ガーベラの葉
ガーベラの花を初めて見たとき、
幼稚園のころだっただろうか。通りかかった花屋の店先に出ていた、色鮮やかな切り花。赤やピンク、オレンジ、黄色と色とりどりに並んだ、たくさんの花弁がまるく揃った花。
こんなにきれいなものがあるんだ、と思ったのを、大人になった今でもよくおぼえている。
アパートの階段を降りて外に出ると、五月の日差しがもう肌を焼いた。沙知は、二十代半ばになった今もメイクはほとんどしない。日焼け止めだけはした頬を流れる汗を、ハンカチで拭う。すぐ近くのバス停まで歩いてきてベンチに座ると、まだ少し涼しい風が吹いた。
ゴールデンウイークは十連休になった。ニュースではいろいろと言われていたけれど、旅行に出掛けるような予定もなかった沙知は、連休前の出勤日にカレンダーを見て思い出したぐらいだった。
(まえの仕事は土日、関係なかったもんなあ)
専門学校を卒業してからずっと介護の仕事をしていた沙知は、この春、事務職に転職した。
とはいえ新しく勤めることになった会社は福祉器具のレンタルやリースを扱う企業で、同じ福祉業界ではある。
ただ休日も交代勤務で出勤しているのが常だったから、月曜から金曜まで働いて土日祝日が休み、というサイクルに、まだ少し慣れないような気がしている。
バスと電車を乗り継ぎ、地下鉄の階段をのぼる。うちでお昼食べようね、と
幸の家を訪れるのは久しぶりだなと思う。まえに訪れたときは、仕事でだった。下肢に障がいのある幸の家を、ヘルパーの仕事をしていた沙知は担当者として何度も訪れていた。
まだ仕事に慣れなかったころ、緊張しながら自己紹介をした沙知に、わたしもサチなの、おなじ名前ね、と言ってにっこりと笑ってくれた幸のことを、沙知は大好きだった。
幸のほうも沙知の仕事ぶりをすごく褒めてくれて、沙知が転職するといったとき、さみしい、と言って泣いてくれたのだ。
「もし、もしね、嫌じゃなかったら、仕事辞めたあとメル友になってくれる?」
メル友、という響きがなんだか懐かしく感じて、笑いながら、沙知もすこし泣いてしまった。
会社の規則でヘルパーと利用者は私的なやり取りはしてはいけないことになっていたから、こっそりメールアドレスを交換して、沙知が転職してからときどきメールをするようになった。
同じ名前だから、沙知は幸のことをサチさんと呼び、幸は沙知のことを、さっちゃんと呼んでくれた。母親ぐらい、とまでは言わずとも幸のほうがずっと年上だったが、沙知よりたくさん絵文字を使ったメールをくれるのがかわいらしくて、可笑しかった。
遊びに来ない、と誘ってもらったとき、介助者ではなく友達として幸の家を訪れることになったのが、沙知は嬉しかった。
地下鉄の出口を出てすぐ、沙知は立ち止まった。
(こんなところに、お花屋さん)
新しくできたのだろう、フラワーショップ・アキ、と書かれた木製の真新しい看板に、色とりどりの花や観葉植物を並べた店が目に入った。
(……あ、ガーベラ)
店先のいちばん目立つところに置かれていたのはガーベラの切り花だった。近づくと、いらっしゃいませ、というあかるい声に迎えられた。
「あの、ガーベラを……」
「花束になさいますか?」
「あ、はい、……友人の家に持っていくので、小さいものを、作っていただけますか」
かしこまりました、と黒髪をきれいに伸ばした女性店員は、にっこり笑って奥へ引っ込んで行った。
包装紙と鋏を持ってきて手際よく花束を作っていくのを、沙知は見るともなく見ていた。ガーベラはどれもまっすぐに伸びた茎に、やわらかそうな大きな花をつけている。
沙知は子どものころからずっと花が好きだった。小学生のときは人気のある「いきもの係」ではなく「花壇の水やり係」をずっとやっていたし、中学校では、園芸部だった。
