第80話 ゴーレム、テレビに出演

 まずはコンビニに行く。

 確かはがきが置いてあったはずだ。

 はがきを棚から念動でもらう。

 レジの前に百円を置いた。


 はがきに俺が無事な事を書く。

 続いて指定した時間に公園にくるように書いた。

 俺しか知らない事も書く。

 日付はコンビニの新聞でチェックしたから問題ないはずだ。

 しかし、約束の日に誰も公園には現れなかった。

 これは完全に悪戯だと思われているな。

 どうしよう。




 スマホの充電器を手に入れても契約はきっと解除されているに違いない。

 封筒なら証拠の品を同封できる。

 しかし、封筒を出すには切手が必要。店頭には置いて無い。

 切手を貼らないで出すと悪戯だと思われる可能性がある。

 仕方ない長期戦だな




 地球の風景を見ていたら、猛烈にカレーが食べたくなった。

 俺はスーパーに行って絶対カレーのレトルトを手に入れるぞ。

 地球のお金はこれからも必要なので金の板を買いメダルを作った。

 金貨でも良いと思ったが、聞いた話だと魔導金属が金貨には使われているらしい。

 未知の金属で世間を騒がすのもあんまりなので金のメダルを使う。

 十グラムのメダルで二万円の買い物をすると決めた。




 スーパーでレジが開いたところに金貨と手紙を入れる。

 もちろん、フィオレラに念動を使ってもらった。

 米三キロとカレーのレトルトを貰う。




 土鍋で米を炊く。

 炊けるのを待つ時間が待ち遠しい。

 少し米が焦げ付いたが許容範囲だ。

 カレーライスが完成した。

 待てよ俺の体は改造されていて、地球の物を受付ないとか無いよな。




 だがこの匂いには逆らえん。

 構うものか食うぞ。

 恐る恐るスプーンを口まで運ぶ。

 一口食ったがなんとも無い。

 結局、完食してしまった。


 俺はどうやら大丈夫らしい。

 カレーライスに偶々、毒の要素が無いだけかも知れないが。

 今度何か食う時は毒消しのポーションを買ってからにしよう。




 ゴブリンにカレーを食わせてみるのを思いつく。

 実験の結果は死亡だ。

 塩むすびは問題無い事から、香辛料はやばいと分かる。

 ゴブリンは毒に強いはず。

 それが死ぬとは。




 食材は危ないな。

 パーティメンバーに警告しなければ。

 俺の部屋の食べ物は食べない様に注意を促す。

 理由を聞かれたので毒の研究と答えた。

 俺の部屋に専用の魔道具を使った冷蔵庫と食材入れを設置する。

 その二つには扉に鍵を付けた。

 用心はするほど良い。

 次元門はフィオレラと共有の秘密にした。




 なぜ秘密にしたかというと、ばれると日本の兵器を輸入しろとの声が上がるのを警戒してだ。

 法律があるから銃の購入は無理としても、食材なんかは毒として使える。

 俺を電子機器など現代の製品を生み出す道具に扱われるのも嫌だ。

 ばれると不味いのは国になる。

 特にスパイの二人には話せない。

 次元門の発動は自室でのみ行おう。




 スーパーに次元門を開くと大きな紙が張ってあり、そこにはようこそ妖怪さんと書かれていた。

 妖怪さんってなんだと疑問符が頭を駆け巡る。




 俺が別の世界の者ですと手紙に書いたのがいけなかったみたいだ。

 丁度良い、これからは妖怪さんで通そう。

 商品を来たついでに貰う。

 切手が欲しい旨を書いた手紙をレジに入れる。

 これで切手が手に入るぞ。




 次にスーパーに次元門を開くと切手と店長からの手紙が用意されていた。

 それによると商品が消えるところが防犯カメラに映っていたらしい。

 テレビ局が取材に来るので出演して欲しいみたいだ。

 都合の良い日時を知らせてくれと書いてある。




 どうするべきか。用意して貰いたい物は沢山ある。

 店長にはこれから頑張って貰いたい。

 よし、出演するとしよう。




 テレビの取材の日になった。

 三十センチのストーンゴーレムを作り、フィオレラに操ってもらう。

 門の前にはマジックミラーを置く。これはホームセンターで購入したフィルムをガラスに張った。

 次元門からストーンゴーレムが現れると一斉にフラッシュが焚かれる。

