■15.魔法研究

さて、今日は魔法の研究。自分がどんな魔法を使えるのか、さっぱり分からない。

地下の玄関から外に出て、まずはおさらいから。


「マッチ」


そういうと指先にポンっと火がついた。息を吹きかければ消える。

火は危ないのでこれでおしまいにする。

山火事にでもなったらしゃれにならない。


次に、バケツを覗きながら水を連想する。

この間は「天然水」と言ってしまったが、バケツに天然水は勿体ないな、と思った。


「とりあえず水」


そういうと、見た目普通の水がバケツいっぱいに湧いた。「天然水」と言った時には光っていたが、今目の前にある水は光っていない。

多分見た目通り普通の水だろう。

ベルナルドさんのように口をつける勇気は無い。バケツだし。


次は落ち葉の方を見つめる。

そちらの方向に手を伸ばし、葉っぱが渦巻くのを想像してみる。


「つむじ風」


そういうと、葉っぱの周りにつむじ風が起こり、何枚もの落ち葉や砂埃が渦を巻いて立ち上った。

手を横に払うそぶりをすると風は止み、葉っぱははらはらと舞い落ちた。

やはり、魔法とは想像力が全てのような気がする。

今度は何も言わず、同じように手をかざし、頭の中で「つむじ風」と言ってみた。

するとやはり、先ほどと同じようにつむじ風がおこり、落ち葉を再び躍らせはじめた。

しかし、声に出していたほうが綺麗に渦巻いていた気がする。

声に出すことによって、想像を形にしやすいのかもしれない。


これで火、水、風のおさらいは終わった。風は治癒のときに意識していなかったので初めての感覚だったが。

「痛いの痛いの飛んで行け」の「飛んで」で風が発生したと思われる。


次に、自分で何度も言った「雷」。

家電は雷で動いている、と言ったとき、誰も不思議がらなかった。

実際に雷を動力にして動く魔導具があるのかもしれない。

何はともあれ雷。

うーん、雷かぁ…。実は雷苦手なんだよねー。

ピカッの後のドーンッ!って大きい音が怖くて。

静電気のバチッっていうやつも苦手だし。

どうやろうかな…。


そういえば前に雷で模様が描ける、というのをテレビで見た気がする。

確か電気を通しやすい鉄板や木の板で出来たはず。

そう思い出して、森へと行く。

木の板が欲しい。しかしここには立派な木しか無い。

ここは魔法の応用をしてみよう。

一本の木の前で手をかざして木が切れるのをイメージする。


「エアーカッター」


風がおこり、木に向ってシュッと音がした。

しかし、木を見てみると表面に若干傷がついただけだった。

どうやらイメージが弱かったようだ。

「切る」では駄目なのだ。

もう一度、今度は木が倒れるくらいを想像してお腹に力を入れてみる。

風は鋭く速く。


「かまいたちっ!」


グワンッと空気が裂ける音がしたかと思うと、木が音を立てて倒れた。

そして目の前には綺麗に切断された切り株があった。

風で木を「伐る」ことに成功した。

これを板にしなくちゃ、と再び倒れた木に向って何度か風魔法を使い、板を量産した。

これ、何かに使えそう。干しておこう、と板を庭に並べて干した。

枝も何かに使えるかもしれないので、まとめて厩の隅に置いておくことにした。


気がつけば太陽は真上にのぼり、お腹も空腹を訴えていた。

ひとまず雷魔法は置いといて、お昼休憩をとることにしよう。

決して雷が怖いから後手にしたわけではない。

お腹が空腹を訴えているからなんだ。うん。


お昼は久しぶりにインスタントラーメンにした。

キャベツ、もやし、ピーマンとニンジン、それにウインナーを炒めたものを上にのせ、具沢山にした。

とんこつ味のラーメンはとっても美味しかった。

こんなにお手軽でしかもとっても安いのに、こんなに美味しいのだから、日本の食品はすごいなぁと思う。


さて、お腹も膨れたので今度こそ雷魔法を頑張ります。

先程大量生産した板の中から一枚持ってくる。

そして手に持って、板に電気が流れるのをイメージする。

セリフは・・・うーん、何て言おう。

雷かー。雷・・・ピカピカ?ゴロゴロ?ビリビリ?あっ、これだ


「ビビビッ」


ビビビッと運命感じちゃう感じで。

なんかイメージ違うかな?

でも手元を見てみると、手が触れているところからじわじわと、板に黒く枝が伸びるように模様が描かれていく。

そう、たしか図鑑で見たのもこんな模様だった。


これで一応、雷自体は苦手だけど、雷魔法が使えることも分かった。


後は他にどんな魔法があるだろうか。そういえばベルナルドさんは「土」とも言っていた。

土か。土偶とか?いや、違うか。土壁とか?

