第21話 反省会

「昨日は疲れていたから今朝さっそく昨日の反省会をするぞ」


 かなり真剣な様子の二人。


「確かに昨日は少し危なかったと思います」

「オークには矢があんまり役に立たねがった」


「拙かったのは相手に先制攻撃をやらしてしまった事だ。できればこれからは先手はこっちが取りたい」

「いきなり驚かせるのどうですか」

「目潰し攻撃はどんだびょん」


「うん、二人ともいいアイデアだ。思いついた物が一つある。期待しないで待っててくれ」


 驚かせと目潰し同時にやるならフラッシュバンだ。

 魔術で再現できないか試してみたい。


「それと、俺とフィオレラは武器の扱いを習った方がよさそうだ。後でフィオレラは盾の扱いを俺は槍を習うとしよう」


 エッジラビットにはヒャっとさせられた。

 槍術の基本的な型でも覚えたら、マシになると信じたい。


「ローレッタは攻撃力アップだな。何か考えておく」


 スキルをローレッタに覚えてもらいたい。

 そうすれば戦いに幅がでると思う。


「反省会は終わりだ。今日はポーションや装備を補充しようと思うその後は休みにする」




 ハンターギルドでゴーレムを外に置いてポーションを買う。

 戻ると駆け出しと思われるハンターがゴーレムに文句を言っている。


「なんでこんな所に置いてあるんだ邪魔でしょうがねぇ」

「あのうちのゴーレムが何か?」


 俺を見た途端態度が変わる。


「いや少し邪魔だったんで。すいません」


 なんで、ああ鎧のせいか。

 中級者に見られたのか。

 ハンターは縦社会なんだな。


「いいんだよ。分かってくれれば」


 今度からゴーレムは裏のバックヤードに置くとするか。




 南の草原をゴーレムと行く。

 草原はいつも通り平和な雰囲気だ。

 一時間ぐらい歩き人の居ない場所を探す。




 ちょうど良い場所があったので実験を開始する。

 熱くない火や爆発する炎の槍ができるのなら、大きい音と光を出す炎の玉を魔術で再現できるはずだ。

 泥魔術師ゴーレムを使ってフラッシュバンをやってみる。

 とりあえず炎の矢ぐらいの魔力を込めると炎の玉が飛んで行き光と共に爆発した。

 成功だ、少し目がチカチカする。

 直接見たら、だめだ。


 フラッシュバンの後の追撃として一つのアイデアがある。

 カプセルに入れた毒を投げつけるのだ。

 カプセルはハンターギルドで売っていた。

 実際やってみた。

 魔術を発動し急いでカプセルを投げる。

 カプセルには小麦粉を入れてあった。

 軽いせいか上手く投げれない。

 風魔術を使ってカプセル打ち出す。

 良い感じだ。


 念動のアビリティを使ってみる。

 こっちの方がさらによさそうだ。

 飛んでいくスピードが早い。

 しかし、ゴーレムの操作が切れる。

 アビリティとスキルの同時使用は無理みたいだ。

 今回の使用ではスキルを繋ぎ直せばいいから問題ない。


 カプセルの中身を考える。

 毒は取り扱いが難しそう。

 だから、痺れ薬と唐辛子みたいな目に入ると痛い調味料を入れるとしよう。




 家に帰ってからフィオレラに聞く。


「目に入ると痛い調味料なんてある? できれば粉がいいんだけど」

「ファナルの粉が辛くて目に入ると痛いです」


「値段はどうだ」

「大体お塩と同じぐらいです」

「ありがとう、参考になった」


 痺れ薬にファナルを混ぜた物をカプセルに入れる。

 肉が取れる魔獣だと痺れ薬はまずいからファナルの粉のみの物も用意する。

 完成だ、次の狩りから使って行こう。




 日は替わり。


「今日は狩りにでるぞ準備しろ」

「「はい」」


 オークの領域をいつも通り進んで行く。

 フィオレラが魔獣を発見する。

 単体だ強敵なのかな。

 見えた魔獣はソードタイガーだった。

 虎型のソードタイガーは尻尾を入れて三メートル程の魔獣。

