第55話 尋問

「ローレッタ、大変な事になった。禁忌を犯してしまった。無限魔力はもう試すなよ」

「えっ、それでこれからどなる」

「分からない教会の上の方には伝わるから事情を調べに誰か来ると思う」

「口封じとかさいねよね」

「まったく分からないんだ。とりあえず教会から人が来るまで遠征は中止だ。町からも出るなよ」

「そった事になるなんて」

「俺が悪い。アビリティは危険だと思っていたのに安易に試してしまった。落ち込んでいても仕方ない出来る事をやろう」




 うん何時かこんな事になる予感はあった。

 逃げるとか選択肢にあるけど、教会はしつこいだろうな。

 とりあえず教会の出方を見よう。

 いきなり処刑されたりしないだろうな。

 もしもの時は魔力ゴーレムに頼ろう。

 何をするのにもお金は必要だ。

 口座の金は出来る限り下ろそう。


 それと教会がどんな通信手段があるか分からないが、調べに来るまで相当時間が有るはずだ。

 金は魔道具で稼ぐ。

 それで、材料を買って魔弾を準備しよう。

 スティンガーミサイルとロケットランチャーの魔道具必要になるかな。

 町から出れないと試験できない。

 今回は見送るか。

 投擲型も予備を作るか。

 銃の予備は魔鉄製だな。

 ミスリルの連発銃は手持ちの金では作れない。

 逃走の時用に金を隠しす場所が必要だ。

 黒髪亭の裏庭にお金を埋めておくか。




 よし行動だ。

 もしもの時の集合場所として、黒髪亭の裏庭をフィオレラとローレッタに教える。

 商業ギルドでお金を下ろし黒髪亭の裏庭に埋めた。

 装備の幾つかと魔弾なんかも一緒に埋める。

 よし後は魔道具を量産して金を稼ぐだけだ。

 結局、魔道具を作り魔弾や装備を整えるのが終わっても教会からは音沙汰がない。




 禁忌が分かってから、三十四日後に教会から知らせが来た。

 若い男性神官の後を三人でついて行く。

 もちろん魔力ゴーレムは連れて行った。

 いよいよか。最悪の結果だけは勘弁してくれ。

 部屋に通され、俺達は無言のまま待つ。




 しばらくして、三十代と思われる女性が二人入って来た。


「みた顔がいるな。確かお前はシロクだったか。スキルの研究をしているといってたな。そうかそれで禁忌のスキルをえたのか」


 二人の内一人が話しかけてくる。思い出した真偽官の人か。もう一人は誰だろう。


「その節はお世話になりました」

「カミラ、余計な事喋ってないで始めるぞ」


 もう一人の人は筋肉質だ鍛えているのが神官服の上からでも分かる。




「ビオンダ、この罪人は逃げないから慌てるな」

「何を証拠に生ぬるいぞ」


 うぁ喧嘩腰だ。俺達の状況は悪いのかな。


「丸腰でこの場に来たのが証拠だ。ハンターなら武器は常に持ち歩く。まあ、でもビオンダ始めてくれ」




「尋問を開始する。名前をまず名乗れ」


 いよいよ尋問の開始かドキドキする。

 隣に座っている二人も表情が硬い。


「ゴーレム使いのシロクです」

「ゴーレム使いで弟子のフィオレラです」

「射手のローレッタだ」


「なんで呼ばれたか理由は分かっているか?」

「禁忌を犯してしまったからです」

「その通り。しかし、今回は話が少し複雑だ」


 複雑どういう事だ。事実関係を明らかにして処罰して終わりではないのか。


「どういう事です?」

「禁忌を犯すと神罰が下る。魔力とスキルが剥奪されて神託がある」

「魔力とスキル有りますけど」

「そうだ神託も無い。教会でも意見が割れた。処刑してしまえと言う者と神は生かせと仰っているのではないか言う者に分かれてな」

 ビオンダさんはかなり忌々しげな口調だ。

 そうか教会が一枚岩では無いのか。俺には朗報だ。


「それでどうなりました」

「とりあえず尋問してみようという事になった。では続きをする。カミラ頼む」

「【真偽判定】【スキルと魔力は有るか】」

「有ります」

「真実だな。【真偽判定】【どんな感情で無限魔力を発動した】」


 言いたくない質問が来た。

 これ言ったら、恥ずかしくて師匠の威厳も有ったものではないぞ。

 俺が躊躇しているとカミラさんの目つきがきつくなった。

 皆の視線が俺に集まる。

 うぁー、逃げ出したい。

 キョロキョロ視線を彷徨わせるが誰も助け舟は出してくれないみたいだ。


「非常に言いたくないですが、しょうがないです。エロです。みだらな妄想をしました」


 この場にいる者の視線が痛く感じる。

 これからフィオレラとローレッタに顔を合わせるのが辛い。


「真実だな。信じられない男だ。狂うほどの強い思いのみだらな妄想をするとは」


 そんなに強く妄想したとは思ってもみなかったな。

 違うな魔力はイメージが大事だ。

 たぶん魔力を生物だと思って感情を食わせるとイメージしたのが原因だろう。


「カミラこんな事を報告書に書けるか!」


 ビオンダさんはかなりお怒りの様子。

 俺もこんな事を報告しなければいけないビオンダさんには同情する。


「馬鹿馬鹿しくっても書くしかないだろう。もう一人からも聞かなくてはフィオレラだったな。【真偽判定】【どんな感情で無限魔力を発動した】」

「楽しい事を考えました」

「真実だな。狂うほど楽しい事を考える。想像できないな」

「フィオレラは迫害されてました。その境遇を慰める為に楽しい事を強く思う様になったのではと思います」


 フォローを入れる。

 魔力が生物だという情報は不味そうだ。


「どう思うビオンダ」

「そうだな。神が与えたスキルに禁忌があるというのが長年議論になってきた。これが本来の使い方なのだな」

「参考までに教えて下さい。今までの無限魔力はどんな感情で発動したのですか?」

「拷問したりして負の感情で発動させるのだ。そうすると狂って暴走し大抵は大破壊が起こる」


 それは人間としてやってはいけない事だ。禁忌に該当するのも分かる。


「それはとんでもない被害が出そうですね」

「都市の一つが周りの農村ごと吹き飛ぶ」

「あのついでに聞いておきたいのですが、分析と呼んでいる能力があります。これは、どうなのでしょう」

「それはな、古代スキルと呼ばれている物だ。稀に子供に発現するが大人になるまでに消える」

「不安定な物という事ですか?」

「魔力を感じられないと少しでも思うと使えなくなる」

「疑う心が少しでもあると使えないという事ですか」


 フィオレラは子供だから発現したとしてローレッタはもの凄く信じやすいのか。男に騙されなければ良いが。


「そうだ。その年で使えるという事は純真なんだな。その割に妄想は酷いが、他に聞きたいことがあるか?」

「今のところ有りません」

「無限魔力に関する事は誰にも漏らすな。情報が誰かに伝わったら、処罰する事になる」

「分かりました」

「誰にも言いません」

 フィオレラが言う。


「先祖ど家族に誓って」

 とローレッタ。


「尋問はこれで終わりだ。結果はそのうち分かるだろう逃げるなよ」


 終わった。とりあえず良しとしよう。

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