第6話 混迷の宮殿①
宮殿は、大騒ぎとなっていた。
花嫁が消えた。
いなくなったのだ。
今夜の披露宴のために
全宇宙から
招待客が集まってきているのに、
かんじんの花嫁が消えた。
あの時、
ヨハネが覚えているのは
フォースが炸裂し
アシュラを包もうとしたとき、
何かが起こり、
次の瞬間、炎に包まれたのは
ネロと親衛隊だったということだ。
そしてアシュラから
少し離れたところに立っていた
ヨハネは爆風でかなり遠くまで
飛ばされてしまい、
後のことは
まったく覚えていない。
ヨハネが気付いた時には、
アシュラの姿は無かった。
全身にひどい傷を負った
ヨハネであったが、
必死でアシュラを探した。
しかしそこには
ネロと親衛隊の死体が
累々続いているだけで、
アシュラの痕跡は
何ひとつなく、
忽然と消えていた。
何が起こったのか、
ヨハネにもさっぱり
わからなかった。
とにかく宮殿は
大混乱となっていた。
宮殿を守っていた
親衛隊の大部分のものが
死んだのだ。
急きょ、星雲間戦争の最前線で
指揮を取って
戦っていた
ルシファーとミカエルが
呼びもどされた。
一方、その頃
統治神“シ”のもとを
ひとり訪ねた青年がいた。
「兄上、ご無沙汰しておりました」
と言って、姿を見せたのは
異世界の皇子ミトラであった。
「ミトラ、お前か。よく来てくれた」
と、王は嬉しそうに笑って見せた。
しかしその目は笑っていなかった。
統治神“シ”の最初の妻は
ミトラの姉で、死んでから
もうずいぶんになる。
平和を維持するための
政略結婚ではあったが、
ミトラの姉は
幸せそうであったから、
ミトラはこの義理の兄を
けっこう慕っていた。
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