第5話 異世界の皇子ミトラ
「いけません、ミトラさま」
ミトラは護衛のものに
止められ、
フォースの矢を受け
倒れているアシュラを
そのままにして、
その場を去らねばならなかった。
ミトラは異世界の
皇子であるがゆえに、
軽はずみな行動は
つつしまなければならないのだ。
下手に動けば、
外交問題となり、
宇宙戦争に
発展するやもしれぬ
危機であった。
しかし何年かぶりに見た
アシュラは
すっかり女神へと
生まれ変わっていて、
あまりにまぶしかった。
アフロディーテよりも
美しいというのは
本当だった。
そしてあの瞳!
悲しみをたたえた瞳は、
見たものの心を
奪わずにはおかなかった。
異世界の皇子ミトラも
すっかり心を奪われてしまい、
アシュラを守るために、
使ってはいけないフォースを
使ってしまったのだ。
しかし異世界を護る皇子としては、
これ以上のことは
許されなかった。
心を残しながらも、
その場を去らねばならなかった
ミトラであった。
そしてその出来事を
暗闇に隠れ
ずっと見ていたものがいた。
夢魔である。
夢魔は意外な成り行きに、
驚いてはいたが、
最高の生贄の出現に
喜びで、胸がいっぱいになった。
アシュラも最高に心ときめく
おいしい生贄ではあったが、
ミトラの比ではない。
ミトラは次の
マイトレーイ候補。
それも本命視されている
有力な異世界の皇子である。
この者の心を
手中におさめることができれば、
それはまさしく
この宇宙を
手に入れたと
同じことだった。
夢魔はネロの
憎しみのフォースで射抜かれ、
瀕死の状態で
横たわっているアシュラを、
それは大事に抱きかかえ、
その唇に軽く触れてみた。
女神独特の芳醇な香りがした。
そしてミトラの心を奪ってやまぬ
儚さがある美貌。
そのものが今、私の腕のなかにある。
嬉しさのあまり、夢魔は
異様な笑いを浮かべながら
美しい生贄をしばらく
じっと見つめていた。
やはりこのまま
死なせるわけには行かない、
と思った。
本当はこのまま
食べてしまいたかったが、
それやはやめにした。
夢魔は、むさぼるように
アシュラの唇を奪い、
無理やり夢魔のダークエナジーを
注入した。
そのエナジーは強く、
異質のものだった。
とうぜん体に拒絶反応が
起きたが、
光のエナジーは尽きかけていて、
あまりに弱く、
ダークエナジーが
光のエナジーを駆逐した。
こうしてアシュラは
光の記憶をすべて失い、
夢魔のダークエナジーに
支配される
堕天使になった。
夢魔はアシュラに、
アシュラがどこへ逃げても
わかるように、
悪夢を呼びこむ種を
その体の中に
植えつけた。
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