 ストーンゴーレムには手紙を持たせてある。

 そこには喋れない事を書いた。




 どこからか店長らしき人がホワイトボードを持ってくる。

 困ったぞフィオレラは日本語が書けない。


「フィオレラ、俺の書く文字の形をゴーレムで写してくれ」

「難しいですね。複雑です」


 しょうがない平仮名でいくとするか。


「今度はどうだ」

「大丈夫です」




 質疑応答は問題なく進んだ。

 俺達の住んでいる世界については、かなりぼやかした。

 最後に商品はこれからも買うが、実体は出さないと書いた。




 翌日、金のメダルでスマホのソーラー充電器とメモリーカードを店長に注文する。

 それらは無事届き、俺の現在の動画をメモリーカードに記録して手紙を出した。

 それと金のメダルも一枚入れておく。




 こんどは兄が公園に来てくれたみたいだ。

 やった信じてくれた。

 高鳴る胸を押さえ、周りを確認する。

 人は誰も居ない。

 門を兄貴の高さに移動させ、顔が分かる様にする。

 俺の第一声はただいまだった。

 兄貴の答えはお前は昔から運が良いだ。




 近況を報告しあい。

 金のインゴットを渡して、近所に部屋を借りるよう頼む。

 ついでにスマホの調達も頼んだ。

 兄は金のインゴットを見て顔を青くしたが、頼みのほうは問題ないみたい。




 新しいスマホは届いた。

 次元門を開けば通話も問題ない。

 久しぶりに実家に電話を掛ける。

 番号をタップする手が震えた。

 両親との通話を魔力が無くなって次元門が閉じるまで楽しんだ。




 借りて貰ったワンルームの部屋の鍵を開ける。

 テレビぐらいは置きたいな。

 部屋の方で何をするかと言うと商売の為だ。

 せっかく異世界と地球が繋がったのだから、商品を仕入れたいと思う。




 実家は糸屋と呼ばれている。

 糸やその他の縫製に係わる商材を工場に卸していた。

 実家で商品を仕入れて、異世界で売る。

 家族の利益にもなるし俺の為にもなるだろう。




 縫製業が外国に工場を移されて、実家の売り上げはどんどん減っていた。

 爺さんが子供の頃いた十人の従業員は今では一人もいない。

 家族で全て経営している。

 ただ内職やロットの少ない製品は今でも国内でやっているから、家族が暮らしていける収入はあると聞いた。




 商材の候補はファスナー、ゴム紐、刺繍糸、面ファスナーだ。

 面ファスナーというのは、マジッ○テープと呼ばれている物。

 ザラザラしたテープとフェルトのテープがくっ付く奴だ。

 作っている会社が違うと名称も変わる。




 なぜこれらを選んだかというと無くなっても困らないからだ。

 ファスナーはボタンでゴム紐はただの紐で代用が利く。

 消耗品だから更に良い。

 ファスナーと面ファスナーは真似できないのが良いと思う。

 変形スキルでファスナーを作るのは大変だ。

 面ファスナーは更に大変になる。




 電話を掛ける。


「もしもし、兄貴、大成だけど」

「おう、何」

「部屋にサンプル送ってくれないか。後でメールする」

「分かった。まめに電話掛けてやれよ。おふくろはまだ不安がっているぞ」

「うん、それじゃ」




 ファスナーは安いんだよな。

 形状と長さによっては十円を切る物もある。

 とりあえず三十円の物に決めた。

 面ファスナーは十メートル四百円のをチョイス。

 ゴム紐は幅が少し広い二十メートル五百円のを選んだ。

 価格は形状や長さによって変動するから、値段設定は面倒になる。

 価格表は後で注文に応じて更新するとしよう。

 刺繍糸は追々、伝手が出来てからでいいだろう。




 これで準備は整った。

 後はどうやって売り込むかだな。

 金のインゴットが大体十キロあったから、三千万になる。

 税金で半分持っていかれるとして千五百万。

 ファスナーだとかなりの数になるな。

 そこまで商いを大きくするつもりはないから、雑務ギルドに売り込むか。

 金が足りなくなったら、また金のインゴットを送ればいいな。

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