第82話【クハルと相棒】

クハルが都に帰って来た三日後。


「おはようございますクハルさん」

「おう、おはようハック」


黒いスーツを着て出かけるクハル。


「・・・何処かにお出かけですか?」

「昔の相棒に会いにな」

「そうですかー、お気を付けてー」


ハックと挨拶をした後にクハルは花屋に行って花束を買った

こうして相棒の所に行くのは本当に久々で心情的には初めてかもしれない。

花を買ったが相棒の好きな花かは知らないし花の知識もあまり無い。

ならばと相棒の好きだった酒を買っていこうと酒屋に回り買った

昔の銘柄なので少し高かったが。

色々回り道はしたが相棒の元に着くと先客がいた。


「あ、クハルさん」

「おー、久しぶりじゃな」


相棒の孫息子が墓地に来ていた。


「お久しぶりです、クハルさん今日は一体?」

「久々に相棒の墓参りにな」


嘗て自分と共に野を駆け狩りまくって

名を上げて豪邸に住むのだと息巻いて居た相棒は

仕事で助けた商人にアプローチされて結婚し

子供を生み慎ましい生涯を過ごした。


「まさか今でもアイツが結婚するとは思いもしなかったのぉ」

「クハルさん何時もそれ言いますよね」

「本当に信じられなかったんじゃぞ」

「婆さんも死ぬ少し前に言っていましたよ『まさかクハルがギルドに入るなんて』って」

「そうじゃったなぁ・・・儂も驚くだろうなぁ」


くかか、と笑うクハル。

そして墓前に花を供え、墓石に酒をかける。


「まだまだそっちには行けんから気長に待っとってくれ」

「そうですよ、クハルさん、もっと長生きして下さいよ」

「そうじゃの、まだまだ人生これからじゃしな」

「羨ましいですね、こっちは最近商売が上手く行かなくて不安で仕方ないですよ」

「強敵を倒してこそ終わった後の酒盛りは旨いんじゃよ」

「何ですかそれ?」

「アイツと狩りに行った後の酒は旨かったって言う話じゃ

やれるだけぶち当たって見るのは如何じゃ?」

「・・・まぁ一生懸命やるしかないって事ですかね、ありがとうございました」

「気にするな」


クハルは寮に戻り、スーツを脱ぎ部屋着に着替える。

どんどん、とドアが叩かれる。


「なんじゃーい?」

「クハルのじっちゃん!!呑もうぜー!!」


ドンが酒盛りの誘いをする、やれやれと言いながら立ち上がるクハル。


「今行くぞー」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る