第57話 繁殖期

 ビオンダさんの部屋も生活できるように整えられ、ハンターに復帰する事になった。

 ローレッタに銃と弓どっちにすると聞いたら、銃でいくと力強く言い切った。

 銃を使う人間が増えたので遠征の為に鉛の弾を沢山作ってもらう。




「いつも日程で行く。出発するぞ」


 オークの領域ではビオンダさんに魔石銃や中折銃を試してもらう。

 満足行く結果だった。

 さすが弓を使えるだけあって射撃も上手い。今のところ問題はない。

 オークの領域を無難に縦断して、ワイバーンの領域に入る。

 野営をし、狩りに行く。




 獲物を探す。

 ファルシオンムースが呑気に草を食んでいる。


「ビオンダさん、魔獣はまだ気づいてません。魔弾を渡しますから撃ってください」


 爆発の魔弾を渡す。


「普通の弾と同じ撃ち方でいいのだな」


「ええ、そうです」


「撃つ」


 赤い光線が腿に突き刺さり肉が爆発で吹き飛んだ。


「止めを刺して下さい」


「了解した」


 ビオンダさんは魔獣の正面に回りこみ頭に銃弾を打ち込む。




 その時ローレッタが警戒の声を上げた。


「ワイバーンが来る」

「いそいで隠れよう」


 木の密集した所に大慌てで逃げ込む。


 ワイバーンを見ると倒したファルシオンムースに齧り付くところだった。


「ちきしょう。せっかく仕留めたのに。みんな二百メートル先に小高くなった所があるだろ。あそこまで行くぞ」

「何をする気だ」

「一矢報いたいと思いまして」

「正気か?」

「Sランクになる為には避けて通れません」




 加速砲が撃てる位置にたどり着き準備をする。

 ワイバーンはムシャムシャ食事中だ。

 クソ馬鹿にしやがって、見てろよ今いい物を食わせてやる。


「【念動】誘導弾を食らいやがれ」


 加速された砲弾は食事中のワイバーンに命中した。

 胴体に大穴を開け。ワイバーンは息絶える。


「やったぞ。今回は運が良かった。空を飛んでいたら、この様にはいかないな」

「貴君はすごいな油断しているとは言えワイバーンを倒すとは」

「みんなで剥ぎ取るぞ」




 鱗を総出で剥ぎ取り魔石や爪や牙を取った。


「皮を取るついでに肉も少し取っていこう」

「ワイバーンがまた来る。あちらにも別のが一匹いる」

「えっこの狩場に一匹しかいないんじゃないのか?」

「貴君は知らないのかワイバーンは群れで暮らす魔獣だぞ」

「そんな事より逃げないと」




 俺達は全速力でオークの領域に逃げ込んだ。


「収入はワイバーンの素材で充分だから、今回は帰ろう」

「そうですね。ただこの調子だとワイバーンの領域は危険なのでは」


 フィオレラが嫌な予感があるような感じだ。


「繁殖期に入ったやもしれぬな」


 ビオンダさんは理由が分かっているらしい。


「活性化しているという事ですか?」

「どうやらそのようだ」

「ギルドで情報を集めよう。帰るぞ」


 いそいで帰路につく。




 町に帰った早々ギルドに駆け込んだ。

 ギルドはざわめいた雰囲気で所々でワイバーンがと言う声が聞こえる。

 身近にいたハンターに話しかける。

 どうやら推測は当たったようだ。

 ワイバーンは繁殖期に入ると沢山、餌を食べる為頻繁に狩りを行うらしい。

 思ったより危険だな。

 当分ワイバーンの領域には近づかない事にしよう。




 ワイバーンの素材の換金の為に計算を待っていると、受け付けに呼ばれた。

 計算が終わったのかと思ったら、ギルドマスターが呼んでいるらしい。




「シロクです。どんな御用です?」


 ギルドマスターは面白い物を見つけたと言う口調で話しかけてくる。


「また、やらかした。みたいだな」


 また何か疑われたのか。ここは惚ける一手だ。


「なんのことやら」

「ワイバーンを倒したとか。どんな手を使った」


 手口をある程度洩らしても構わないが、ここは強引に質問を断ち切ろう。


「ハンターが簡単に手の内を喋るとでも」


 ギルドマスターは特別憤慨した様子でもない。何がしたいのだろう。




「ワイバーンが繁殖期に入ったのは聞いたか?」

「はい聞きました」

「間引きとかしてくれ」


 これが本題か。空を飛んでいるワイバーンは無理だな断ろう。


「絶対無理ですね」

「そうか理由は」

「今回倒せたのは隙を突いただけです。運がよかった」

「まあいい、そこは駄目元で聞いた。本題はBランクの試験を受けさせたい」


 おや間引きが本題だと思ったら、今度は試験の話か。なかなか本心を掴ませない。


「何故です」

「ワイバーンを倒す手口を知りたくなった。まあランクが釣り合ってないって事もある」

「分かりました受けます」




 ギルド一階でみんなと合流し報告する。


「Bランクの試験を受ける事になった」

「どこまで公開するのです?」

「基本的に魔法のみでいこうと思う。魔道具と銃は持っていくが使わない」

「よし細かい打ち合わせは帰ってからにしよう。素材のお金貰って帰るぞ」


 窓口でワイバーンの素材のお金を貰う、。なんと金貨百枚を越えていた。

 更に嬉しい事にローレッタがDランクになった。ワイバーンのポイントは高い。

 試験の手続きをして帰る。




 今日は宴会かな。


「えービオンダさんの加入とローレッタのDランクを祝して乾杯」

「「「乾杯」」」

「あのビオンダさんに聞きたい事があります」


 フィオレラがおずおずと話しかけた。


「なんだ機密事項は喋れんぞ」

「お年を聞きたいのです」

「隠す事でもない。二十七才だ」


 見た目より若い。


「恋人はいるのですか?」

「いない。同年代の男には疎まれている」

「師匠をどう思いますか?」

「監視対象だ。年齢にしては研究の成果はすごい。尊敬はできないが」


 ビオンダさんの俺への評価が微妙だ。


「どうしてです」

「みだらな妄想で禁忌を犯す様な奴だぞ。どこか頭がおかしいとしか考えられん」


 それは言わないでお願いだから、もうその話は忘れても良いじゃないか。


「それは男なら仕方ないと思います。男はみんな野獣だと孤児院の女子は話してました」

「野営中に襲って来たら、返り討ちにしてこの監視任務を終わらせたいと思ったが残念だ」

「師匠は変態でもへたれですから」

「変態でもやさしだ」


 フィオレラ、ローレッタ、全然フォローになってないぞ。

 どうやら変態認定されてしまったらしい。しょうがない自分で撒いた種だ。

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