園芸部は部員が数人しかいない、存在することを知らない生徒のほうが多いんじゃないかというほどの弱小部だったが、顧問の先生が植物に詳しく、学校の裏で畑を作ってできた野菜を家庭科部に料理してもらったり、結構な広さの花壇に季節ごとに花を植えたりして、それなりに楽しい部活だった。
進学した福祉課の高校にはさすがに園芸部はなかったが、実家の庭の小さな花壇には母親と一緒に季節の花を植えたりしたし、今、一人暮らしをしているアパートにも、小さな花瓶に切り花を買うのは、なんとなく欠かさないようにしている。
だけど、と沙知は思う。
(ガーベラは、買ったことないな)
ガーベラは沙知のいっとう好きな花だ。子どものとき、初めて見たあの日から、ずっと。だからだれかに花を贈るとき、たとえば職場の送別会であったり、敬老の日に祖母にお花を送ってあげるとか、そういうとき、沙知は必ずガーベラの花を入れることにしていた。ガーベラの花は、沙知の心をときめかせる。
けれど、沙知は自分のためにガーベラを買ったことは一度もなかった。自分ひとりの部屋に飾るための花を買うとき、いつもガーベラだけは、避けていた。
(だって、ガーベラは、似合わない、わたしに)
おまたせしました、という声で顔を上げると、目の前には濃いピンク色と黄色のガーベラを中心にあしらった、かわいらしい花束が差し出されていた。あわてて財布を取り出して代金を払う。
ふっとつめたい風が吹いて、一瞬、道路に雲が影を落とした。さっきまであんなに晴れていたのに、雨が降りそうなんだろうか、と思いながら、ありがとうございました、という声に見送られて沙知は足早に歩きだした。
およそふた月ぶりに会った沙知を、幸は変わらないあかるい表情で出迎えてくれた。
バリアフリー仕様に改装されたアパートの一階の部屋。主の脚が不自由なのだとは思えないほど、いつ来ても部屋はさっぱりと整っていた。
沙知が差し出した花束を見て、幸は目を輝かせる。
「なんて素敵なお花!買ってきてくれたの?私に?」
物語に出てくる少女のような言い回しだなと思って、沙知は思わず笑ってしまった。
ちょうどお花、欲しいと思ってたの、と言って、幸は車椅子のタイヤを器用に操って、身軽に一回転し、また笑顔をみせた。
幸の作っておいてくれたパスタとコンソメスープの昼食を摂りながら、とりとめのない話をした。
食後、コーヒーメーカーがぽこぽこと音を立てるのを横目に、幸は沙知が買ってきた花束の包みをきれいに解き、花瓶に生けていく。さっちゃん座っててね、と幸が言うので、沙知はリビングの椅子に腰かけて、それを眺めていた。支援者ではなく友人として接してくれていることがわかり、沙知は嬉しかった。
幸の肩先で切り揃えられた黒髪がさっと揺れ、それはガーベラのあざやかな花に、よく似合っていると沙知は思った。
(きれいだな、サチさんは)
やわらかな紙に包まれていたガーベラを見る。
(ガーベラには、葉はない)
花瓶に花を生け終えた幸がふっと顔を上げて、沙知のほうを見た。
「さっちゃん、」
「あ、はい」
「しごと、つらい?」
「え」
沙知が就職したのは小さな会社だ。前任の社員ふたりのうちひとりが異動、もうひとりはもうすぐ産休に入るという状況で引き継ぎに多少のあわただしさはあったが、上司も先輩も、部署づけの契約社員やパート職員も皆、穏やかな性格の人が多く、慣れない仕事への気疲れはあれど、つらいと思ったことは一度もなかった。
「え、いえ、そんなことは……」
「そう?ならいいんだけど、」
「あ、ぼうっとしてましたか、わたし、すみません」
一重まぶたのせいか、あまり感情を表に出すほうではないせいか、沙知はむかしから、ぼおっとしているとか、つまらなそう、と言われることが時々あった。
