第67話 ブレードバード・リベンジ

 間引き作業は順調だ。

 俺のチームは索敵をローレッタが担当。

 俺が攻撃と運搬の担当だ。

 魔獣は五匹ぐらい平均して倒せている。




 普通のパーティは依頼を受けて、その魔獣を探した。。

 そして他の魔獣に出会わないように回り込む。

 目当ての魔獣を倒したら、その日の狩りは終わりといった具合だ。


 俺のパーティの異常さが分かる。

 運送サービスの人間には、俺達の事を化け物を見るような感じの人もいた。

 でも仕方ないこれが俺の普通だ。




 稼ぎは一日あたり大金貨一枚半ぐらい。

 日本円換算で四百五十万。

 取り分は五分の一だが充分。




 変わった事といえばローレッタがCランクになった。

 城壁拡張工事に魔獣が来なくなったとローレッタから聞いた。

 ソースはクレイグさんらしい。




 そろそろ間引きも一段落かなと思っていたら強制依頼が来た。

 ワイバーンの領域でブレードバードの集団が大きくなりすぎて手が付けられないらしい。

 どうやらワイバーンはブレードバードを食わなかったみたいだ。

 リベンジするとしよう。

 今度は重力魔法があるから大丈夫だ。




 オークの領域をいつも通り縦断しようとしてかなりの幅の道ができているのに驚く。

 道は途中までだったが動く歩道魔法が使えてかなり短縮になった。

 二日掛かるところを一日で済んだ。

 野営をして、いよいよブレードバードに挑む。

 方位磁針を使い大体の方角を確かめブレードバードを探す。

 魔獣の少なさに驚いた。

 道中魔獣に会わない。

 しばらく歩くと魔力探知に魔獣が掛かったみたいだ。




「あの百を超えていますがどうします」

「フィオレラは封印スキルを盾にしながら歩いてくれ。俺は封印スキルを抜けてきたのに重力魔法を掛ける。二人で後ろから銃を撃ちまくってくれ」

「はい」

「了解した」

「わかっただ」



 前哨戦とばかりに五羽ほどが飛んでくる。

 群れの本体は木に止まって風の刃を打ち込んできた。

 風切り音が絶え間なく辺りに響く。

 風の刃は封印スキルの盾に当たり霧散する。




 抜けてきたブレードバードには重力魔法だ。

 二人は地面に落ちたブレードバードに銃を撃ちまくる。

 ついでに投擲型魔道具も追加だ。

 風の刃に切り刻まれてしまえ。




 重力魔法で地面に押さえつけられてもしぶとく風の刃を撃ってくるのがいた。

 魔法もそうだが手元から加速する為に距離が短いと簡単に避ける事ができる。

 分析がなくて風の刃が見えないビオンダさんも華麗にかわしていた。

 風魔法対策で音を聞いて避ける訓練とかで慣れているのだろうか。




 あたりは羽毛が散乱し地面に落ちた魔獣が生きているのか判別しづらくなった。

 重力魔法を一旦解除して風魔法で羽毛を飛ばす。

 追加でブレードバードがどんどん飛んでくる。

 フィオレラを引っかく音が聞こえる。

 強制依頼を受けてから大急ぎで兜を調達しプロテクターも追加でフィオレラに装備させた。

 封印スキルでは物理攻撃は防げない。

 もう少しだから耐えてくれ。




 重力魔法の範囲外から風の刃を打ち込んできた奴がいた。

 高い所を飛んでいたので、指示に従いローレッタがミサイルの魔道具を使う。

 ミサイルの魔道具は段々と加速して逃げに掛かったブレードバードに誘導し追いつき爆発する。

 三羽ほどミサイルで血祭りに上げたら、学習したのか範囲外の攻撃はなくなった。




 重力魔法に突っ込んでくるブレードバードもなくなったので銃で適当に狙い撃ちながらゆっくり進む。

 三十羽ほど始末したら大群が止まっている木に充分近づいた。

 封印スキルを解除するように指示を出しトルネードで一気に形をつける。

 風がビュウビュウ吹き、木がメキメキ音を立てて細切れになっていく。

 ブレードバードの群れの本体も巻き込まれ殆んどが死んだみたいだ。

 数羽が逃げていくのが見える。


「フィオレラ大丈夫か?」

「ええ兜や鎧に傷が付いただけです」


 兜を脱ぎしげしげと眺めながら返答するフィオレラ。




 皆で手分けして魔石を取る。

 トルネードで葬ったブレードバードが酷い有様だ。

