〇20:22


 破水。生温かいというよりも、熱いものが、もれ出て来た感じ。


 まず横を向いていきむことになり、ガクが肛門に手をあててくれた。


 いきむのは、はじめてだし、よく分からなかったが、手の圧握が楽だった。


 正直、だんなさんにここまで手伝わせるとは、思わなかった。ガク「頭の脈が分かるよー」と言っていたが、意味が分からなかった。後になって「え? もう出てるの?」と気付く。


 陣痛の波が少し分かってきて、うまくそれにのっていきめると辛くないが、のれないと、死む。汗はかくわ、のどはかわくわで、つらい~! 分娩室に入って1hくらいで、上向きでいきんでOKが出る。上向きの方が、少しいきみやすい。きっとものすごい顔で、ものすごいこぶしに力をこめて、いきんでいたんだろーなあ。東さんとガクが交代で肛門の辺りをおさえてくれた。波にのれれば、つらくない。


 だんだん頭が出て来たのが分かる。いきむと、時々赤ちゃんの心拍数が下がってしまうので、心配。深呼吸しなきゃ!! そして何回か強くいきんだ後、明らかにあそこがさけるくらいの痛み!! 頭が引っ込まなくなった。発露だろうとは分かったけど、あまりの痛さに「痛い~」って叫んでしまった。先生方は余裕で、お産の準備。切らないで、とお願いしていたのは、どこへやら。心の中で「はやく切れ~!!」とさけんでた。


 ▼

 妻の叫びが大きくなったと共に、やんわりと頭の方へ移動するよう促されるのであった。手は痺れ、肩に無駄に力をかけたためか、背中ががちがちに固まっている。


 出るよ~もう少しだからね~という、余裕のある助産師の言葉が終わるか終わらないかのうちに、ひときわ大きな、ああ、という声が分娩室に響き渡るのであった。


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