第4話流星の如き無限の斬撃

「ギルドマスターを呼べ‼大変だ‼」


 そう言って、ボロボロの男がふらつきながらも、しかし声を張り叫んだ。服は血だらけで、左腕の肘から下がない。


「ど、どういたしましたか⁉と、取り敢えず医務室へ‼誰か、ギルドマスターを呼んできて‼」


 そう言って、職員が男に肩を貸し、ギルドの医務室へ連れていく。そして、他の職員がギルドマスターを呼びに、執務室へ急ぎ足で向かった。


「おいおい、何事だ?」

「さ、さあ?あの人たしか、ランクSの『魔砲のダズ』よ。結構ベテランだから、あの人が怪我するなんて珍しいのよ。それに、あんな大怪我をするなんて」


 どうやら、あの男はこの町で有名らしい。


「どうする?」

「そうだな。じゃあ俺はカイジュを呼んでくるかな」


 そう言って俺は立ち上がり、走ってギルドの外へ向かった。そして、あらかじめカイジュに創ってもらったスキル、『念の話』で、カイジュに連絡する。


[おい、カイジュ。今何処に居るんだ?]


 そんなことを念話で言った刹那。


「おう、ここにいるぜ」


 カイジュは俺の背中を叩いて、後ろから出てきた。


「うおっ、ビックリさせんなよ‼」

「すまんすまん。で、用件は?」

「ああ、そうだな。実は......」


 俺は、ことの経緯いきさつを全て話した。


「ふーん、それで?」

「それで、って何かねえのかよ」

「ねえのかよって言われてもなあ。俺たちにできることなんて何もないだろ。クエストが出るなら別だが」

「そのクエストが出るかもしれねえんだよ‼」

「なら最初からそう言え‼」


 カイジュは、ギルドへ走っていった。俺もそれを追うことにした。




 ギルドに着くと、中が騒然としていた。リリアが一人で座っていたのを見つけ、二人で寄る。


「おい、リリア。何があったんだ?」

「あっ‼カイジュ‼レント‼実は......」


 リリアが話した内容を要約すると、あのバルカンという男は、俺たちが行った山を調査する依頼をパーティーで受けていたらしい。そして、見たのは山肌が熔けていたこと、パーティーは謎のモンスターによって殺されたこと、そしてそのモンスターの特徴だ。


 そのモンスターは、深紅の双眼に、蒼い一本角、漆黒の体に爛れた翼を持っていたそう。そいつは瞬く間に仲間を蹂躙し、気づいたときには、みんなボロボロだったそうだ。そして、そいつの目が光ったと思い、近くの岩影に隠れたところ、仲間がみんなドロドロに熔けていたそうだ。


 そして、ギルドマスターの見解から、そのモンスターは、ガーゴイルの亜種、『ヘルズ・ガーゴイル』だそうだ。そして、こいつを討伐する依頼が出されたそうだ。討伐報酬は白金貨十枚と、ランクがEであろうとSランクに昇格させるらしい。


「へえ、いい仕事じゃねえか。その依頼、俺たちで受けようぜ」


 カイジュが笑いながら言った。


「そ、そんなの無理よ⁉Sランクパーティーが一瞬でやられたのよ⁉私たち風情が勝てるわけないじゃない‼」

「まあ、普通ならな」


 カイジュがわけのわからないことを言い出した。


「確かに俺たちはSランクでも何でもない。だが、それを。上回る力は持ってるつもりだ。なんなら前線は俺がやる。二人にはサポートを頼みたい。いいか?」


 正直俺は怖い。Sランク冒険者がどれ程強いのかはわからないが、ギルドで一番強いものが蹂躙されるモンスター何て、相当強いに決まっている。死ぬかもしれないのに、そんなことしたくなかった。だが、カイジュが言ったんだ。俺だってやってやる。


「わかったわ。レントもいいわね」

「ああ、勿論」

「じゃあお前ら、死にそうになったら、なにがなんでも絶対逃げろ。生き残れ」

「「ああ(ええ)‼」」

「行くぞ‼」


 俺たちは、ヘルズ・ガーゴイルを討伐しに、山へと向かった。




「んだこりゃ。すげえな」


 見渡す限り一面更地。そして、Sランクパーティーの冒険者たちと見受けられるものたちの死体があった。それも、皮膚が熔けて、内蔵やらが丸見えだった。


「ッ‼気を着けろ‼来るぞ‼」


 レントとリリアが警戒体制に入る。そして、目の前にそいつが現れた。


「ギヤアア‼」


 この世の生物とは思えない、奇怪で恐ろしい声で叫んだこの化け物を倒すには、速攻できめなければならない。俺は本能でそう感じると、憤怒の法剣を抜き去り、法剣技を放った。


「灰塵にせ‼『グラン・スターダスト』‼」


 目にも止まらぬ無限の斬撃。一瞬で魔物を殺した。


「す、凄い......」


 リリアは、その場にへなっと座り込んだ。その間に、討伐示唆部位である蒼い角をとり、二人のもとへ向かった。




「今のは一体なんだよ⁉一撃で倒すなんて凄すぎだろ⁉」

「ああ、あれは『グラン・スターダスト』って言って、憤怒の法剣の法剣技の一つだ。雷、光、土の三つの属性の複合属性、『星属性』の魔法だ」


 星属性は、使えるものが極端に少ないため、知っているものも少ない。全属性の中で最もスピードが速く、扱うのが難しい魔法だ。


「んで、さっきのはどんな魔法なんだ?」

「単純なもんさ。星属性を剣に纏わせて、光の速さで動く。それによって、爆発的な火力が生まれるんだよ」

「本当に規格外ね。まさにチーターね」

「チーターとはなんだ。あのまま殺されるよりも殺した方が良かっただろうが」

「た、確かにそうだけど」

「まあそんな下らないことはおいといて、さっさとギルドへ帰ろうぜ。報酬が楽しみだぜ」

「お前は何にもやってねえだろうが‼」




 ギルドに着き、早速依頼完了を伝えるため、執務室へ向かう。普通なら、執務室ではなくカウンターへ向かうのだが、今回は例外中の例外、危険な魔物の討伐依頼だったからか、ギルドマスターへ直接報告しなければならない。


「失礼します」


 俺は返事がきたのを確認して、扉を開き中へ入った。


「おう、ここに来たってことは依頼完了ってことか?」

「はい、討伐示唆部位である角もありますよ」


 俺は布袋から、蒼い角を取りだし、執務室の机に置いた。よく見ると、この蒼い角の先端には小さな穴が空いている。


「ほう、こりゃすげえな。これはお前らで倒したのか?」

「い、いえ、正確にはカイジュが一人で......」


 と、リリアが言った。


「お前が、一人で......?」

「はい、まあそうですね」


 暫くギルドマスターが黙り込む。そして、何を考えたのか、こんなことを言い出した。


「お前、カイジュって言ったな。ここのギルドマスターにならねえか?」

「は?」


 思わず、目上の人にも関わらず、大きな声を出してしまった。


「すみません」

「いや、構わねえよ。突然こんなこと言われて、驚かねえやつの方が失礼ってもんだ」

「そういうものでしょうか?」

「そういうもんだ。で、どうするんだ?」


 正直に言うと、どうでもいい。というか、面倒くさそうだからやりたくはない。ただ、目上の方に、キッパリと即答するのはいかがなものだろうか。絶対失礼だ。


「あの、どうして俺なんですか?俺はまだまだ新人、今日冒険者登録したばかりですよ?」

「そうだが、一日の内にSランクまでいったやつは、歴史上一人もいねえ。まあ今回は特別だとしても、お前は貴重な人材なんだよ。それに俺もそろそろ引退すべきだろうしな」


 そんなことを言いながら、このギルドマスターとか言うやつは、ニヤニヤと笑っている。多分、引退なんてする気はないんだろう。ただ、理由を着けて楽をしたいだけだろう。


「すみませんが、それはできません」


 俺がそう言うと、ギルドマスターと、レントたちが驚いた。


「どうしてだ?」

「まず俺には経験が足りません。まあこんなことはだんだん経験を積めばいいことです。正直に言わせてもらいますが、俺は人の上に立つようなことは面倒くさいですし、苦手なのでやりたくないのです」

