第99話【刀剣と包丁】

「嘆かわしい?」


ミンの呟きを追従するトーホク。


「えぇ・・・彼の作る刀剣は素晴らしい物だったんです

それなのに包丁や鋏の日常品を作るまで落ちぶれるなんて・・・」


俯くミン。


「落ちぶれる、と言うのはちょっと違うんじゃないんです?

寧ろ日用品作っている方が私は凄いと思いますよ?」

「何故です?」

「だって日用品使っている人の方が多いじゃないですか」


トーホクは事も無げにそう言う。


「でも刀剣の方が高いじゃないですか」

「でもドンちゃんの稼ぎが酒やつまみに消えなければ

今頃家が建つ位は稼いでいると思いますよ?」

「そんなに呑んでいるんですかアンタ等・・・」

「そんなに呑んでいるんですね・・・」


ハックが呆れて、ミンが微笑んで言う。


「呑んで何か問題でも?」

「いえ、ドンちゃんが友達と酒盛りするのが想像出来なくて・・・」

「そうなんですか?」

「えぇ、昔は鍛冶一筋で鬼気迫る物が有りました」

「鬼気迫る、ですか、鍛冶の時に

真剣な表情のドンちゃんを見た事が有りますが

そこまでの気迫は感じませんでしたね」

「友達も居なかったので酒盛りする程の友達が出来て安心しました」

「そうですか・・・確かにドンちゃんが昔の友達の話をしたのを聞いた事は無いですね」

「明るくなった、と言う事ですかね」

「そうだな・・・」

「おい」


喫茶店のマスターが三人の元にやってくる。


「何か注文しろよ」

「あ、じゃあ・・・コーヒー」

「私はカフェオレで」

「俺もコーヒーで」

「コーヒーフロートで」


さり気無くでぶ妖精も注文し引っ込むマスター。


「何処まで話しましたっけ?」

「確か幼馴染だって所まで聞きました」

「そうでした、私達は小さい頃から一緒に育って来たんですが

大きくなるにつれてドンちゃんは

何時か家を継ぐ為に鍛冶一筋になっていったんです」

「意外だな、家柄とか気にしないタイプだと思っていたが・・・」

「えぇ、これには理由が有ったんですがそれは後程・・・

そしてカチは対照的に交友関係が広い普通の男の子の様な感じだったんです

勿論鍛冶の腕は有りますが」

「ちょっと待った、ドンちゃんと跡継ぎを争って勝ったと言う事は

ドンちゃんより凄い鍛冶の腕の筈じゃないですか?

そんな普通の男の子の様な感じでドンちゃんより凄い腕なんですか?」

「それは・・・これから説明します」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る