第6章【物は言いよう!!】

第83話【幽霊同行者】

ハックは考える。

冒険者になりたくてギルドの門を叩いたのにやった仕事を思い返すと

でぶ妖精探しに物売りに荷物持ちに警備に

人探しと冒険をしていないんじゃないのか?

便利屋の延長的な仕事ばかりしているんじゃないか?

これで自分は良いのか、と考える。

朝からそんな事を考えてギルドに向かいキューにその事を打ち明ける。


「如何思う?キュー?」

「如何思うって、ねぇ・・・冒険の仕事なら有るけど・・・やる?」


キューが提示した仕事は見慣れない仕事だった。


”最近村を荒らす何者かの撃退の幽霊同行者 報酬:30Gと新刊”


「幽霊同行者?」

「そう幽霊同行者」

「・・・何だ幽霊同行者って?」

「幽霊同行者って言うのはね・・・

何て言うのかなゴーストライターって知ってる?」

「ゴーストライター?」

「本の著者の代わりに執筆する裏の著者って奴」

「何だいそりゃ?」

「有名な人の名前で本を書くって事、幽霊同行者って言うのはそれの冒険家版」

「どういう事?」

「この依頼をして来た奴、マッフィン・トップって言うんだけど

そいつは冒険譚の執筆をやっている冒険者なの、でも一人で冒険する力量は無い

だが自分一人でやった事にした方が映える」

「・・・要するに冒険譚を書く為の冒険をしたいので同行して欲しい

でも冒険譚を書く時に俺の存在は書かない、と言う事?」

「そういう事」

「・・・・・」


考え込むハック。


「でも報酬の30Gって高過ぎない?」

「トップを余り見縊らない方が良い、アイツの文才は並の小説家以上

以前アイツのでぶ妖精捕獲にバッティングした事が有るんだけど

平凡なでぶ妖精捕獲をドラマチックに500P越えの小説にして出版した事が有る

アイツは箸が落ちてもその気になれば本は書けるし印税もその位にはなる」

「な、何だそりゃ・・・」

「盛ったり過剰演出過多だけども

種を知っている私ですら泣いたわ」

「泣くの!?」

「感動巨編だった」

「感動するのか!?」

「まぁそんな奴だけど冒険を金で売るって仕事だし止めとく?」

「でも俺は今、冒険に飢えてる、冒険飢餓者なんだ

やってみても良いかな?」

「冒険飢餓者って変な言葉を・・・まぁ良いんじゃない?

とりあえず色々打ち合わせとか入るから待っててね」

「よろしく頼む」

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