第3羽 いざ! 兎神様の御屋敷へ!
「いってらっしゃい、莉乃ちゃん」
朝、向日葵さんの作った朝ご飯を食べていたら、
私を
二羽とも、今日は巫女服だ、……巫女服かな? ちょっと違う気もする、似ているんだけど。
白の上着に薄紫の袴? 取り合えず、袴ははけないみたいで、スカートっぽい、かわいいにもほどがある。
手荷物(と言っても手持ちのバックくらいしかないんだけど)を向日葵さんに預けて、桔梗と後に付いて行く、椿は私と手を繋いでいる、今日もかわいいなぁ。
村の中心くらいだろうか、丸くかたどられた石畳の中心に、小さな祠が建っている。
「莉乃、椿、祠の前に来てくれ」
桔梗が祠の前に立って手招きをしている、ヤバいかわいい、血圧上がる。
「どうしたのです? 莉乃? 早くいくのです」
椿が下から上目遣いで私を見ている、ヤバいかわいい、鼻血でる。
「オマタセシマシタ」
幸せな気持ちでフワフワしながら祠の前に到着。
「大丈夫か莉乃? 顔が赤いようだが」
「ダイジョウブダヨー、莉乃ダヨー」
「お、おぅ、大丈夫ならかまわないのだが……」
ちょっと心配してくれている桔梗、言えない、君たちがかわいいせいだとは言えない。
「いいかい莉乃、この祠は術を通すことで、兎神様の御屋敷まで飛べるようになっている」
そう言って、祠に向き直り、何にかむにょむにょと唱えだすと、桔梗の体がぼんやり光りだした。
「はぁ、何か光ってるね、綺麗だね~」
私は、椿を抱きかかえほっぺをすりすりしながら、その光景を見ている。
「見えるのですか? やはり莉乃は呼ばれただけはあるのですね、このやたら触ってくる変な癖さえなければ……、うぅぅ、恥ずかしいのです……」
言えない、君たちがかわいいせいだとは言えない。
「……何をしているんだ、莉乃」
あきれた声で桔梗が言う、えー、だって暇だしー。
「さぁ、兎神様の御屋敷に行くぞ」
「え?」
そう言われて、私は周りを見渡してみる。
変わっていた。
村のかやぶき屋根の家々は無く、はるか遠く、どのくらい距離が離れているのかわからないけど、ここから見ても大きな木々の林に囲まれている、そしてその木々を遮るように、高い壁で囲われている。
離れた場所に、私たちが立っているような、丸くかたどられた石畳上に小さな祠がいくつも見える。
ここは壁に囲まれた広い庭のような場所で、白い玉砂利が引き詰められ、私たちが居る場所からは石畳の道が続いている。
そして、その石畳の道の先には、これまた高い塀が有り、石畳の道は大きな門に集まっている。
「さぁ、行こう莉乃」
「早く行くのです」
二羽のウサギたちに連れられて、私は兎神様の御屋敷へと続く道を歩き出した。
大きな門をくぐると、兎神様の御屋敷が姿を見せる。
「あれが兎神様の御屋敷……」
それは、まるで大きな神社やお寺のような。
華美ではない、どちらかと言えば地味だ、でも、その御屋敷は朝日に輝く山のように美しく、荘厳って言うのだろうか、見ているだけで心の奥が震えるような、そんな大きな御屋敷が建っている。
感動して少し見ていたのだけれど、椿がグイグイと手を引いて急かしてくる。
うん、わかってるから、お待ちしてるんだよね、わかってるからー。
「はぁ~」
何度目か、私の間抜けなため息がでる。
大きな御屋敷の中。
高い天井、白い壁、綺麗な絵が描かれている大きなフスマ、五人以上で手を繋がなければ囲えないだろう大きな柱が並び、そりゃもう四車線道路くらい広い板張りの廊下を歩いている、見た目以上に中が広い、そりゃ神様が住んでるならおかしなことがあっても当然か? な? うん。
あれですよ、来る前に桔梗に「粗相がないように」とか言われて、『精神保護の術』みたいの掛けられなかったら、小一時間呆けてるか、座り込んでガクブルしてましたわよ。
私の前で先導してくれているのは、桔梗。
相変らず、私の手を引いているのは、椿。
私の後ろには、十羽くらいの巫女服を着たウサギたちがシズシズと付いて来ている、みんなかわいい。
「それにしても……、よくみんな迷わないね? 私、絶対迷うわ……」
大きなふすまに書いてある、絵柄とかで判別してるんだろうか? 案内板とか、地図とかほしいわ。
「見習いの子とかよく迷ってるです、要はなれなのです」
隣の椿が、そんな事を言うが……私は無理だわー。
「まぁ、莉乃には私たちが付いているから、安心してくれ」
「ありがとう、桔梗ちゃん、愛してるー」
「は! あ!? はぁあっ、何を……もにょもにょ」
たぶん顔真っ赤だわー、かわいいー。
そんなこんなで、大きなふすまの前まで来て桔梗が止まる。
後ろを歩いていたウサギたちが前に出て、ふすまを開けると今度は一面畳が引かれている大きな部屋だ、イグサの香りがする、新品なの? 神様住んでいるなら仕方ないか、うん、そうだね、うん。
部屋に通され、三つ並んだ座布団の上に私と桔梗と椿が座り、兎神様を待つことになった。
私は、椿と桔梗に挟まれるように座っている。
後から付いて来たウサギたちも、部屋の両脇に並んで座っている。
目の前には、一段高くなった場所があって、綺麗な敷物がひかれ、金糸で柄の入った大きなクッションのようなものが置かれている、たぶん兎神様が座る場所なんだろう。
キョロキョロしているので、椿が私の袖を引っ張って睨んでいる、テヘッ。
シャン!
澄みきった鈴が鳴るような音がした。
ウサギたちが、一斉に頭を下げる。
横から桔梗が私をつつく。
ハッとして、私も慌てて頭を下げる。
「皆さん、面を上げて」
落ち着いたやさしい声が部屋の中に響く。
大きなクッションの上に座っている、これまた大きなウサギが現れた。
いや、ウサギ、うん、ウサギなんだけど、人間の姿形に似ている、いやそれも違う気がする、ウサギの姿の龍が人の形をしたみたいな、良くある動物の擬人化(それも動物寄り)みたいな。
細いその姿は豪華な着物に包まれ、しなやかな長い耳が優雅に揺れている、光沢のある白い毛、憂いのある大きな瞳は深い青、シャラシャラと金の飾りが音を立てている。
これが兎神様……。
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