1 転生したら魔族だった件1

「あれ? 俺人間じゃなくね?」


 まず肌が紫。

 そして着ている服が全部黒い。

 次に肌が紫。

 しかもついてるネックレスがドクロ柄。

 そんでもって肌が紫。


 ……うん、何度見ても紫。


 俺多分勇者じゃなくて魔族に生まれてるわ。

 紫色の肌って絶対悪魔じゃん。

 勇者じゃなくてもせめて人間が良かった……。


 ……でもまあこれはこれでなんか馴染んでるしいい──なんてならないからね!?

 自然じゃないよ? 明らかにおかしいからね!?


 勇者は? 無双は? ハーレムは? なんで俺だけ? おかしくない?

 いやおかしくはないか。サクラ様も時々勇者とか冒険者以外の素養が出るって言ってた──ってちがーーーう!!

 ここはあんのクソ女神ってキレるとこだろ!!


 はぁ……。


 なんか今日はおかしい。いつもなら驚いたりブチ切れたりするところで外から歯止めがかかっているような感覚。

 なんだこれは。

 今まで感じたことないような気持ち悪さを感じる。まるで自分の中にもうひとりの自分がいるかのようで……。



 だけど──



 ……。

 …………。

 ………………わからん。


 何も分からない。


 思い当たる節といえば転生したことしかないのだから多分あのクソ女神の仕業だろう。

 余計なことをしてくれる。自分の失態でキレられないようにとかそんなとこだろ。


 まあいい。折角無駄に落ち着いてるしとりあえず今日寝る場所でも探すか。


 ん?


 なにか下から神々しいような禍々しいようなそんな気配が……。


 下を見るとそこには1本の棒と1枚の紙。

 棒は白のような黒のようなよく分からない色をしていて先っぽに人形みたいなのがついてる。

 紙には文字が書いてあるようだけど……手紙……かな?


 最初に気づいた気配はこのよく分からない人形付きの棒から出てるんだと思うんだけど何かも分からないしとりあえず手紙を読んでみることにする。



 ~~~


 榎田くんへ


 サクラです。

 本来であれば人族に転生するところなのですが魔族に転生してしまいました。

 選んだスキルが〖ドレインタッチ〗であったことが主な要因で、それに加えて転生先の世界で魔族が減少していることや榎田くんに魔族としての適性があったことなどが加わり、現状になったのかと思われます。

 私や神域全体としてもこれまで例を見なかった事態で非常に困惑していますが、榎田くんはもっと困惑していると思いますので、これから少しだけですがその世界での生き方をお伝えします。


 〜〜〜



 ご丁寧にサクラ様からのお手紙でした。

 内容もごもっともですね。

 よく考えたら〖ドレインタッチ〗って魔族が使ってるイメージしかない。

 人間で使ってるのって水色の髪の女神を下界に下ろしたらしい緑のジャージの人しか見た事ないレベルですよね。

 そら魔族にもなりますよって話か。


 その他の理由は知ったこっちゃないがサクラ様も知らなかったんだろう。



 〜〜〜


 まず自分の種族やステータス、スキルなどは自分の体に〖鑑定〗のスキルを使うことで知ることができます。

 スキルの使い方は〖○○〗のスキルを使いたい!と念じると使うことができて、今後は基本的にそれを使って生活していくことになります。

 〖鑑定〗を使うと画面みたいなものが出てきてそれに触ると詳細が見られます。


 〜〜〜



 ふむ。俺はどうやら〖ドレインタッチ〗の他に〖鑑定〗というスキルを持ってるらしい。

 ステータスとかスキルとかゲームみたいでなんかわくわくしてきた。


 でもスキルを使い始めたら長くなりそうだし、まだ手紙に続きがあるから先に読みきってしまおうか。



 〜〜〜


 他にもいろいろなスキルがあると思いますが、稀にある常時発動のもの以外の使い方は基本的に同じです。


 次に〖収納空間〗に1週間分の水と食料、テントセット、寝袋を入れておきましたので良ければお使いください。


 なんで1週間!? 短くない? と思ったかもしれませんがこれ以上にすると私上司に怒られちゃうので許してください〜。


 これも〖収納空間〗から○○を取り出したい!と念じれば取り出すことができます。


 最後にこれからどこかへ移動なされると思いますが、最初向いていた方向(この手紙が置いてある方向)に進むと少し大きな道に出ることができ、そこを左に曲がるとちょっとした都市があります。

 そこでは良い出会いがありますので良ければ尋ねてみてはいかがでしょうか。


 PS

 この手紙と一緒に置いてある杖は神域からのお詫びで、『聖魔の杖』という杖です。

 これを使って魔法を使うと魔法が少し強くなります。殴る用の武器では無いですが壊れることは無いのでそのように使ってもらっても構いません。

 私からは〖祝福〗を授けましたのでささやかなものではありますがどうかご容赦ください。


 新しい人生が良きものになりますように。


 〜〜〜



 ということらしい。

 さらっと書いてあるけど俺魔法使えるんだね。

 〖ドレインタッチ〗があるから期待はしてたけどいざ使えますよって言われるとどこか嬉しい。

 あと寝るところと食べ物があるのはありがたい。1週間分っていうのはもうちょい頑張って欲しかったけど、多分そこまでに街に着けるっていうことだと思うから大丈夫だね。


 それとサクラ様さっきは悪く思ってごめんなさい。

 こんなにも俺のこと思ってくれてたなんて……。

 反省して2回目の人生楽しんでいきます!



 あとは……。

 この棒改め『聖魔の杖』のこととか、色々気にはなるけど順番にやっていこう。


 まずは〖鑑定〗。現状を知りたいから自分の体に向かって、と。

 えーっと〖鑑定〗したい!って念じればいいんだよね?

 さあ、異世界での初めてのスキルだ!




 〖鑑定〗したい!!

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