリムの決意表明に目頭を押さえている。

 もっと人を疑えと美冬に言いたいが、それを口にすれば彼女の中の何かが損なわれるような気がするので、今回も黙っておく。

「決意表明をしに、朝から開店前の薬屋に押し寄せたのかね

私に用があるんじゃなかったのか?」

 退屈な演劇を見る終えたような気だるい顔でシィが口を開いた。

 熱から覚めたリリムがブラウスの襟を正して咳払いする、何故か美冬も咳払いをして髪を直す。

「シィ先生には、捜査の途中で見つかった犯人の遺留品もしくは体の一部を鑑定して追跡の補佐、そして化け物の犯行だと証明することを頼みたいの」

「前者は兎も角、後者に関して一介の薬局店の店長が何を言っても警察は認めんぞ」

「申し訳ありませんけど、先生が警察内部の人間と関係があることを教会は突き止めておりますわ」

 シィは、赤き龍を討つ為に情報を欲している事情から、華国出身という設定で薬屋を開業、裏社会の情報を掴めうよう薬学の知識で警察に協力している。警察との協力関係が出来た後で、望まぬ教会との関係を持つ形となった。夏南が知る限り、シィに他の組織への顔役を頼んだケースは今回が初めてである。

「証拠が見つかったなら、私の所に持ってこい

いいか、証拠が見つかったらだぞ」

 今後の立ち回りを考えて少しは考え込むかと思われたが、シィはあっさり引き受けた。

シィと運命共同体である夏南は、思わず彼女の顔に目を向けると、彼女はこちらに目配せをして寄越した。

 証拠という言葉を強調したことから、確かな物証を持ち込むまで付き合う気はなさそうだ。目配せの意味は恐らく、昨日の一件が起こった公園にリリムを釘付けにしておけということだろう。警察には悪いが、リリムの身を守る為に御守りをして貰おう。

「リリムさん、私になにか手伝えることはありませんか」

 美冬が身を乗り出して協力を申し出る。

「ありがとう

でもね、これは危険な任務なの

協力してくれるなら、情報提供で貢献してくれるのが一番の助けになるわ」

 しかし、リリムは回りくどい言い方で断った。

 美冬は意気消沈して椅子に座り直した。

 この家からほとんど出ない彼女が、捜査に役立つ情報を持ってはいない。

「化け物かどうかは知らないけれど

実は昨日の晩、街の公園で巨大な蛇に襲われたんだ」

 夏南は突然、昨日の話を切り出した。

 美冬が弾かれたようにこちらを見るが、任せておけと夏南は頷き返しす。

 はっきり龍と明言すれば、なぜ詳しいのかそれも説明しなければないらいので、そこは徹底的に簿かすつもりだ。

「急に何を言い出すのよ

逃げたペットの捕獲なら、教会じゃなくて警察に頼みなさい」

 リリムが茶化すなと、呆れた目を向けてくる。

「蛇といってもそこらへんに居る蛇じゃない

東国の伝承に出てくる龍みたいなやつだよ

凄い長くて、とぐろを巻くとこの部屋の天井まで頭が届きそうなやつ」

「はぁ、って何で今まで黙っていたのよ!」

 リリムがテーブルから身を乗り出して、夏南を睨み付けた。

「お前の話を聞くまで、夢でも見たんじゃないかと思っていたんだ仕方ないだろう」

 わざと語尾を弱めて自信が無い素振りを見せる。

 以前彼女を化け物から救った時に、故郷で武術を習っていたので撃退できたと言っており、夏南が龍討伐の専門家であることをリリムは知らない。

「昨日、1人で薬を届けた帰り、サウス公園で急に暗がりから襲われて無我夢中で逃げ出したんだ」

 1人という単語に美冬が怪訝そうな目でこちらを向けたが構わずに話続ける。

 美冬と一緒だったといえば、はっきり龍を見たと言いかねない。

「龍って、確かこの国の伝承にあるドラゴンのことよね

そのドラゴンの色は? 形は? 長さはどの位?」

 蛇と言ったのだが、東国の龍に詳しく無い彼女の頭の中では、蜥蜴の姿に変換されているのだろう、説明に骨が折れそうだ。

「違う、大蛇だ大蛇

知ってるだろう、ギリ国の神話に出てくる自分の尻尾を噛んでるやつだよ」

「あ、あぁ、そっちね

あの幼児期に何か問題のあった、伝説上の生き物ね

自傷行為に走るなんて可哀そうなで憶えてるわ」

 どんな憶え方だ!

