第19話【運命の三婆】

何だか曇り空でやや暗い日の出来事

その日はヴェンデスとハックがギルドで仕事を探している時の事だった


「キュー、今日は良い奴有るか?」

「結構色んなの来てるけども」


がちゃり・・・と静かにゆっくりとギルドのドアが開かれた

ドアの外からやって来たのは三人の老婆


「・・・来ましたか」

「あの婆さん達は・・・運命の三婆って連中か」

「何すかそれ・・・」

「クハルの爺さんより歳行っている三姉妹だ

年五、六回だけ仕事を取りにやって来る」

「・・・しごとあるかえ?」


老婆の一人がしわがれた声で尋ねる


「え、ええ、これからコルクボードに貼りますので・・・」

「・・・・・」


キューが来た仕事を次々とコルクボードに貼って行くのを見る老婆達


「・・・・・」

「・・・この御婆ちゃん達凄い人なんですか?」

「まぁ見てろ」


最後の一枚を貼り終えコルクボードから離れるキュー


「しゃあ!!糸紬のバイト貰いぃ!!」

「あー!!アト姉汚ぇ!!ずッる!!」

「黙ってろい、クロ!!」

「ジャンケン!!ジャンケンだろうがここはぁ!!」

「「「じゃーんけーん!!ぽん」」」

「しゃあああああ!!」

「「あ”ー!!」」


バイタリティ溢れる挙動に呆気に取られるハック


「・・・なんだあの人達」

「神州進撃会、運命の三婆クロ、ケシ、アト

昔は相当な腕前を持つ・・・何か色々やってた人達」

「色々?」

「色んな職を渡り歩いた古強者・・・それが運命の三婆・・・」

「・・・キュー・・・運命、と言うのが意味分かんないんだけど」

「あの人達が来る時は決まって仕事が大量に来るんだよ

運がとても良いお婆さん達・・・それが運命の三婆・・・」

「何だか地味な理由で付けられた二つ名だなぁ・・・」


運命の三婆が動きを止めハックの方を向いて


「トーストで」

「ジャムを塗った方が」

「下になった事が無い」

「「「運命の三婆!!」」」ドヤァ

「何だその決め台詞は・・・」


謎の決め台詞を発する運命の三婆


「未だに」

「両親健在」

「所かこの間妹が出来ました」

「「「運命の三婆!!」」」ドヤァ

「それはおめでとうございます」

「良い子だねぇ・・・この話聞いた時に儂の息子達は困っているんだよ」

「飴ちゃんあげよう」

「ありがとうございます・・・」

「じゃあ儂は糸紬に行くわ」

「じゃあ儂は測量のバイト」

「じゃあ儂は絵本の読み聞かせの仕事にしよう」

「・・・あ、はい分かりましたー・・・お気をつけてー・・・」


嵐の様に去って行く運命の三婆


「元気の良いお婆さんでしたね・・・」

「あぁ、普段は年金暮らしだから滅多に来ないんだがなぁ・・・」

「じゃあ何で仕事を?」

「孫達への誕生日プレゼントを買う金の捻出だそうだ」


大急ぎで帰って来てギルドに戻る運命の三婆


「かわいい孫の為ならば」

「老体に鞭打って働く」

「イカス婆達」

「「「運命の三婆!!」」」ドヤァ

「お、おう・・・」

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