第14話 商業ギルド
商業ギルドは硬貨と天秤のマークの看板がありハンターギルドより大きい建物だ。
きっと儲かっているのだろう。
ギルドは何処も同じ様な作りになっている。
だが、客層が違う為受ける印象はそれぞれ違う。
商業ギルドは商人や工房の親方を相手にしているだけあって空気に気品みたいな物が感じられる。
今まで行った所に例えるなら。建築ギルドが作業員が沢山いる土建屋。商業ギルドは銀行かな。ハンターギルドは思いつかないな想像でいいなら傭兵部隊の本部だな。
番号札を取って呼ばれたら、窓口に行く方式になっている。
こんなところも銀行だ。
自分の番号を呼ばれた。
「発明品を持ってきたのです。どうしたらいいですか?」
「係りの者が参りますので三番応接室でお待ちください」
三番応接室と扉に書かれた部屋に入り応接セットのソファーに腰を掛ける。
しばらく経つと小太りで髪をオールバックにした知的な男性が入ってきた。
「この件を担当するクリフォードです」
「ゴーレム使いのシロクです。よろしくおねがいします」
「では早速、発明品を見せてもらえますか?」
背負い鞄からそろばんゴーレムを取り出す。クリフォードさんは興味深げにそれを見ている。
「そろばんと名づけまして計算する道具です」
「使い方を説明して下さい」
玉を弾いて数を適当に置く。
上がった玉の数で数字を表すのを説明した。
五の玉は逆だと説明し、まずは一桁の足し算をする。
引き算もやって見せ、説明はこれぐらいで良いだろうと思った。
「何か見せてもよい計算しなければいけない書類とか有りますか」
「わかりました。今持ってきます」
「これなんですが、どうでしょう」
「はい結構です。これから実際に計算します」
そろばんゴーレムを弾いて計算をする。
「できました。合計は三千六百八十四です」
「驚きましたずいぶん早いのですね。私にもやらせて下さい」
ぎこちない様子でクリフォードさんがそろばんゴーレムを弾く。
「これは良い。慣れない私でも紙で計算するよりだいぶ早い。久々に大商いの予感がします」
クリフォードさんはかなり乗り気だ。こんなに上手く行って良いのだろうか。
「これゴーレムになってますけど、邪魔なら魔力が抜けてから頭と手足は削って下さい」
ゴーレムは魔力が抜けるとただの置物になる。その後なら加工はし易い。
「契約といきたいところです。しかし、後々のトラブルにならない様に商業ギルドの専売について説明します」
ちゃんと説明してから契約か。大手は違うな。騙すような商人は二流ということか。
「まず利点です。商業ギルドは国をまたいだ組織なので広い販売網があります。それと偽物対策にも力を入れております。ぶっちゃけますと、大体の工房は商業ギルドから材料を仕入れています。コピー商品を作って商業ギルドに喧嘩を売るようなまねは出来ません。販売するにも商人も商業ギルドに大体所属しているから無理筋です」
著作権は無いと思っていたがやっぱりだ。
どうせ真似されるのなら大きい所で素早く沢山売るのが正解だろう。
「欠点ですが権利料が普通の商会なら相場は売り上げの三割です。商業ギルドなら一割になります」
さすが商売を束ねているだけあって権利料は安いな。ギルドを運営するにもお金が必要なのだろう。
「分かりました。幾つか希望があるのです。まず発明者の名前を公表しないで下さい。それと売り出し始めはこの国と帝国以外の首都で行って下さい」
この要望は譲れない。命が掛かっているからな。
「用心深いですな。その希望は可能です。昔発明者に危害加えるような事件があり。今は公表しない人が多いのです。売り出しは隣国のバクフ王国で行いたいです」
希望が通って良かった。ほっと一安心する。
「そのように、お願いします」
「ところでこれは一日にどれぐらい作れるのですか?」
「朝に試したら、魔力百五十二で三つ作れました」
「魔力が百として一日四回作るとして八個ですな。ということは一回の工賃が銀貨1枚として充分。材料費は銀貨二枚で売値は銀貨五枚になりますか。そうすると権利料は一個大銅貨五枚となります」
「後ですね。お恥ずかしい話なのですが。現在お金に困ってまして権利を担保にお金を貸して頂けないでしょうか」
「貸付の担当は別です。それで、大体ですが大金貨五枚程ならお貸しできると思います」
「契約をお願いします」
「権利料は口座に入れますか?」
「はい口座を作って下さい」
契約を交わし口座を作り借金の手続きをする。そして、貸付の担当から大金貨五枚を受け取った。
サンプルとして四個のそろばんゴーレムを渡す。
「シロクさん良い商談ができました。また何か発明品があったら、持って来て下さいお待ちしています」
「はい。何かあったら、相談に伺います」
クリフォードさんは非常に嬉しくて堪らない様子に見える。
それを見て失敗しているような不安に襲われるが大丈夫だと思いたい。
お金は手に入った。
トレントゴーレムを作る程ではないが色々なことができそうだ。
実は作ってみたいゴーレムがある。
材料はハンターギルドで手に入るから良いとしてゴーレムの置き場所の問題もあるから家を借りたい。
今日はハンターギルドで大きな買い物だ自然と気合が入る。
「すいません! ミスリル液一瓶と大型のストーンゴーレムを作りたいので石材が欲しいです。西門の外にある大型ゴーレム倉庫の手配と石材をその倉庫まで運んでもらえますか」
「少しお待ち下さい」
受付嬢は奥で棚の帳簿を慣れた様子でテキパキと調べる。
「ミスリル液が金貨三枚。倉庫が一ヶ月金貨三枚。石材が大金貨二枚となります。ミスリル液は在庫がございますが石材は三日掛かります」
「あと魔力が百五十ぐらい充填できる魔石二つ下さい」
「それですとこの魔石がちょうどそれくらいです。二つで金貨1枚と大銀貨六枚です」
倉庫代抜いて七百三十八万円の買い物になる。新米サラリーマンには縁の無い数字だ
「これ代金です」
四センチぐらいの魔石と瓶を受け取る。
「それと部屋が五つぐらいある借家の相場は幾らぐらいです?」
「そうですね。それですと一ヶ月金貨一枚半ですね」
家賃が月45万円。うわ高いな。都内の高いマンション並みの様な気がする。
城壁に守られている訳だ。維持費も相当掛かるだろう。妥当だと思う事に。
「分かりました相談してまた来ます」
建築ギルドに行って園芸用の土を買う。荷車は持ってこなかったので宿の裏庭に配達してもらう。
宿に帰るとフィオレラとローレッタが帰ってきていたので打ち合わせをする。
「金策が出来たぞ。さてこれからの事だ。新しいゴーレムを作るその材料が届くのが三日後になる。その間に家を借り引越しして森で色々な実験をする。そんな予定で行動したい」
「
「新しいゴーレムは何です?」
フィオレラが興味深げに聞いてくる。
「新しいゴーレムは一つはストーンゴーレムでもう一つは明日のお楽しみだ。ところで借家の件はそれでいいか」
「はい、いいです」
「
「三日間の二人の収入は一日当たり大銀貨四枚づつ支給しようと思う。じゃあ明日は借家を見て回るぞ」
魔石を忘れないうちに充填しとかなきゃ。
魔石の使い方は魔石を強く握り込むと魔力を充填でき、軽く持ったり皮膚に触れさせて置くと魔石から魔力を吸収できる。
二個の魔石を充填したら、良い時間になったので今日は寝ることにする。
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