第66話 オリハルコン

 今日は休みなので懸案となっていたローレッタに人を紹介しようと思う。

 それはクレイグさんだ。

 クレイグさんは俺にゴーレムのイロハを教えてくれた人で、独身で高級取りの条件に当てはまるのがこの人しかいなかった。

 洒落たカフェ風の店でローレッタとクレイグさんを待つ。




 現れたクレイグさんはフリルの付いたシャツにカーキ色のズボンを穿いている。

 作業服でない姿は初めて見るな。

 相変わらず真っ黒に日焼けして労働者らしい。




 俺は立ち上がり手を振る。


「クレイグさんこっちです」


 クレイグさんはぎこちない動作で椅子に腰を掛ける。

 緊張しているのが丸分かりだ。


「おう女の子紹介してくれるんだって悪いな」

「ローレッタ、こちらがゴーレム使いのクレイグさん。クレイグさん、こちらが弟子のローレッタです」

「クレイグだ。よろしくな」

「ローレッタだ。よろしぐ願う」


 クレイグさんと対照的にローレッタは落ち着いた様子だ。

 不安な感じは微塵も無い。


「訛りが少しあるかもしれないですけど良い子なんで」

「そういうの気にしないから」

「じゃあ後は二人で。という事で帰ります」


 クレイグさんのもう行っちゃうのという心の声が聞こえた気がする。

 まあなんとかなるだろう。




 売り上げチェックの為に商業ギルドに寄る。

 なんと待たされていたオリハルコンがやっと届いた。

 喜び勇んで家に帰る。

 作るぞ究極の銃ゴーレム。




 何回も銃は作っているので今回は半日で出来上がる。

 弾を打ち出す力は五倍に設定した。

 弾丸は自動的にセットされるマシンガンだ。

 作業を終え一息入れていたところにローレッタが帰って来た。




「デートはどうだった」

人紹介してもらってなんつ言ったらいのだか」


 幸せそうな雰囲気をみるに上手くいったみたいだ。

 なんとなく肩の荷が下りた気分。

 よし明日は荒野で新しい銃の試し撃ちだな。




 翌朝、杭と的を持って荒野をえっちらおっちらと行く。

 適当な所で杭を地面に打ち込み銃と的を固定して魔力をのばして遠隔操作して銃を撃つ。

 うわ、反動で銃が跳ね上がった。

 爆発はしなかったが手に持って撃てるのかこれ。

 男は度胸だ。

 伏せ撃ちで撃ってみる。


 轟音と共に銃床が肩に食い込む。

 反動が酷すぎて狙いを付けれない。




 どうするか迷っているとビオンダさんが話し掛けてきた。


「貸してみろ」


 俺はしぶしぶビオンダさんに銃を渡す。

 なんと立ったままの姿勢で軽々と銃を撃つビオンダさん。

 鍛えている人は違うな。


「なかなか、じゃじゃ馬だな気に入った」


 後ろ髪をひかれるが俺には使いこなせないようだ。


「しょうがないですね。そのオリハルコンの銃はビオンダさんが使ってください」

「貴君の事を見直したぞ。もしかして貰えるのか」


 油断も隙もないな、三億六千万をくれと言う感性は日本人には無い物だ。


「貸すだけですって。いっときますがもの凄い高いんです」

「そうだなオリハルコンの武器を持っているのは教会でも聖騎士団長だけだから言ってみただけだ」

「くどいようですがあげませんから、そしたら魔獣を試し撃ちに行きましょう」




 オリハルコンの銃を持ってハイポート走するビオンダさん。

 今までは銃は馬ゴーレムに乗せてたのに随分気に入ったのだな。

 俺は動く歩道魔法に乗りながら魔獣を探す。

 しばらく走っていたビオンダさんは疲れたのか動く歩道魔法に飛び乗ってきた。

 洗浄スキルを自分で掛けている。

 どうやらフィオレラにスキルをコピーして貰ったらしい。




 ローレッタが魔獣を見つけたみたいだ。

 近づくと二足歩行の形がしっかり見える。

 更に近づく。

 オーガだな任せたと言うとビオンダさんはうなづいて銃を撃つ。

 まぐれかどうか分からないが百メートルぐらいの距離を一発で当てた。


 オーガは頭に銃弾を喰らいのけ反り崩れ落ちる。

 オーガが一発という事は荒野の魔獣は大体対処できるのではないだろうか。

 運送サービスを待つ間考える。




 ビオンダさんが切り札になりつつある。

 俺よりビオンダさんの攻撃範囲が広い。

 ここは二手に別れて間引き作業をすべきだな。

 その場合もしもの時のトーチカが必要だから。

 俺とローレッタが組んでビオンダさんはフィオレラと組むべきだろう。


 その場合問題はベノムスコーピオンにビオンダさんの攻撃が通用するかどうかだな。

 溶解で銃弾が溶かされた場合どうなるか。

 よし今日はベノムスコーピオンが出るまで狩りをするとしよう。




 次の魔獣はヘヴィライノだった。

 当然問題なく銃弾は頭蓋骨を打ち抜いた。




 次はメタルリザードだ。

 こいつは固いがこれも問題なく退けた。




 やっとお目当てのベノムスコーピオンだ。

 どうなるか興味津々で見物していたが、結果は問題なく倒せた。


 弾丸は溶かされた分、貫通力は減ったが与える衝撃は増えた。

 傷口がぐちゃぐちゃだ。

 さて帰って会議かな。




「帰って早々悪いがちょっと話がある」


 皆何んだと言う顔でこちらを見ている。


「パーティを二つに分けようと思う」

「シロクさんと当然一緒ですよね」


 当然フィオレラはそう言うと思ったが心を鬼にして。




「いや俺とローレッタが組もうかと考えている」


 うわフィオレラの目つきが浮気した恋人を見る目になった。


「私に監視任務があるのを忘れた訳ではないよな」


 そんな事もあったなどうしよう。


「わも反対だ」


 ローレッタにも反対されるとは。




 非難轟々だな。

 うーん効率を考えると二手に別れるのがいいのだが、どうした物かな。

 まずは説得が簡単そうなローレッタからかな。


「二手に別れれば収入が倍になるぞ」

「倍は惹がいる……分かった賛成す」




 次は。


「フィオレラ、提案を受け入れれば今度の休日にデートしよう」

「デート五回なら手を打ちます」

「分かった。ビオンダさんもし間引きの間に融通を利かしてくれたら余っているオリハルコンで短剣を作って差し上げます」

「うっ物で買収にかかるとはなんて卑怯な」

「オリハルコンの武器持ちは一流の戦士の証だとか」

「潜入捜査でも現地人を雇って任務に就かせるのは違法ではない。ローレッタ私の代わりに監視してくれるか」

「やるべ」

「よし決まったな」

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