恐縮する沙知に、ちがうの、と幸は言う。
「気のせいだったら、ごめんだけど、つらそうな顔してた、ちょっと」
花束は薄い青色の硝子でできた花瓶に、すっかり収まっていた。幸は手に持ったガーベラの最後の一本を、すっとそこへ挿す。
(やっぱり、葉はない、ガーベラには)
居たたまれなくなって目を逸らすと、そこにはついしばらく前まで仕事で訪れていたときには見覚えのないものが置いてあるのに気付く。
あの、と沙知はつとめてあかるい声を出した。
「ピアノ、弾くんですか」
置いてあったのは、小さな電子ピアノだった。一瞬の間があってそちらへ顔を向けた幸は、そうなの、と言って笑う。
「あのね、まだ全然弾けないの、でも、やってみようかなって」
「そう、なんですか」
「うん、でもね、ほんっとにまだ全然弾けない」
いたずらっぽく笑う幸に少しほっとして、沙知もやっと笑った。
「さっちゃん、弾けるんだっけ、ピアノ」
「小さいころだけ、習ってましたけど……」
実家の古いアップライトピアノをときどき弾いていたからか、思ったほど指はなまっていなかった。むかし習ったおぼえのある曲を少しだけ弾いてみると、幸はぱっと顔を輝かせて、すごい、と歓声をあげた。
「いえ、全然、すごくはないんですけど……」
「え、すごいよ!めちゃめちゃ弾けるじゃない、さっちゃん、長いこと習ってたの?」
「いえ、……あの、サチさん」
「うん?」
「ガーベラの、ことなんですけど」
「え、」
「さっきの、……あの」
「うん」
幸は、沙知のほうを向いて頷いた。小さく息を吸って、沙知は話し始めた。
小学生のころ、沙知はピアノを習っていた。プロを目指して本格的なレッスンをしていたわけではなくて、通っていたのは近所の、同級生の母親が家でやっていた教室だった。
全国大会のあるようなコンクールに誘ってもらったこともあったが、沙知は出なかった。ただ市民ホールで年に一回あったコンサートには教室のほぼ全員が参加しており、沙知も出た。
ホールのふかふかとしたじゅうたんの上を、ふだん履かない発表会用の、エナメルの靴で歩いていくときの、どきどきした気持ちをおぼえている。きれいな衣装を着て舞台に上がることなど滅多になかったから、沙知にとってはピアノの発表より、そちらの方が楽しみだった。
同じ教室の女の子たちは皆、赤やピンクやオレンジや黄色の、すその広がったドレスを着せてもらっていた。でも、沙知のドレスはそういうものではなかった。水色や、ひかえめな黄緑、薄紫などの、ボリュームも光沢も少ない衣装。選んだのは祖母や母だった。
祖母も母も、娘の嫌がることを強制するような人ではない。だから、わたしもピンクがいい、と強く言えば、駄目だと言われることはなかっただろう、と沙知は思う。
けれど、沙知はついぞそうは言わなかった。祖母や母が、子ども用のドレスの中で自分に似合うものを一生懸命に選んでくれたのだと、わかっていたから。
小学校六年生のときの、市民コンサートのあとだった。
コンサートの終わったホールの通路には、教室の関係者や保護者の有志から贈られた花飾りが並ぶ。発表会に出演した子どもたちがその花を一本ずつ取って持ち、記念撮影をするのが常だった。
通路に出てきた沙知の目に入ったのは、色とりどりのガーベラでつくられた花飾りだった。あざやかな色が人目を引き、同じ教室の子たちが我先にとそこから花を抜いていく。
(わたしも、ガーベラがいいな)
ガーベラの最後の一本にそっと手を伸ばそうとしたとき、ねえ、と隣から声がした。横を見ると、沙知が通っていた教室の先生の娘で同級生の、陽子がすぐ近くにいた。
「さっちゃん、別の花にしたら?」
「え」