あっそうだ!折角なら…と思いつき、ちょっと庭を移動して端っこの何も無いスペースで手をかざす。


「耕す」


そう言うと、固かった地面がボコボコっと動いた。ちょっと怖い。

近寄って土を触ってみると、綺麗に耕されていた。

何コレ超便利。家庭菜園に超便利じゃない?流石に畝までは作られてないけど、そのくらいは自力でやるほうが逆に楽しいかもしれない。

ちょっとこれはこれから色々研究してみたくなった。主に家庭菜園に向けて。


さて、「土」魔法も使えてしまいましたよ。

後は何があるかなー?

そういえば、弟がやっていたゲームでは光と闇がテーマのゲームがあった。


光かー。

外灯のありそうな高さをイメージしながら


「ランタン」


とつぶやくと、そこに丸くて綺麗な光が発生した。

まさにランタンのような明るさだ。

とは言っても、今は昼間なのでそれほど光は感じなかった。

これも手を横に振って消すそぶりをすると、スッと消えた。


闇…はなんか用途考えつかないし、いいかな?

闇鍋とか肝試しとかする機会があれば…ってそれは夜やればいいしねぇ?

映画的なものを見る時とか?

あとは舞台とかなら暗幕的に暗くできたらいい演出が出来そうだけど、今のところ私には全く必要なさそうだ。

必要になりそうだったら、その時に考えようと思う。

というか、なんか分からないけどやりたくない、と思った。


さて、ここまで私は火、水、風、雷、土、光、治癒、そして空間。

八属性使えました。

つまりこれは、あれですね。

途中からなんとなくそんな気はしていたのですが。

小説などでよくある「チート」能力、というやつですね。

私はチート能力を手に入れたことをたった今、確信した。


取り敢えず色んな魔法が使えることは分かった。

これをいかに活用できるかが肝心だ。

そういえば、「天然水」と言った時に出来たものは「ピュアウォーター」という体力が回復するものが出来た。

これはおそらく、水と治癒の複合で出来たものだと思われる。

それと、グレスさんを回復したとき、身体がふわっと浮いていた。

あれは治癒と風の複合魔法だと思われる。

つまり、魔法と魔法をうまく組み合わせれば、魔法の幅が広がる、ということ。


他にも複合魔法で出来ることは無いだろうか。

そうだ、と思いつき、タオルを一枚持ってくる。

それをわざと土で汚す。

ベルナルドさんの言葉を借りるなら、「実験材料を作った」というやつだ。

水魔法と風魔法が出来るなら、洗濯出来るんじゃないの?と思ったのだ。

洗濯機みたいな感じで。


ということで、汚れたタオルに手をかざす。


「洗浄」


土の汚れが綺麗に取れるのをイメージする。

すると、シュンっと音がしてから治癒魔法の時のようにタオルが光と、そして水に包まれ、パンッと弾けたような音がした。

水が弾け飛び霧散する。

若干の光を残しながらふわふわと浮き上がったままのタオルを手に取ってみる。

すると、土汚れは綺麗に無くなっているのが分かる。

かすかに温かくて気持ちがいい。乾燥まで済ませてくれたのか。


これはおそらく、水、風、火の三属性が複合したものではないだろうか。

水と風で洗う。火と風の温風で乾かす。という流れだと思う。多分。


「洗浄」と言ったため「浄化」作用もついていると思われる。

雑菌がついてるかとか目では全く分からないけれど、何となく「異物感」的なものが綺麗さっぱり無くなっている気がした。

「火」に「浄化」作用があるかは分からない。でも熱消毒とかあるし、出来ても不思議ではないよね。

単に「浄化」という魔法もあるのかもしれない。

その場合は更に「浄化」属性もつくことになる。

そのあたりはそのうち誰かに聞くなり調べたりしたいと思う。


まぁつまり長くなってしまったが、お洗濯に成功!ってことで。

洗濯機が使えないようなものに役立ってくれそうだ。

ただし、柔軟剤の香りが大好きなので普段は普通に洗濯しようと思う。


気がつけば、ふぅ、とため息をついていた。たくさん魔法を使ったので結構疲れたみたいだ。

グレスさんの治療をした時ほどでは無いが、またお腹のあたりに空虚感がある。

魔法を使うと、空腹とは別にお腹が空っぽになるような感じがある。


今日はここまでにしておこう。

明日は洋服が届く予定だ。

届いたら着替えてすぐに出かけられるようにしなくちゃ。

今から楽しみだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る