 どうにもオーバーキルになる。

 小技を開発するべきだろうか。

 後でゆっくり考えよう。

 粗方魔石は取ったな。

 後はギルドにまかせ現場を後にする。




 帰り道、道を作る為に木を切っている現場に遭遇する。

 詳しく聞いてみるとトラック型馬車が便利なんでワイバーンの領域に道を作ると決まったと言っていた。

 一日掛からずにオークの領域を縦断できればワイバーンの領域の魔獣の素材が良い状態で手に入る。

 ギルドマスターもいろいろ考えている感心だ。

 木を切る魔道具売れないかな。

 木を切ると言えばチェーンソウだ。

 水魔法で再現できそう。

 一瞬、転移刀の事が頭に浮かんだがあんな物騒な物は魔道具にできない。

 帰ったらギルドに売り込むとするか。




 町には門限ギリギリで着いた。

 久しぶりに酒場で噂話でも集めてみるか。


 酒場は熱気に溢れていて景気の良さをうかがわせる。

 酒場の主人に金貨二枚を出しこれで酒場にいる連中に一杯奢ると言うと歓声が上がり流石Sランク候補と言う声が上がった。

 テーブルは何処もいっぱいだったが奢った効果なのか気を利かせて一つテーブルを空けてくれる。

 遅い夕飯をパーティメンバーと取りながら酒場の声を拾う。




 テーブルを渡り歩いて愛想を振りまいて只で飲んでいるハンターの女がいたので手招きして呼ぶ。

 フィオレラがテーブルの下で蹴りを入れてきた。

 情報収集するだけだから蹴りは勘弁してほしい。


「あたいに何か」

「好きなだけ飲ませてやるから噂話を聞かせてくれ」


 最初無愛想な感じだったが飲ませてやると言ったとたん女は急に愛想が良くなった。




 さっそく女は酒を注文し喉を湿らしてから喋り出す。


「いいよ今ハンターのトレンドはずばりスキルコピー屋さ」


 スキルコピー屋この町にも出来たのだな。


「それで」

「筋力強化のスキルが大人気、魔力に余裕がある人は火魔法がお勧め」




 女は一杯目を飲み干し二杯目を注文している。

 俺の金回りが良さそうだと思ったのかウィンクしてくる。

 フィオレラの目付きがきつくなりローレッタとビオンダさんの二人はやれやれという目で見ている。


「他の噂は無いか」

「青い魔石が出る遺跡がどっかにあるらしくてさ。みんな血眼になって探してる」


 まだ嘘に騙されているのだな本当の事が分かった時に恨まれなければ良いけど。


「目処は立っているのか」

「ギルドマスターがビーコンと方位磁針の出所を言わないので色んな推測が出てるさ」


「例えばどんな」

「ここら辺だと荒野迷宮が怪しいと睨んでいるけどみっかったと言う情報はないね」

「そうか見つかると良いな」




 女は三杯目を注文し椅子を寄せて俺にしなだれかかる。

 とりあえず足で椅子を押しのけ次の話題を喋るよう促し女にパチンとデコピンした。

 フィオレラがまた足を蹴ってきた。

 このぐらいのじゃれあいは許して欲しい。


「あと話題と言えば王都に繋がる街道の一つに変な魔獣が出てとうせんぼしているって話」

「どこが変なんだ」

「なんでも喋るんだってさ」


 魔獣に喋るだけの知能があったなんてドラゴンでも喋らないぞ。


「なるほど」


「魔獣と言えば各地で小規模なスタンピートがあったって商人のおっちゃんが言ってた」

「鎮圧されたのか」

「兵士が出てみんな片付けたって」




 女は四杯目を飲んでいる。そんなに飲んで大丈夫か。


「ハンターに係わりの無い噂話とかないのか」

「国境がどこもきな臭いってさ」

「戦争になるのか?」

「そこまではいってないさ。砦に兵が増強されたぐらいって聞いたよ」


 兵が増強されたって事は戦争が近いのかな。

 戦争には付き合えない。

 いざという時は逃げの一手だな。


「分かった。他には」

「貴族派が騒がしいって」

「ちなみにここの侯爵様はどの派閥?」

「なんにも知らないんだな。国王派だよ! 常識だよ!」

「参考になったこれで飲んでくれ」


 謝礼の銀貨一枚を渡し女をやっかい払いする。

 フィオレラの目が怖いからな。

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