第4話【ヴェンデスさん】

キューに寮へと案内されるハック

寮はシンプルな作り二階建てで横長の一階につき四部屋×2の八部屋有った


「結構ボロいけどその分家賃は安いよ」

「まぁ見習いだしここから頑張るよ」

「うん、それじゃあここだね」


キューに案内された部屋の標識には【104号室:ヴェンデス】と書かれていた


「ヴェンデスさん、さっき言ってた子連れて来たよー」

「おーう」


ガチャリ、と部屋の中に入ると其処には様々な魔導書や魔法道具が整頓され

ベッドの上に色々雑多に物が置かれ

一人用ソファーに座りながら書き物机に向かう男が居た

男はこちらを振り返ると額に『合格!!』と書かれている

ハチマキをした瓶底眼鏡の無精髭を生やした男が居た


「ヴェンデスさん、こちらさっき話した見習い冒険者のハック

ハック、この人が 治癒魔法使いのヴェンデスさん」

「よろしく」

「よろしくお願いします・・・浪人生の方?」

「まぁ似た様なもんだよ

今三級魔法使いなんだが二級を目指して早八浪中だ」

「はちっ・・・!?え?え~・・・」

「キュー、誤解を招くぞ、一級を目指して八浪中だ」


少し退くハック


「悪い人じゃないし、それじゃそう言う事で」

「え・・・」


キューは部屋から立ち去り、ヴェンデスも机に向かい直した


「・・・あー・・・あの・・・」

「如何した?寝る場所なら荷物退かしてベッド使って良いぞ」

「え、良いんですか?」

「このソファ、リクライニング付いているからヘーキヘーキ」


偏屈な人かと思いきや中々良さそうな人だなとハックは思った


「じゃあ遠慮無く・・・」

「おう」


ハックはベッドの上の荷物を整理し避けた


「・・・・・何だか色んな本が有りますね」

「まぁ勉強したからな」

「八浪と言う事は八年間も?」

「まぁそうなるな、仕事しながら夢を追う感じだ」

「八年間も?」

「八年間もだ、やたらそこに喰いつくな」

「いや・・・・・すみません」

「良いって事よ」

「ははは・・・」


会話が続かないとハックは内心焦った


「・・・八浪って魔法使いの昇級試験ってそんなに難しいんですか?」

「難しいね、でもやりがいは有るよ

前よりは上手く行っている実感は有るからな」

「はへー・・・」

「来年は合格は間違いないだろう、今年かなりいい線行ってたし」

「それは凄いですね」

「七浪していたお陰だな、うん」

「諦めなければ夢は叶うって奴ですね」

「そうだな、お前も見習いが早く取れればいいな」

「そうですね」


最初は取っつき難い人かと思ったが中々良い人だな、とハックは思った

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