転生したら魔族になったのでとりあえず魔王になることにした

naka

プロローグ

プロローグ

「これが転生か……」

 澄み渡る紫の空、生い茂る草木、そして黒い服に紫の肌。

 自然豊かなこの地で……ってん?

「俺人間じゃなくね?」

 魔王は? 勇者は? 冒険者は?

 あれれ? 異世界転生ってこういうのだっけ??







 それはある日のこと。

 学校が終わった帰り道。いつも通りコンビニに行きいつも通り漫画を手に取ったその瞬間──

 目の前が真っ白になった。



 あれ、ここはどこだ。

 コンビニにいたはずの俺だったが何故か知らないところにいる。

 周りを見渡してみるがあるのは白くて高級そうな椅子と机が一つずつ。それと一人の女性。それ以外は何も無い。

 ん? 一人の女性……?


「あ、気が付きましたか?」

「ん、んん?」


 気がついたってことは寝てた……いやそれは無いから意識がなかったってことか。

 コンビニからの記憶が無いがということは病院?

 いやそんな器具はないしそんなに人もいない。じゃあここはどこだ。そしてあなたは誰だ。ということでとりあえず


「ここはどこであなたは誰?」

 と単純な質問をしてみる。


「はい! 私は女神サクラと申します。貴方は榎田孝えのきだたかしさんでよろしいですよね? そうですね……ここは……非常に伝えにくいのですが現世と天国の間とでも申しましょうか。」

 天国?っていうと死んだ後に行くあそこ?


「あ、それはあってるけど、現世と天国……? ってことは俺、死んだんですか?」

 え?死んだの?まだ高校生で? やり残したことも沢山あるのに? 俺死んだの?


「そうですね。あなたが普段から利用しているコンビニエンスストアに一台の車が突っ込んできて窓際の雑誌コーナーにいたあなたに衝突、車はさらにその奥まで突き進んで停止したものの、あなたはそのまま……。あ、正確に言えば現世では死亡、天界では仮死の状態になります」

「仮死? どういうことですか? まだ生き返れるんですか!?」

 よっしゃ生き返れる! まだ今週の漫画読めてないから! 心残りがすごいの!


「生き返れるといえば生き返れますが元の場所には戻れませんし漫画も読めませんからね? いいですか。」

 俺の考えも全部お見通しってか。はえー、さすが女神様だ。


「で、俺はこれからどうなるんですか? 元の世界にも戻れないわけだしてんご──いや地獄にでも行けばいいんですか?」

「いえ、まぁそのようなことも出来ますがここに来られた方、つまり事故や病気で亡くなられた若い方に限ってこれからどうするかよ三つの選択肢があります。」

「せ、選択肢って……?」

「まず一つは元いた世界で再び人生をやり直す、赤ん坊になってまた新たな人生を送るという選択肢」

「親とか選べたりは──」

「しません。ランダムです。」


 そこは選べて欲しかった。親ガチャとかちょっと。


「二つ目に先程言っていたようにそのまま本来の流れのまま天国に行く、という選択肢。若い方でもこれを選ぶ方結構みえるんですよね。」

「天国に行くと何かあったりするんですか?」

「魂や記憶が永久に保存されるぐらいで特に何も起きませんし天国自体にも何も無いです」


 じゃあなんでそれ選ぶやつがいるんだという疑問はさておき、

「じゃあ最後は?」

「異世界に転生するという選択肢。」


 異世界……転生?って漫画とかアニメとかでよくあるやつかな。

「その異世界転生とかいうやつ気になるんですけど、詳細聞いてもいいですか。」

「転生ですか!ほんとにいいんですね?」


 何その食いつき。あぁ勇者たりなくて困ってたりするやつね。はいはい、いっちょ俺が魔王ぶっ倒してやるぜ。


「え、ええ。異世界転生ってチート武器とか貰えて最初からお金めっちゃ持ってて女の子にチヤホヤされてっていう巷で有名なあれですよね?で、とりあえず詳細聞いてもいいです?」

「はい?」


 サクラ様が何言ってるのみたいな顔してこっち見てくるけど違うの?

 普通そうだよ……ね…………?

「一応とても強い能力は貰えますが女の子にモテるかどうかは分かりませんよ。詳細といっても能力貰って今までと違う世界に行きますよというだけですし。」


 すごい適当!こんなんでいいのか異世界。ほんとにやってけてんのかな。まぁいいや、知ったこっちゃねー。


「分かりました。いいですそれで。」

「確定したらもう取り消しは効きませんからね。本当によろしいですね?」


 親ガチャと何も無い天国よりはマシじゃないかと思うんですがどうでしょう。

 このまま今までの人生引き継げて、チート能力貰えて、また新しい世界に行けるとかなんでみんなこれやらないのか不思議なレベルだ。なら何も問題は無い。よし。

「はい!」

「じゃあ能力が選べますのでこっちの部屋に来てください。」


 サクラ様の方を見るといつの間にかドアが出現していた。やっぱ女神ってすげー。


「何種類かありますのでよく見てゆっくり選んでくださいね〜。選んだ能力やあなたの元々の能力によって選べる職業やリスボーンする場所が変わってきますが基本的には始まりの街で冒険者稼業をすることになると思います」


 ほー。前世は真っ当に暮らしてたし冒険者になれるでしょと思いつつ一応尋ねる。


「とすると冒険者以外になってしまうこともあるってことですか?」

「大体は冒険者になりますが時々商人や僧侶などの非戦闘系職業に適性が出てしまう方がみえて……。どうしても仕方が無いことなんですけどなんだか申し訳なくなります」

 サクラ様は残念そうに答える。魔王退治のため勇者を送り出したいであろう女神様にとっても非常に残念なことである。


「普通に生活してれば大丈夫なはずなんですけどね……難しいところです」

 いっそのことサクラ様が退治しに行けば……ってそれは無理か。


 早く能力を選んで退治しに行こう。退治したら勇者扱いだろうしハーレムでも作って……っていかんいかん。今はそんなこと考えてる場合じゃない。


「この魔力吸収ってやつにします。強そうなんで」

 これ強いでしょ。吸収系って使えればほんとに戦力になる。

「はい! 承りました! では選択能力はドレインタッチで転生させていただきます! 準備はよろしいですか?」

「はい、大丈夫です」

「では、少し眩しいと思いますので目を瞑っててくださいね」


 そう言われて俺は目を瞑る。

 勇者生活。アニメとかでしか見た事ないけど楽しみだなぁ。かわいい女の子とかいるといいなぁ。

「はい、準備完了です! 頑張ってくださいね! 行ってらっしゃい!!」









 シュピーンという音がした後、俺は見知らぬ所に立っていた。

「これが転生か……」

 だが何か違う気がする。何だこの違和感は。

 なんだか空が紫色をしている。それほど魔王軍は攻めてきているというのか。思ったよりやばいのか。いや、やはりまだ何かがおかしい。ん?




「あれ、俺人間じゃなくね?」

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