第4話作ってはみたものの

「作ってみた? 」


「ハイ、仰せの通りに。先に豆腐をいれて


後で春雨を入れると、味が双方にしみて


美味しかった! これだったら


水溶き片栗粉がいらないね」


「そうなの、中華料理店が聞いたら邪道と


いわれるだろうけど、家庭内の事なので


許してほしい


で、もう一つ発見しちゃった


究極の麻婆豆腐の秘訣」


「え! 何? 簡単な事? 」


「超簡単、簡単すぎてというか


私の力は皆無、買うだけ」


「ということは? 」


「そう、美味しいお豆腐を使うこと!


私は木綿よりも絹が好きだから


それに近いものを使う」


「高い豆腐って、あの円い容器とかに


入っているやつね」


「そうそう、形は崩れてチャンプルーみたいに


なってしまうけど・・・でもさすがに違うよ!


値段分はある!」


「そうか、そうだよね。豆腐料理だもんね


メインだ。今度また試してみる。今日でもいいか


はるさめ・・・め・・・め・・・うーん


あのー逆にしてくれるとありがたい・・・


麻婆春雨 豆腐と」


「オッケー、オッケー、では豆腐の


ふ、でどうぞ」


「すいません、本当にお言葉に


甘えます、フ、これは作ったことがある


フレンチクルーラー! 」


「フレンチクルーラー? 私は作ったことがない、


あれはシュー生地をあげたものって感じ? 」


「そう、案外すんなりできたけど・・・」


「けど? おいしくなかったの? 」


「いやいや、とっても美味しかったよ! 


タダね、一個食べたら結構お腹がいっぱいに


なっちゃって、作る数をまちがえた・・・」


「ああ・・・揚げ物のお菓子はね


作る量が難しいよね」


「フレンチクルーラーを作るのなら、


逆に面倒かもしれないけど


少量をお勧めします」


「はい、ありがとうございます。じゃあ


ラ、ら、ラッキョウの塩漬け」


「ああ! 自家製ラッキョウ! 


手間だけど、これはそうする


価値が十分あるよね」


「そうだね、本当は塩漬けの後


甘酢漬けにするつもりだったんだけど


そのままでも十分美味しかったから


そこで止めている」


「そうなんだ、今年はラッキョウ


頑張るかな。次け、ケ、ケバブ!」


「好きよね、ケバブ」


「大好き! 何だろうあの肉のおいしさは」


「あの独特のロースターのためなんだろうね」


「そうだろうね。それにケバブは基本


はずれが少ないから」


「確かに、確かに」


「でも好きすぎて、あのロースター欲しいななんて


思ってしまうの」


「あれは個人宅では無理」


「買いそうになったら・・・私を止めてくれる? 」


「引き受けました! ではブ、ぶ、豚の角煮!


でもこれは地域限定かな」


「地域限定? 」


「私別府の鉄輪(かんなわ)温泉に行って、


地獄蒸しを作るのが好きなの」


「地獄蒸しって温泉の蒸気で蒸すのよね


使えるところがあるの? 」


「持ち込みで、蒸してくれるところもあるんだけど


私は自炊の宿に泊まるの、地獄蒸しの窯


使い放題だから」


「プリン、有名だよね」


「そう、だからやってみたけど、大失敗の


ずーっと連続。自分なりに考えてはだめで


どうしようと思ったんだけど


結論が出た」


「どうしたの? 」


「諦めた」


「ハハハ、潔いね」


「だってその有名なプリンだって、蒸せる人が


少ししかいないんだって。蒸気の毎日毎分


違ってくるのを見極めるのは


職人技だよね」


「それはそうだ! で、角煮は? 」


「何度か鉄輪に通っていたら、そうか、


普段はちょっとガス代のことを気にする


料理を作ろうと思って、挑戦してみた」


「大変だよね、豚の塊のまま一度茹でて、冷まして


上に浮かんだ油をとって、今度は蒸す


で、どうだった?」


「肉がね・・・ほどけた」


「豚のバラが?」


「繊維のままほろほろと、


まったく固くない。味もしみているし


美味しい、唯一の欠点は柔らかすぎること


もうちょっと時間短めで良かったかな」


「そうなんだ・・・」


「でも最近鉄輪の蒸気が一定していなくて


心配なの、色々な影響なのかな」


「早く戻るといいね」


「祈るばかりだね」

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おいしいものシリトリ @nakamichiko

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