 動きが素早いのが特徴だ。


 みんなに目をつぶるよう指示する。

 出会い頭にフラッシュバンを叩き込む。

 おお、効いているみたいだ。

 足が止まる。

 念の為二発ほど追加しておく。


 二人に目を開けるよう指示し、薄いトーチカと鉄条網を出させる。

 盛んに頭を振っているソードタイガーに麻痺のカプセルを発射した。

 カプセルはソードタイガーの頭に当たり薬を辺りに撒き散らす。

 上手くいった。

 麻痺したみたいだ。

 動きが鈍い。


 俺は炎の槍をローレッタは矢を放つ。

 両方とも胴体に当たる。

 炎の槍は爆発したがソードタイガーはまだ動いていた。

 魔石から魔力を補給し炎の槍を撃つ。

 炎の槍は今度は足に当たる。


 フィオレラに魔石を取り出させ手に持たせてもらう。

 炎の槍を撃つ。

 今度は頭に当たった。

 ゆっくりと倒れこんだ。

 中々タフだ。

 ローレッタに死亡確認をしてもらう。

 死んでいるという答えを聞く。

 毛皮は駄目みたいだ。

 ローレッタが魔石を取る。

 肉は不味くて食えないので屍骸は放置した。


「上手くいった。今後もこの戦法でいく」

「師匠、目をつぶった時凄い音と目蓋まぶた越しに光を感じました。あれ何です?」


「フラッシュバンを魔術で再現した。強い光を見ると一時的に目が見えなくなる。大きい音は耳が聞こえ難くなるんだ」

「へぇーすごいです」

「動がね的なら矢ば当て放題だ」


「休んだら荷物もないし、もう一狩りいくか」




 フラッシュバンの魔術は使える。

 当てなくとも近くで爆発させれば良いというのも利点だ。

 カプセルの追撃は決まれば儲け物ぐらいに考えた方が良さそうに思える。




 次の獲物を探す。


「あれ、群生してるこれって薬草じゃないかな」

「私には雑草に見えます」

「村に居だ時、この草は食べねがったばって」


「みんな採取しよう」

「はい」

「んだが」


 しぶしぶ採取する二人。

 薬草辞典では薬草って書いてあったから。

 とりあえず買い物袋ぐらいの袋に一袋採ってみた。

 幾らかでもお金になれば良いけど。




 魔獣を探す。

 今度も一匹みたいだ。

 そこには大型の昆虫魔獣スチールビートルがいた。

 スチールビートルは甲虫の姿の二メートル程の身体で非常に硬く背羽は加工して防具に使われる。


 さっき同じ要領でフラッシュバンの魔術を三発叩き込む。

 追撃で麻痺のカプセルを発射する。

 動きは止まらない。

 効いてないのか。

 こういう魔獣もいるから侮れない。

 薄いトーチカと鉄条網を出すように指示する。


 この魔獣の弱点は資料で読んで知っている。

 ストーンゴーレムでスチールビートルをひっくり返す。

 身動きのとれない様にして柔らかい腹にパンチを打ち下ろす。

 ストーンゴーレムは動きの遅い魔獣には本当に無敵だ。

 激しくジタバタもがく。

 しばらく殴るとしだいに足が動かなくなった。

 死んだみたいだ。


 昆虫は足に耳がある。

 地面からの振動で接近を知るとどこかで読んだ気がした。

 昆虫の場合足を狙った方が良いのかな。

 とりあえず麻痺も効かなかったみたいだ。

 昆虫型にはこの戦法は効かないと思った方が良さそう。

 今日は狩りは終わりにする。




 ストーンゴーレムにスチールビートルをロープで固定して引き揚げる事にする。

 ソードタイガーの魔石は大銀貨八枚。

 スチールビートルは魔石含めて金貨一枚になった。

 五十四万円だ。

 この調子で稼ぎたい。




 駄目元で採った薬草。

 だが、薬師ギルドに持ち込んだところ全て駄目だった。

 辞典が下手くそな手書きの絵だったから嫌な予感がしたが、案の定雑草を毟ってきただけだ。

 もう、薬草採取はやらんぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る