第2話 逆転生
「あの扉が気になるなら、入ればいいじゃん」
スタンダードなメイド服を着た“さーしゃ”さんが言った。痩せすぎずの高身長から放たれる、むっちりと段差になっている絶対領域が艶めかしい。
「えっ、むしろ良いんですか?」
「従業員以外は入ってはダメですよ?」
ふわりさんが割って入ってきた。柔らかい物腰ながら強引に進めるタイプだ。
「あ、やっぱりダメなんですね」
「別にそんなことないし。ふわりは慎重というより潔癖だよね。試してみればいいのに」
「え、何の話してんの皆」
「みかんちゃんは私だけ見ていて下さいね♪」
「はぁーい」
「なんという絶対的な信頼による強権行使wwww」
「ユリエルはどう思うの?」
さーしゃさんは注文されたドリンクを運んできたユリエルに会話を振った。
「私ですか……? 確かに、理論上は問題ない…………はず、です」
歯切れが悪いのがいつもの癖、性格なのかそういう話題なのか、今回は判断がつかなかった。
「だってさ、ふわり」
「無意味に終わるかもしれないわ」
「ならこの世界が無駄だったってことでしょ。0か1しかないなら」
「話の意味は理解できないけどさー、私、覚悟はあるよ」
「酒で酔っ払っている人間の言うこと信頼性0%ww」
「真面目に言っているし! だってさ、ふわりの見ている世界が私も見たい」
みかん氏はアルコールでとろんとした目であっても。ふわりを見据えていた。三人の中で“でぃどり~む”のファン歴が長いのはみかん氏なのだ。
彼女にしか語れない思いもあるのだろう。
「…………みかんさん…………」
それ以上、ふわりさんは何も言わなかった。
「モブ君と豚は?」
「行きますか」「ですな」
「か、軽くないですか……?」
「そもそも、なぜ御三方が店に関係なさそうな扉相手に深刻そうな顔をするかの理由が分からないっていうwwwwww」
「僕もユリエルのところへ行けるなら行きたいですから」
「んじゃ行くよ」
先に渋々とした足取りのふわり、緩まないさーしゃ、後ろめたいのか不安そうなユリエルの三人が扉を潜っていった。
「うーむ。扉の先に何があるのか逆光かで分からないですな」
「それじゃ誰から行きます?」
「んじゃ私からで良いね」
「おk」「次は俺、入りますね」「りょ」
木製の扉の、その先に足を踏み入れた時、発音は知らない言語ながらも意味を理解できる言葉が脳裏に流れ出した。
――演算空間の展開を限定停止。
――仮想動体の活動を保存し、霊体固定帯にて再構築開始。
――変数法則シミュレーター“でぃどり~む”との接続解除を確認。
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