陽子は真っ赤なフリルのついたドレスを着ていた。パールの飾りのついたカチューシャがよく似合っている。くっきりとした二重瞼には、うすくアイシャドウも施されているようだった。
陽子は学校でもリーダータイプで、気が強い。ガーベラの花がほしかったのかな、と思って見るが、陽子の手には既に、ドレスと同じ赤色のガーベラが握られていた。
「えっと……」
「だって、さっちゃん似合わないじゃん、ガーベラ」
「え」
「さっちゃん、葉みたいだもん」
「え、」
「ガーベラの葉みたい」
そう言って陽子は、沙知が手に持ったガーベラを、しかし取り上げるようなこともなく、身を翻して行ってしまった。
沙知は、もうほとんど空っぽになってしまった花飾りの中へ、ガーベラをそっと戻した。ガーベラはすっと伸びた茎に、あざやかな花をつけ、でも、それだけだった。
(……、ガーベラに、葉、ないよ)
沙知は、花を持たずに記念撮影の列に並んだ。そのことについて、誰もなにも言わなかったと記憶している。沙知はその年、市長奨励賞という賞をもらっていた。記念の小さなトロフィーを抱えていたから、花を持っていない違和感に、だれも気付かなかったのだろう。
中学に上がるのと同時に、沙知はピアノ教室を辞めた。
ガーベラの花を、ひとに贈る以外で手にすることも、それから一度もない。
幼いころであればあるほど、ぶす、という言葉を沙知に投げかける人は多かった。とくに、男の子たちには。
けれど沙知にはそのときどきに、かばってくれる女の子の友達が周りにおり、ひどいいじめに発展するようなことは一度もなかった。
年齢が上がるにつれて、表立って外見のことを言われるようなことはなくなった。あのときまでは。
沙知が介護の仕事を辞めた原因は、年配の男性利用者の一言だった。初めて介助に訪ねた沙知に、その利用者は開口一番、こう言った。
「どうせよこすんなら、もっと美人よこしてくれりゃあ、いいのに」
その利用者は、気難しいので有名な、いわゆる「問題利用者」だった。だから、周りの先輩たちからも、なんか言われると思うけど気にしないで、と言ってもらっていたし、沙知自身も、それなりの覚悟をして、仕事と割り切って訪ねたはずだった。
けれど、その言葉は、沙知の心をいとも簡単に、あの市民ホールの通路へ引き戻し、いとも簡単に、打ち砕いた。
仕事を辞める本当の理由を、沙知はだれにも言わなかった。同僚も上司も沙知が辞めることを惜しんで、あたたかい言葉をたくさんかけてくれ、転職の相談にも乗ってくれた。
けれど、いや、だからこそ、あんな一言だけで退職を決めてしまったことを、沙知は、だれにも言えなかった。
「さっちゃん」
幸は車椅子の上から手を伸ばして、沙知の涙をそっと拭ってくれた。もう片方の手で、ティッシュの箱を手渡してくれる。すみません、と言って涙と鼻水を拭いながら、いま、正真正銘のぶすだな、と沙知は思った。
さっちゃん、と言って、幸の手がもう一度頬に触れる。顔を上げて、沙知は驚いた。幸も、沙知に負けないぐらい表情を崩して泣いていた。
大きな瞳からぼろぼろと涙を落としながら、私ね、と幸は言った。
「さっちゃんのこと、かわいいと思う」
「え」
「目も鼻も、口も、手も、ぜんぶ、かわいい」
「え、いや、それは、……」
「私、さっちゃんの仕事、好きだった」
「え、」
「さっちゃんの介護、いままでのどのヘルパーさんより、好きだった」
「……」
「私のこと、ショウガイシャじゃなくて、ひとりの、ひととして、助けてくれたもの」
「……、」
「さっちゃんの、外側だけじゃなくて、無口なところも、几帳面なところも、ちゃんと話、きいてくれるところも、ぜんぶ好き、あなたは、素敵」
「え、あの、……」
「さっちゃん、そのコンクールのときは、なにか賞、もらったんだよね」
