第56話 ビオンダさん加入

 結果を悶々として待つ事七日。

 ビオンダさんが家に訪ねてきた。

 ビオンダさんからは尋問の時の様に険のある態度では無い。

 それとビオンダさんは私服だ。

 なぜだろう。

 非公式ということか。

 鎧を着てこない分ましだと思いたい。

 少し結果には期待が持てそうだ。




「ビオンダ様ですよね。結果が出たんですか?」

「本庁の報告はまだだ。今回の決定は教会支部長がした」


 支部長と言った時のビオンダさんはいけ好かなげな様子だ。


「それでどうなりました」

「監視として私が付く事になった」

「それはハンターの仕事にもビオンダ様が付いてくるという事ですか?」

「そうだ、パーティに入るのだから様づけでなくビオンダさんでいいぞ」


 これは困った事になった。


「ちょっとパーティメンバーだけで話たい事があるので良いですか?」

「いいぞ。ゆっくり話し合ってくれ」




 自室でフィオレラとローレッタに相談する事に。

 二人共ビオンダさん加入に対しては思う所はないのだろうか。

 見た感じ加入を渋るような表情ではない。

 とりあえずの問題を片付けよう。


「うーん秘密は沢山有るけど、どうしようか?」

「隠せないですよね」

「ハンターやるなら手口は隠せない。まず稀人である事は隠す。アビリティは無詠唱として話す。魔道具は俺達が作っている事だけ口止めする。魔力ゴーレムはスキル研究の副産物という事にする」

「そうですね仕方ないですね」

「これでパーティメンバーも増えだの」

「そうだ、ビオンダさんに説明に行こう」




「話はまとまりました」

「みんな顔は知っていると思うがビオンダだ。聖騎士に任命されている」

「それで、幾つか説明しないといけない事があります。まずは無詠唱の技術を開発しまして、アビリティと呼んでます。ローレッタやってみてくれ」


 ローレッタが取り出した矢に炎を灯す。


「すごい発見だ。貴君はスキル研究者としては超一流なのだな」


 ビオンダさんは成果を素直に賞賛している感じだ。

 こっちは禁忌に繋がる要素がないかヒヤヒヤしているのに。




「スキル研究で副産物が色々できました。それは、魔道具と言う物で。これです」


 照明の魔道具を実演してみせる。


「魔石にスキルを込めたのか。驚きだ」

「これは商品として商業ギルドに秘密裏に売ってます。それで魔道具の事は一切報告書にも書いて欲しくないのです」

「何故ときいてもいいか?」

「発明者に襲い掛かるゴタゴタが嫌なのです」

「そうだな、こんな大発明騒ぎになるのは当然だろう。了解した。勿論禁忌に触れた場合は別だが」


 ビオンダさんが話しの分かる人で良かった。

 教会から魔道具の利権を狙われるなんて事態にならなくて結構だ。




「スキル研究の副産物でこういう事ができる様になりました【水魔法】」


 魔力ゴーレムを使って水の塊を空中に出す。


「魔法スキルは持っていないのだよな。どういう仕組みだ」

「仕組みは話せません。悪用されても危険ですから、起こった現象については好きな様に報告して下さい」

「上官がどう言うか分からないが報告する」

「スキル関連はアビリティ含めて、仕組みや習得の方法は話せません。秘術なので研究成果は自分の物だと思っています。また弟子以外に伝えるつもりもありません」

「了解した。報告はするがな」


 秘匿技術はたぶん一般の職人にもあるのだろう。

 ビオンダさんは特にこの事にこだわりは無いようだ。




「ところで、ビオンダさんの装備ですけど、どうします」

「自分の持っているスキルは話せないが、武器は一通り使える。鎧は自前がある」


 一通り使えると言ったビオンダさんは得意げだ。

 女だてらに聖騎士だから凄いんだろうな。

 スキルは話せないのか。

 こそっとアビリティでスキル鑑定すれば分かるが、やらない方が無難だと思う。


「俺達のパーティは全員後衛でいく事にしてます」

「弓なら出来るぞ」

「それなら攻撃用魔道具を使ってみますか。試し撃ちにいきましょう」




 皆でゴブリンの領域に行く。

 颯爽と歩く白銀の鎧を着たビオンダさんは格好いい。

 鎧のカチャカチャ擦れる音がしない。

 なんで出来ているのか聞いたら、魔獣素材と金属の混合だと言われた。

 俺には似合いそうに無いから羨ましくは無い。




「まず魔石銃使って下さい」


 魔石銃を渡す。


「これはですね。ここに指を当て思念を送ると炎の矢が出ます」

「了解した。やってみる」


 何度か放たれた炎の矢は的を焦がし砕いた。


「便利だ。聖騎士隊の装備として欲しい」

「これは売れません。人殺しに使える道具は売らない事にしています」

「そうか、残念だが仕方ない」




「次はこれです。銃です」


 魔鉄の中折式銃を渡す。


「これはローレッタが説明した方が良いだろう」


 何度かローレッタが自分の銃で見本を見せる。


「撃つぞ。おお、これもいい。欲しいが売らないのだったな」


 的を大きく外さないのはさすがだ。装備はこんなところでいいか。




「秘術を一つ見せます【拒絶】」


 魔力ゴーレムにナイフを持たせ、縦横無尽に宙を切らせる。


「拒絶スキルにこんな使い方があるのか」

「ある一部分に拒絶を掛けてます」

「そうか拒絶を伸ばして操っているのだな。魔力量はどうなっている」

「そこが秘術です」


 今度から説明できない疑問が出てきたら、秘術でごまかそう。


「素晴らしい。教えて貰えないのは悔しいが秘術ではな」

「それとフィオレラは三十弱の数のスキルが使えます。スキルを覚えやすい特殊な体質です」


 側にいるフィオレラ得意満面な笑顔になっている。


「それで弟子にしたのかローレッタにも何かあるのか?」

「ローレッタはアビリティを同時に四つ使えます」


 ローレッタも満更ではない顔になる。


「そんな事ができるのか。みんな多才だ」

「禁忌に触れそうな事柄はない。ところでこのパーティに目標みたいな物はあるのか?」


 とりあえず禁忌になりそうな事柄はないのか一安心だ。


「Sランクを最終的な目標としています」

「Sランクとは大きくでたな。しかし秘術があれば可能な気もするぞ」

「今ワイバーンの領域で野営の経験を積んでます」

「私は野営の訓練も受けている。力になれるだろう」




「報酬はどうしましょう。五分の一をパーティの資金に残りを山分けで考えているのですが」

「教会から給料は出ている。無報酬でも問題ないが貰っておく。潜入捜査の時報酬は貰っても良い事になっている。使って余った分は教会に寄付でもしとくさ」

「ではそういう事で住む場所はどうします」

「私は監視だ。当然貴君の家に住む」

「部屋は空いてるのでご自由に。家具は自分で買ってください」

「そうしよう。今日はベットが無いから宿にとまるが、明日からよろしく頼む」

「こちらこそよろしく」

「「よろしくおねがいします」」


 さてパーティメンバーが増えたがどうなる事やら。

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