「ジュンスの恋」

来夢来人

第1話 <プロローグ>


「ジュンス」と

誰かに呼ばれたような気がした。



「ジュンス」と再び呼ぶ声に

ジュンスは

後ろを振り返った。


しかしそこには

誰もいなかった。


頬をなぶるような

微かな風が

ジュンスを包み、

次の瞬間、窓が砕け散った。


強い風と共に、

砕け散ったガラスの破片と一緒に

小鳥が飛び込んできた。


折れた翼で、必死に

飛ぼうとする。

しかし強い風の中

バランスを失った小鳥は

そのまま壁に激突し、

息絶えた。


第1章 「宮殿の空」


レム王国の王子ジュンスは、

宮殿での暮らしが嫌いだった。

しかし学校は長い夏休みに入っており、

新学期が始まるまでは、

ここで我慢しなければならなかった。


王位継承権は第2位。

現国王にとってジュンスは

ふたり目の息子だったが、

第一王妃は精神を患った後、

治療に出かけた異国で死んだことから、

第2王妃であるジュンスの母が、

現在は国母となっていた。

しかし母である第2王妃が

踊り子出身で、

卑しい身分の生まれであったことから、

ジュンスは王室では疎まれた。


祖父である前国王は、、

第一王妃の息子である兄を溺愛し

ジュンスにはいつも冷たく当たった。


「ジュンス様、王妃さまがお呼びです」


母の顔も本当は、見たくなかった。

しかしその日のジュンスは、心に少しゆとりがあった。

明日、ここを離れ学校へもどれるのだ。


『サーシャにまた会える!』


それは大きな喜びだった。

天使のように美しいサーシャに、

また会える。

早く学校に、戻りたい。



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