第9話 鑑定習得

「フィオレラ、ギルドに登録するのはスキルが少ない今しかないがどうする」

「建築ギルドで登録したいと思います。攻撃ができないのにハンターはちょっと」


「そういえば攻撃ができないのは何でだ」

「事故の後、男の子に対して攻撃したいと思ったと親に話してしまい。責められトラウマになりまして。攻撃したいと考えただけで身がすくむのです」


 トラウマになるほど責められたのか。

 いつか解消できるといいな。


「そうかならフィオレラは防御特化だな」

「はい、がんばります」




 今日は率先してフィオレラが建築ギルドに入って行く。

 そして新規登録窓口に駆けるように近づく。


「フィオレラ窓口は逃げないから」

「夢の一つにギルドに登録するのがあってとってもうれしいんです」




「お師匠様、夢に見たギルドカードです」

「よかったな」




「こんちは、また端切れを貰いにきました」

「こんにちは、はじめまして」

「おう、また来たのか?」


 フィオレラの方を見て、鼻の下を伸ばす魔木工々房の若い職人。

 うちの優秀な弟子はやらんぞ。


「いつもの場所?」

「おう」


 気もそぞろな職人を引き連れて裏のゴミ捨て場に行く。幾つも山が出来ている。


「これでゴーレムを作ろう」

「【ゴーレム作成】初めてのわたし専用ゴーレムです」


 自分専用の使い捨てでは無いゴーレムができて、はしゃぐフィオレラ本当に嬉しそう。

 名残惜しそうな職人を残してハンターギルドを目指す。




「フィオレラ次に覚えるスキルは何がいい?」

「孤児院にいた時、雑務ギルドに登録出来た子がいまして。生活魔法が三つ使えてそれを自慢していて。とても羨ましかったです」


 雑務ギルドは登録の審査が厳しい分、報酬がそれなりに良いから。

 貧しい女の子にとって憧れなんだよな。

 別名メイドギルドだ。


「とりあえず覚えるスキルの数は十個までにした方がいいと思うんだ。スキルの効率的な使い方ができるようになるのは時間が掛かるからゴーレム使いで既に二個。押さえておきたいのは鑑定で二個。筋力強化と罪状確認もほしい。属性魔法は防御に強い土魔法がいい。残り三個で生活魔法。こんなところでどうだろう」


 勝手に決めたが、不味かったか。


「スキル鑑定と魔力鑑定と罪状確認は何でです?」

「これからは対人戦も覚悟しなきゃならないと思うんだ。スキル鑑定があれば相手の手口がある程度判る。魔力鑑定は最大魔力と残り魔力を知れば戦略が立てやすくなる。罪状確認は怪しい人がいた場合に判断材料一つになる」