夏南はツッコミたかったが、自分がそれよりも酷いカテゴリで記憶されていそうな気がして聞けなかった。

「リリムさん、あの龍は2匹が互いの尻尾を噛合っているのが正式なものです

互いに相手の体に歯型を刻み合い、それで無限を現すだなんて素敵だと思いません」

美冬はリリムより詳しく知っているみたいだが、こっちも解釈の仕方がおかしい。夏南に蕩けるような視線を送りながら1人悦に浸っている。リリムは震え、シィは新聞を読むふり、夏南は目を逸らす、あの状態の美冬に話しかければ1時間はおぞましい妄想話しに付き合わされてしまう。

「その巨大な蛇につて詳しく教えてくれない

かしら、健全な感じで」

 リリムが震える声で言う。

理由はどうあれ興味を持ってくれた、良いアシストだ、美冬。

この後噛まれる予感を胸に仕舞い、夏南は昨日の一件を話始めた。

「警察が集まって来たんで、尻尾を巻いて逃げたのね」

「引っかかる言い方だが、夜の公園で刃物を持った東国人が大きな蛇を見たって警察に言ったら、俺は間違いなく留置所じゃなくて病院送りだからな」

 話を聞き終えたリリムは無言で目を閉じた。

蛇が討伐対象の化け物なのか判断している最中だろう。頼む、このままいつもの単純さで化け物認定してほしい。夏南も祈るように目を閉じようとしたが、急に席を立ったリリムに胸倉を行き成り掴まれてしまう。

「あんた、一般人のくせにまた危ないことに首を突っ込もうとしたでしょう」

「え?」

「え、じゃないわよ

後、一度首を突っ込んだんなら警察がくるまでその蛇を捕まえて起きなさい!」

 正反対の罵倒を浴びせるリリム。

「テム川のほとりで姿を見失った

今頃、下流にでも流ついてる頃だろう」

 リリムは、夏南の目を鋭い視線で射抜く。ことの真偽を確かめているのだろうが無駄であった。龍の瞳は対峙する者を凍らせる極寒の宝石、それに正面から挑み続けた夏南がリリムの威嚇に怯む道理はない。

「ここに来る前にすれ違った人が言っていた、公園が閉鎖されたってのは、それが原因みたいね

教会への報告、感謝するわ」

 リリムは夏南のシャツから手を離すと、謝罪の言葉一つなく席に戻って行った。そして顎に手を置いて何やら考え始める。これからの捜査計画だろうが、そこには巻き込まれた人間への配慮など微塵もないことは、既に身を持ってしっている。

「夏南、大丈夫?」

 美冬がリリムと入れ替わりに傍に寄って来ると、空になりかけたカップに新しい紅茶を注いだ。

「何とも無いよ、今のは二人にとっては挨拶みたいなもんだよ」

 シャツの皺を伸ばそうとしたが跡が残った。

「前から思っていたんですけど、リリムさんに甘くないですか」

美冬が小声で耳打ちして来た。

夏南とシィの無言の遣り取りを、ある程度気付いるのだろう。

化け物に人間の常識は通用しない、興味本位で近づくだけでも危険な存在だ。こちらの都合を抜きにしても、教会異物処理部の新人に昨日の龍は荷が重い。死なれては寝覚めが悪い故の配慮だが、戦い馴れない美冬から見れば行き過ぎた配慮に見えるのだろう。

