第28話 白亜の街、或いは海と塩の都
白亜と水の都フリュード。
そう呼ばれる
建物は基本白塗りでその家々の間には水路がこれでもかというほど通っている。白を基調とした街の色と青く澄んだ海の調和が見ているだけで心地良い。
遠くに見える桟橋には何十隻もの船が停泊している。埠頭や桟橋には多くの人夫が荷物を担いで行き交っていた。宗主国の首都アカロウトとはまた違った賑やかさだ。
「潮風ってこんな感じなんですね」
竜車から降り立ったフウカが周りを見回しながら呟く。
「風がしょっぱいって不思議」
隣でシャルロットがその小さな体躯で一生懸命に背を伸ばして海を見ている。ノウトが振り返ると後ろから着いてきていた他のパーティの竜車からも次々と人が降りているのが見えた。
竜車の客車内から出て来たニコが伸びをしている。
「あー疲れたー長かったーお尻いたーい」
「分かってるとは思いますがまだ目的地にはついてないですからね」
膝を抱えてしゃがみこむニコの肩にパトリツィアが手を置く。
「分かってるけどさぁ。竜車の乗り心地最悪なんだよぉ~」
「それはみんな同じです。我慢してください」
「はぁーい」
ニコはパトリツィアの手を取って立ち上がる。
申し訳ありません、とパトリツィア達の竜車を操縦していた騎手が頭を下げていたがカミルが「
するとノウト達の竜車の騎手ウルバンが荷台から降りてきて、
「勇者様方。荷物はお纏めになりましたか?」
ノウトはパーティの仲間たちと目配せして用意が出来ていることを確認する。
「はい、大丈夫です」
「では我々は先に宿へ向かってましょう」
「ちょっと待って下さい」
リアが振り返って歩き出すウルバンを制止させる。
「ごめんなさい少し時間下さい。あの子をミカエルくん達に会わさせてあげてからでいいですか?」
リアは未だ竜車内にいるコリーのことを言っているのだろう。
「はい。もちろん」
ウルバンは間を開けることなく返事をした。この勇者に対する忠誠心はもはや畏怖すらも感じる。
「それでは私はここでお待ちしているので、いつでも戻ってきて下さい」
「了解です!」
リアはニコッと笑いながら諧謔的な敬礼をしてからノウト達と共にミカエルのもとへとコリーを連れて歩いていった。その途中、宿へと向かっているのであろうフェイやニコ達とすれ違い、軽く手を振り合う。
「ん? どうしたの?」
ミカエルが振り返って問う。コリーの姿を見ても分からないようだ。
おそらく後ろからコリーが刺したためにミカエルはその顔を見ていないのだろう。スクードやエヴァ、カンナにも心当たりがないようだ。
「実は───」
ノウトがミカエル達に事情を説明しようとしたその時だった。
「───アヤ」
ふと突然声がした方を見るとエヴァの隣に女の子がすっとその場に浮かび上がってきた。
空色の髪をした少女だ。適切な表現が上手く思い浮かばないが、そこにいたのに気付くことができなかった。でも気付いた今となってはどうして今まで彼女のことが見えてなかったのか分からない。
その少女は真っ直ぐとこちらを見ている。その少女が形容し難いほど端正な顔立ちをしていたので少しの間見入ってしまう。
顔のパーツ一つ一つを神様が選んで時間をかけて配置したみたいな。あれ? というか────
「──え……? 俺?」
「えっ……見える、の?」
「さっき、なんて……言ったんだ?」
ノウトがその儚げな少女に問いかけたところで、
「どうしたの、ノウト。誰に話しかけてるんだ?」
レンが怪訝な表情でノウトの顔を覗き込む。
「いや、レン。ここにほら。女の子が急に現れて」
「ノウト、流石に休んだ方がいいんじゃ……」
フウカがノウトの体調を心配する。
「いやいやいや……みんな見えないのか?」
リアがこちらをじっとこちらを見ている。
いや、リア、今はヴェロアと会話してる訳じゃなくって、とは心に思ったが口にすることは出来なかった。
「これは驚いたっす……。ノウトにはマシロが見えるんすね」
スクードが顎に手を当てながら話す。
「マ、マシロ?」
「マシロちゃんはねー、可愛い女の子だよー」
「いや、それ説明になってないっすよ」
「命の恩人のリアさん達には教えてもいいかな。マシロ、いい?」
「……うん」
ミカエルはノウト達の顔をそれぞれ見回しながら、真剣な表情で声を潜めて話す。
「実は僕達のパーティは4人じゃなくて5人なんだ」
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