第1章 下積み
第1章プロローグ
「タカシ、今からわしの部屋へ来い」
朝日が昇り1時間ほど経っただろうか。
毎日の日課のトレーニングの最中、このトレーニングをしろと言い始めた本人である爺さん──俺の師匠である──から呼び止められた。
「今すぐですか? まだトレーニング終わってないんですけど」
「おう、今すぐじゃ。」
なんだろう。いつもはこんなことないのに。
いつも話がある時はご飯の時間か寝る前にほとんどで、こんな朝に、しかも居間じゃなくて師匠の部屋でなんて珍しい。
なんて思いながら師匠について行く。
「入って、ちょっと待っとれ」
師匠の部屋に入るのはここに来た時以来2回目。大事な話でもあるんだろうか。
言われた通りに部屋に入ると先客がいた。
長い黒髪に少し釣り目、大きな八重歯を持ち、赤い瞳が特徴の女の子。
その黒髪は瞳と同じ赤いリボンで結ばれその髪と合わせるかの様な黒のドレスに身を包んでいる。
俺の姉弟子にあたる12歳のヴァンパイア、ミーナだ。
「ミーナも師匠に?」
「うん、そうだけど。そういういうタカシも?」
「あ、うん。トレーニング中に呼ばれたから何事かと思ってる」
うーん。ミーナも呼ばれている、となると師匠がしばらく留守にするとかかな。
「私もよ。なんの話しがあるのかしらね」
「さあ。また突拍子もないことを言わなきゃいいけど」
「そうね……。けど、わざわざ朝から呼ばれたんだもの。しょうもない話じゃないことは確かだと思うわ」
そんなことを話しているうちに師匠も部屋に入ってきて俺達2人と向かい合うように座った。
「今日呼び出したのは、そろそろお主らに教えることも少なくなってきおったし、最後の試験をしようと思ったんじゃ」
最後の試験?
「それはどういう?」
「今からお主らにはある魔物と戦ってもらう。それを倒せたらもう教えることは無い。もう一人前じゃからここを出て行くのじゃ。もちろん、直ぐにとは言わない。試験の反省と出ていく用意も含めて1週間はここに置いといてやる」
え……。そんな急に……。
「え、師匠。いつも調査と準備が大切って言ってるじゃない。なんでそんな急なの?」
「常に準備をできる訳では無いからじゃ。お主らはリッチーとヴァンパイア。これから魔族を導いていく立場になる。その者が緊急事態に対応出来んようでは意味が無い。という訳で今から行く。ええな?」
「何と戦うかは……」
「教えるわけなかろう。何と戦うか分かっておるようじゃ意味が無いからのう。そういう訳じゃ、ほな行くで」
師匠はそう言うと口を挟む間もなく転移の魔法を発動させた。
視界がブレたと思ったら、あっという間に目的地。
ここは……
「「砂漠?」」
「そうじゃ。で、倒すのはあやつじゃ」
師匠は指をさして簡単にあやつとか言ってるけど、あれって……
「ねえ、タカシ。あれってもしかしなくてもあれよね」
「うん、あれだね……」
とてつもない図体に歩くだけで周りのものを薙ぎ倒す尻尾、そして極めつけには口から吐く高温のブレス。
見た目的には大きなトカゲ。しかし実際は……。
「お主らあやつごときが怖いのか?」
「いや、師匠! あれはさすがに無理ですって!」
「そうよ! さすがに無謀だわ!」
「ふぉっふぉっふぉっ。
そう、紛うことなき最強種、ドラゴンであった。
どうしてこうなった……。
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