第92話【幸運のでぶ妖精】

”山を登りながらゾンビを次々と倒していく私だったが

単純作業に気が緩んでいたのだろう。

後ろから近づくゾンビに気が付かなかったのだ。


そのままならば私はゾンビに殺されていたかもしれなかったが最初の幸運が働いた。


「後ろにょ!!」


その声に振り向き私は後ろのゾンビを倒す事に成功した。

声の主を探すと服の中にでぶ妖精が紛れていたのだった。

驚く私が何故服の中に居たのかと問うと、起きたら居たとの事だった。

でぶ妖精は好かないが助けて貰った恩も有る為、私はでぶ妖精を連れて行く事にした。

一連の騒動が終わった後に住処に帰してやらねばならない。

私は決意を胸に先に進んだ。


先に進むとゾンビが出てくる洞窟を見かけた。

如何やらゾンビはそこから出て来る様だった。

これはこの洞窟が怪しい、だがこれは厳しい

かと思ったがここで第二の幸運が発動した。


「この洞窟は少し前まで冬ごもりで使う洞窟だったにょー

でも隙間風が入る様になったから使わない様になったにょー」


つまり何処か別の入口が有ると言う事だ、これは良い事を聞いた。

私は周囲を探索し割れ目を見つけた、割れ目の中は狭いが

人一人は充分に通れる広さが有った、私は割れ目の中を通って洞窟に侵入した。


洞窟の内部ではゾンビの呻き声が反響していたが、如何やら別のルートを通っている様で

私はゾンビと一匹も出くわさずに洞窟の最奥に進む事が出来た。”


「実際はどんな感じだったんだ?」


ヴェンデスが問う。


「最初に油を洞窟に流して燃やしてから洞窟を崩して塞いでました」

「・・・流石に引くわ」

「俺も引きました」


”洞窟の内部では祭壇が作られており、冒涜的な儀式が行われ

ゾンビが無数に湧き出ていたのだった。

読者の心に深いダメージを与えると判断し詳細な描写は省かせて貰う。

私も思い出すだけで怖気が走るのだ。

と同時に私はこのゾンビ騒ぎが人為的な物だと言う事に気が付いた。

私はゾンビを生み出す何かがこの山に有ると思っていたのだが

まさか人為的な物だとは思いもしなかった、被害に有った村はのどかで平凡な村で

態々手間をかけて襲う様な人間はいないと思ったからである。

もしも襲うとしてもゾンビを使うのは不自然である、もっといい方法が有る筈だ。


「何者だ!!」


祭壇に居た魔術師が声を挙げる。


「冒険者、マッフィン・トップ!!」


私は名乗りを挙げた”


「実際は名乗りませんでしたけどね」

「そうなのか・・・」

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