39 偽者
大祈祷師ルベロから呪禁の護符を貰い受けた俺達は、バクタの街で帰りの食糧と水を買い込んだ後、帰り路についた。帰りは、ダマスの街に寄り、ドゥルーダに呪禁の護符を渡しに行く必要があった。
我々はアリアンナ街道を今度は西に進路をとり、ダマスの街へと向かった。
帰り道では、連日雨に降られての道程となった。俺達は雨に濡れながらひたすら街道を西へと向かった。
「やっぱりあんたは雨男だ」とラモンは笑いながら言った。
そして我々は一週間以上かけて、ダマスの街までたどり着いた。ラモンは先を急ぎたい、とのことで、ダマスの街で我々はお別れすることになった。ラモンとタータは馬車で数日かけてトンビ村に帰る。そして俺は、これからドゥルーダ邸に向かい、ドゥルーダに呪禁の護符を渡し、一泊して明日トンビ村への定期便に乗ることとなった。
「ちゃんとタリアに謝るんだぞ」俺はタータに言い聞かせた。
「わかってるわよ。プッピは悪くない事もちゃんと言っておくわよ」タータが言った。
「ラモン、今回は本当にありがとう。助かったよ」
「ああ、いいってことよ。プッピも今日はよく休めよ」
そして、俺達は別れた。
その後俺はドゥルーダ邸まで馬車を使った。
ドゥルーダ邸に到着し、門番に面会を申し込むと、門番は「やあ、今日も来たのかい」と俺に声をかけてきた。今日も? 何の事だかわからない……。
応接間で待っていたドゥルーダは、真剣な面持ちをして俺を迎えた。
「プッピよ。何かあったのか」ドゥルーダは俺に聞いた。
……何か様子がおかしいぞ?
「ドゥルーダよ。呪禁の護符を持ってまいりました」俺は言った。
ドゥルーダは杖を握りしめ、立ちあがった。
「昨日、お主は自分で処分をすると言っていたじゃないか。気が変わったのか?」
「……? 何の事だかわかりません。私はバクタまで行き、大祈祷師ルベロから呪禁の護符を貰い受け、たった今帰ってきたその足で、ここに来ました」
俺の言葉を聞いたドゥルーダは、目を見開き、微動だにせずに固まっていた。しばらく後に、肩を落として座り込んだ。
「……呪禁の護符を見せてみい」
俺はドゥルーダに護符を手渡した。
ドゥルーダは、護符を手に取り、じっと見ている。
「確かに、本物の護符じゃな」
「どうしたのです? 何か問題でもありましたか?」
ドゥルーダは護符をテーブルの上に置き、両手で頭を抱えた。
「わしとしたことが、一世一代の不覚じゃ。まさか、ザウロスにしてやられるとは……」
「ドゥルーダよ、話してください。何があったのです?」
「……昨日、お主が来たのじゃ」ドゥルーダは言った。
「いや、お主に寸分たがわぬ男じゃった。そして、その男は、呪禁の護符をルベロから貰い受けたが、ルベロから、自分自身で始末をするようにと指示された、と言ったのじゃ。そして、ルベロの指示に従い自分で護符を始末するので、ザウロスの呪われた護符を渡してほしい、と、そう言ってきた。」
「じゃあ、ドゥルーダ様は、昨日ここを訪れた私そっくりの男に、ザウロスの護符を渡されたと、そういう事ですか」
「そうじゃ……。なんて事だ。みすみす、護符をザウロスの手に渡してしまった。しかし、昨日ここにやってきたお主そっくりの男……、わしはてっきりプッピだと……。わしとした事が、幻術に惑わされたのか?」
ドゥルーダはがっくり落ち込んでいる。
昨日、シンがここに来たのだ。
そして、俺を騙ってザウロスの護符を持って行った。
ルベロの胸騒ぎは当たっていたようだ。
アイランドに来たばかりのシンは今、ザウロスに支配されているのだ。間違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます