第2話 思い出は消え失せて

ジュンスの母は、

ジュンスが恋をすることを

許さなかった。


ジュンスが恋をするたびに、

必ず邪魔をして

二人を別れさせた。


「あなたな王位に就く人なの。

あんな女の子に引っかかっては駄目!」

それが王妃の口癖だった。


「言われなくても、わかってますよ、母上。

僕は絶対、あなたのような女性に

ひっかからないし、騙されません」

と心の中で、ジュンスはいつも叫んでいた。


母の眼を盗んで

恋人とあっていても、

いつも心は

満たされなった。


恋人たちはいつも

母と同じで、

王位継承者としてのジュンスを

愛した。

そして王妃になることを

夢見た。


王妃はジュンスに注がれる

女性たちの熱いまなざしを

知っていた。

だからジュンスを

その誘惑から遠ざけるため

ヨーロッパの

名門男子校に

留学させたのだ。


しかしそれが失敗だったことを、

じきに王妃は知る。

そして悲劇の惨事が

起こった。


ジュンスは転校後、

なんとかサーシャと

連絡を取ろうとしたが、

うまくゆかなかった。


月日が経つごとに

ジュンスの中で

空しさが増して行き、

サーシャをだんだん

憎むようにさえなっていた。


みんな同じだ・・・

あのサーシャでさへ

僕を裏切った。


だから偶然、昔の友人に

街中で会い、

サーシャが一年以上も前に

死んでいたことを知らされたとき、

ジュンスは自分の愚かしさを

恥たし、許せなかった。


サーシャは、あの夏の日、

ジュンスが新しい留学先へ

無理やり転校させられた

あの夏の終わりの日に、

死んでいた。


家族全員が巻き込まれた

大きな爆発事故があり、

そのときサーシャは

家族とともに

死んでいた。


ひどい事故で、

すべてが跡形もなく

焼き尽くされ、

原因はいまだに不明だった。

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