「そうか。なら仕方ねえ。諦めるとしよう」


 そう言ったギルドマスターは、立ち上がった。


「さて、俺からの話は以上だ。カウンターに行ってさっさと報酬もらってこい」


 俺たちを急かすように部屋から追い出した。


「何か凄いわね。カイジュって」


 ふふふ、と笑いながらリリアが言ってきた。


「何が?」

「だって最初はマンティコアの群れを、次はガーゴイルを一撃で倒しちゃうんだもん。凄い以外に何て言えばいいのかしら」


 正確には俺が凄いのではなく、憤怒の法剣が凄いのだが。そうこうしている内に、カウンターについた。すぐに職員が来て、報酬を渡してきた。


「えっ⁉何でこんなにいっぱい⁉」


 確かに多いな。と、思って見てみると、報酬は白金貨十枚ではなく、その三倍の三十枚が入っていた。そして、三人分のSランクカードがあった。


「何で三人分あるんだ?」

「はい、討伐したのは三人ですので、三人分の報酬をと、ギルドマスターがおっしゃっていました」


 俺たちは一人一人白金貨十枚を受け取った。


「こんな大金、本当にいいの?カイジュ、ほとんどというか全部あなたがやったのよ?」

「ああ、俺たちなんてただついていっただけだぞ。お前が三十枚持ってっても文句は言わねえぞ」

「三十枚も持ってても使い道がないだろ。それに、お前らのことを、本当の意味で信頼できるからいってんだぞ。俺の信頼を裏切るってのか?」


 俺は半分脅し気味に言った。すると、二人は笑いながら言う。


「ってことは、あの剣についてもっと教えてくれるってことかしら。やったわ‼」

「おいおい、本当の意味でってどういう意味だよ。俺たちずっと一緒だっただろ」


 いい仲間を持ったものだ。一人は本音が駄々漏れだが。


「つー訳で、どうすっかな。また依頼受けるか?」

「いいわね。今度は何を受けるの?」

「どっか遠いとこまで行く依頼とか良さそうじゃねえか。本当の意味で未知の場所に行ってどれ程通用するのか、気にならねえか?」

「いいわね。じゃあ依頼受諾してくるわ」


 そう言って、リリアがクエストボードの中から一枚取って、カウンターへ言った。


「なあカイジュ、リリアに話した方がいいか?俺たちのこと」


 俺たちのこと、というのは、俺たちが異世界から召喚されたことや、俺の本当の職業や俺たちのスキルのことだ。


「俺はいいと思ってるぞ。たった一日活動しただけで信頼できるってのもおかしな話だが、リリアなら大丈夫だ」

「そうか」

「依頼受諾できたわ。これから、隣町の『ウィンガル』ってところの近くにある渓谷を調査するんだから。早速行くわよ」


 リリアは、一足先にギルドを出て歩き出した。


「俺たちも行こうぜ‼」




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❮魔法について❯

 魔法は、異世界で人間が魔物に対するための手段だ。魔力を消費することで、魔法を具現化して放つ。つまり、魔力が高ければ高いほど、たくさんの魔法を放てるのだ。例外として、放たずに体に魔力を留めて、纏って使う魔法もある。


❮属性について❯

 異世界にはたくさんの属性が存在する。魔法や武器の特性に付与されていたりとする。

 基本属性は六つ。火・水・風・土・光・闇だ。それぞれ火は闇に、闇は光に、光は風に、風は土に、土は水に、水は火に強い。だから、同じ威力の魔法を放ちぶつけると、水属性と火属性の魔法では、水属性の方が勝つ計算になる。

 複合属性とは、基本属性や複合属性を複数組み合わせることで完成する新たな属性だ。火と風を併せると雷に、水と風を併せると氷に、水と光を併せると聖に、土と闇を併せると邪に、水と闇を併せると毒に、火と闇を併せると焔に、聖と邪を併せると天に、天と光と闇を併せると時空に、土と光と雷を併せると星に、風と光と天を併せると影に、時空と星を併せると重力になる。


・火

・水

・風

・土

・光

・闇

・雷(火+風)

・氷(水+風)

・聖(水+光)

・邪(土+闇)

・毒(水+闇)

・焔(火+闇)

・天(聖+邪)

・時空(天+光+闇)

・星(土+光+雷)

・影(風+光+天)

・重力(時空+星)








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