「あ、え、はい、」
「その子は、ほんとはね、賞がほしかったんじゃないかな、さっちゃんのこと、うらやましかったんじゃないかなって、思うの」
「え、」
「だって、さっちゃん上手だもの、ピアノ」
「え、っと、そんな……」
「ガーベラのね、花束には、葉、ついてないかもしれないけど、葉がなかったら、花も咲かないもの」
「……」
「大事なんだよ、葉も、なかったら駄目なの」
「……、」
思ってもいない言葉を息もつかぬような勢いで掛けられて、びっくりした拍子に沙知の涙は止まってしまった。
しどろもどろになる沙知に、でも、と幸は言った。幸は、まだ泣いていた。
「でも、そうじゃないよね」
「え、」
「そうじゃないんだよね」
「……」
「……さっちゃん、つらかったね、嫌なこと言われて、嫌だったね、」
「……、」
「ガーベラの、花、持って、写真、撮りたかったん、だよね、なのに、さ、……ずっと、我慢して、きて、っ、くるしかった、ね、っ、……」
ごめん、と言って大きく嗚咽し、幸は両手で顔を覆ってしまった。鼻の奥がつんとし、また涙がこぼれるのを沙知は感じた。けれど、それはさっきまでの、苦しいような、悔しいような涙とは、少し違っていた。
ふたりでさんざん泣いたあと、幸がコーヒーを温め直してくれ、沙知が買ってきたチーズタルトを食べた。
手洗いを借りたとき鏡に映った顔は見事なまでに泣き腫らしていて、まあ、笑っても泣いてもぶすだからいいや、と思ったら可笑しくなって、沙知は少し笑った。
帰り際、幸はさっき生けた花のなかから濃いピンク色のガーベラを一本抜いて、沙知に手渡そうとした。
「これ、持って行って、さっちゃんのガーベラ」
胸のうちがふわっと温かくなる。ありがとうございます、と言ってそれを受け取ろうとして、そして、沙知は少し考え、一度出した手を引っこめた。
「わたし、買います、ガーベラ」
「え」
「帰りに、買って帰ります、自分のガーベラ」
「……、」
「だから、これは、サチさんのガーベラにしてください」
幸の手には、ガーベラと似た色のマニキュアがきれいに塗られている。サチさんがマニキュアをしているのを見るのは初めてだな、と沙知は思った。
(サチさんも、たぶん、やりたいことを一つずつ、やってみてる)
綺麗にマニキュアをした指で、一生懸命にピアノの練習をする幸の姿を想像したら嬉しくなって、へへ、と沙知は笑う。ガーベラを持ったまま、幸も花開くように笑った。
地下鉄の駅前の花屋は、まだ開いていた。
すみません、と声をかけると、朝、花束を作ってくれたのと同じ女性店員が、はい、とあかるく返事をする。
「あの、ガーベラの……、えっと、ガーベラの、葉はありますか」
店員は一瞬、不思議そうな顔をしたあと、ぱっと笑顔になった。
「鉢植えでしたら、葉つきのものがございますよ」
店の奥から取り出された鉢植えは、さっき幸が沙知に手渡そうとしてくれたのと同じ、濃いピンク色のガーベラの鉢だった。花弁がたくさんついたまるい花に、まっすぐ伸びた茎。そして、その下のほうに、やわらかそうな葉がふさふさと茂っていた。
「これ、お願いします」
ガーベラの鉢の入った袋を持って、沙知は電車に乗った。アパートのベランダは狭いけれど、日当たりは悪くない。結構長く楽しめそうだな、と沙知は思う。
手に持った袋はずっしりと重かったが、傾かないようにきっちりと固定してくれたおかげで、家まで無事に持って帰れそうだ。
上からそっと覗くとビニール袋に包まれた奥に、ガーベラの花。そして、ガーベラの葉はその花のむこうに、静かに、でもたしかにそこにあった。
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