「はい、それでいいです。生活魔法の三つは生水、洗浄、照明がいいです」

「生活魔法はそれにするとして。十個のスキルに慣れたら、追加で覚えてもらうよ。それから明日からハンターに復帰する」

「はい、わかりました」


 納得してくれて良かった。

 どんどんチートになってくなフィオレラ。

 パーティメンバーが強くなるのは良いことだ。




 ハンターギルドは昼間の時間、本当に閑散としてるな。

 まず資料室でこの辺りの地形を確認した。

 東門を出て少し行った場所に川があるのを確認する。

 ゴーレム使いが二人になった事で考えた作戦がある。

 明日が楽しみだ。




 鑑定窓口は何時も初老の係員だ。

 かなり頻繁に来ているから完全に顔を覚えられた。

 筋力強化が増えたので二匹目のどじょうを狙っているとでも思っているのだろう好都合だ。


 魔力の流れを分析しながらスキル鑑定を受ける。

 スキル鑑定の魔力は額を探っている。

 不思議に思って自分の頭の魔力を分析すると。

 脳の中に小さい魔力の塊がある。

 これがスキルを司っているのだろう。

 魔力のイメージもばっちり覚えた。




 次に魔力鑑定を受ける。

 魔力の玉が発射され体の表面で跳ね返る。

 跳ね返る感触で最大魔力と残り魔力を量っているのか。

 こちらのイメージも大丈夫だ。

 しかし、この吐き気なんとかならないのか。

 愚痴ってもしょうがない。




 宿の裏庭は静かで訓練にちょうど良い。

 少しぐらい汚してもかまわないのがまた良い。


「フィオレラまずはスキル鑑定だ。スキルを知りたいというイメージを魔力に乗せて頭の中を探る感じでいけ。試しに俺に掛けてみろ」

「やってみます。うーん、こうかな。あっ、イメージが三つ送られてきました。人形を作るのと人形を動かすのと体を強くするイメージです」


「なんか思ってたのと少し違うな文字情報だと思った。スキルで発動してみろ」

「はい、【スキル鑑定】だめです。スキルが発動しません」


 多分、熟練度が足りてないのだろう。


「今度はアビリティで自分自身に鑑定を何回も掛けてみろ」


 うんうん、言いながら熟練度を上げている。


 一時間ほど経った時。


「あっ、送られてくるイメージが一つ増えました」


 さすがチート覚えるのが早い。


「これでスキル鑑定が出来るようになったはずだ」

「やってみます【スキル鑑定】できました。スキルの名前がわかります」


 アビリティはイメージ。

 スキルは文字情報か。

 スキルの方がまるきり使いやすい。


「次は魔力鑑定だ。魔力知りたいというイメージを乗せて、魔力の玉を俺に向かって打ち出せ」

「やってみます。最大魔力は多いと残り魔力はいっぱいというイメージが帰ってきました」

「熟練度が足りないだろうから一時間ぐらい繰り返すんだ」


 唸りながら熟練度を上げている。


「あっ魔力切れです」

「少し休もう」




「休憩の間少し話をしないか。いつも俺が聞いたり命令したりだろ。俺に意見とか聞きたい事とかないか?」

「それなら、お師匠様の生い立ちが聞いてみたいです」

「そうだな、フィオレラの生い立ちは聞いたから不公平だよな」

「そうです。不公平です」




「おれは二人兄弟の弟として生まれ子供の頃は普通の子だな」


 いつに無く真剣に聞いているフィオレラそこまで知りたかったのか。


「子供の頃が見たいなぁ」


 スマホに写真のデータはあるけど、バッテリーはもう無いから見せられない。残念だ。


「病気も怪我もなくスクスクと育ち学校は大学まで出た。勉強は普通、運動は下の方、芸術関連は駄目だったな」


「どんな事を学んだのです?」

「大学では情報処理をやっていて。簡単に言うと物事の知らせを加工して別の物事にする」


「全然意味が分かりません」

「例を上げると売り上げを書いた物があったとするこれを加工して合計だすというような事を計算する機械にやらせる。そんな学問だ」

「そんな凄い事が機械でできるなんて」


 まあ実際はロボットの制御からゲームやら出来る幅が広すぎて俺にも詳細は分からん。

 説明は出来ないからしない。


「それから会社にはいった。こちらでは商会だ。そこで部品の発注の仕事をやっていた。新米だったけどな」


 俺は行方不明になったけど、会社大丈夫だよな。

 新米のやる仕事なんて多寡が知れてるけど。


「俺の生い立ちはそんな感じだ」


「恋人はいたのですか?」


 触れられたくない所にきた。

 でも正直に言っとくか。


「大学の二年間だけだけど、意見が合わなくて二人で会うことが少し苦痛になったので別れた」


「今はいないと」

「ああそうだ。もう良いだろ」




 しばらく二人とも無言ですごす。

 なんとなく気まずくてアビリティで魔力鑑定をフィオレラに掛ける。

 返って来たイメージに驚いた。

 何っ残り魔力がほぼ満タンだと。

 回復が早すぎる。


 四時間ぐらいで全回復のはずだ。

 まだ、二十分ぐらいだ。




 体の周囲の魔力を吸収して自分の物にしているのか。

 魔力操作を極めるとこういう事もできるのか。

 つくづくこの娘はチートだ。


「フィオレラ、魔力もう回復しているぞ。大体二十分で全回復した。すごい」

「はい、続きはじめますね」




「そろそろ、魔力鑑定のスキルを試しに掛けてみろ」

「【魔力鑑定】お師匠様の最大魔力は百五十二で残り魔力は四十六です」


 やっぱり一時間ぐらいで覚えたか。

 俺もそれくらい早く覚えたい。


「今日はこんなところにしておこう。残りのスキルは追々覚えよう。お疲れ」




 成り上がりを目指すとして、今後の喫緊きっきんの方針を少し考える。

 筋力強化のスキルを中心にするのは便利だし強いと思う。

 しかし、武術の才能がないと行き詰まりそうだ。

 奥の手ぐらいに考えて置いた方がよさそう。

 明日はすこし思いついたゴーレムのアイデアを試してみたい。

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