「見ていて危なっかしいからな」

「どうせ、私は安全ですよ」

 こちらに飛び火しては困るという意味で言ったのだが、何故か美冬は目を吊り上げて席へと戻って行ってしまった。

女性ばかりに囲まれての暮らしを初めて1年、未だに分からないことが多い。

「リリム君、考え事をしている途中で恐縮だが、持ち込む証拠は物証で頼む

龍の牙か爪、もしくは鱗だぞ、写真だけ持ち込んで証明してくれは無しだ」

「勿論、それは協力する人間全員に予め伝えますわ」

 流石はシィ女史、うっかりが多いリリムに念を押すのも忘れない、多分明日には忘れると思うが。

「いけない、もうこんな時間!」

 時計を見たリリムが弾かれたように立ち上がった。

「急な訪問を受け入れてくれた上、お茶まで頂いてありがとう御座います」

 そして丁寧に頭を下げた。

 流石は両家のお嬢様、妙な貫禄を感じる。

「次からは先に連絡しろよな」

「考えて置くわ、夏南」

 次回も突然お邪魔するわ、そう言うとリリムは席を離れた。それに合わせて美冬も席を立つ。今回も家の外まで見送るのだろう、二人の仲が良いのか悪いのか、今一分からない。

「何かあったら俺に連絡しろよな」

 コートを羽織る小さなリリムの背中に声を掛ける。

「私に何かあっても、あなたじゃどうしようもないわよ」

「お前を抱えて逃げる事ぐらいはできるぞ」

「そこまで出来るなら、馬替わりに馬車を引く仕事に就いた方が良いわね

それじゃぁね」

 リリムは別れの挨拶を口にすると、身を翻してダイニングを後にする、美冬も後に続くが部屋を出る一瞬寂しげな視線を夏南に残して行った。

「隠れて手助けはしないのかい?」

 騒がしい二人が静かになったダイニングで、シィが欠伸混じりに呟いた。

「鈴のついた猫の御守をしながら、鼠を取れっていうのかい」

「お前なら余裕だろう」

「勘弁してくれ」

 夏南がっくりと肩を落とす、シィが小さく笑った。シィにリリムが面倒事を持ち込めば、それを解決するには夏南になるだろう。それを分かっていてこちらを笑ったのだ、人が悪いにもほどがある。

「私はこの後店を開けるつもりだが、お前はこの後どうするつもりだ」

「警察の知り合いに会ってくる

リリムの話が本当なら、新聞関係を当たっても何も出てこないだろうから」

 このロンディニウムには大手新聞社が3社ほどあるが、どれも現政権を支持する立場を取っている。リリムの話から警察や内務省から、事件について箝口令が出ていると見て間違いない。3社に幾人か知り合いがいるが付き合って日は浅い、自身の首を賭けてまで協力してはくれないだろう。

「この際、美冬と二人で捜査したらどうだ?

昨日の活躍を聞く限り、後ろを任せても問題はないようだが」

「美冬を守るために美冬を危険に晒せっていうんですか!」

「お前が守ればいいだけの話だ

人は徒党を組んで龍を狩る、一人では龍の親相手に後れを取ると言ってる」

 夏南は思わず上げかけた腰を下ろした。

彼女の言っていることは正しい、美冬に全てを話してチームを組んだほうが1人よりも勝率は高い。昨夜の一件で美冬に協力を頼んだのは、まともな武器が無かったからだ。犯人を突き止め、奇襲をかけさえすれば一人でも十分やれる。

「1人の方が動きやすい

それに今度はいつもの刀を用意する、戦う状況さえ作れれば一対一でも遅れは取らない」

 東国において夏南が、単独で龍討伐をしていたことをシィは知っている。500歳クラスまでなら、リスク込みの上倒せる自信と腕もある。

「話すには良い機会かと思ったがな

一つ言っておくぞ、美冬の体から結晶を取り出せても、黙っていた期間は確実に彼女に傷を残すぞ

勿論、お前もな」

 シィの真摯な瞳がこちらを見据えるが、夏南は何も返さない。

 分かっていさ、と言って流すほど鈍感ではない。全ての終わりに美冬が自分から離れていく事は覚悟している。そうなったら二人を気にかけたシィも愚か者と美冬の背中に続くだろう。

結晶の除去は、高練度の術者なら可能だろうが、そんな人物が居たら何処かの組織が既に確保して表には出てこない。ならば、危険な道具や邪法に頼るしか手はない。危険な道だ、家族の絆が大事だからと言って、引き入れていいものではない。

「また、そんな怒りにくい顔をする」

話はこれで終わりとばかりに、シィは新聞を読み始めた。

「何の話ですか?」

 二人の会話が終わったのを見計らったように、美冬がダイニングに戻ってきた。

その顔はどこか明るかった。

「いや、何でもないよ

それよりも何かいいことあったのか」

 夏南が自分の頬を指さすと、美冬が自分の顔の変化に気づいて顔を赤くする。

「えっとね、朝食の隠し味にセロリを使ったのをリリムさんに褒められてね」

 まるで姉に誉められた妹のように美冬が微笑む。リリムの方が年下だぞ、と危うく口から出そうになったが夏南は胸の奥だけに止めておく。

夏南の前では何処か仲が悪そうな雰囲気を出す時があるが、不思議なもので知らないところでは姉妹のような親密さをみせる。

男の自分にはわからぬ、女同士の関係というものがるのだろうか。

ふと時計を見ると長短二つの針が午前9時を指していた。夏南もそろそろ出かけねばならない。ダイニングに残った騒がしくも穏やかな時間の残り香に後ろ髪を引かれるが、それを守るためにも龍の行方を追わなければならない。

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