第8話 フィルバートという男について

第8話 謎の剣士

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885843307/episodes/1177354054885846327


 フィルバート初登場の回。


 優しくてちょっと嘘つき、気づかいができて献身的で、でもヒロインを守るためなら彼女の気持ちを踏みにじってもしかたがないと、極端な割り切りもする。

 フィルはロマンチストでリアナ至上主義、だけど愛情の示し方がわかりづらく独りよがりになりがち、というキャラクター。


 なぜそんなふうになったかという理由の背景には、ハートレスとして偏見や差別を受けたり、辛い戦争体験などもありそう。戦時の英雄ではあるのだが、自己評価が低い。

 自分が幸せになるというイメージを描けないので、相手に献身的に尽くすことで、そのとしてしまっている。


 また、竜族なのに〈竜の心臓〉を持たないということは、アイデンティティの問題でもあるので、『王の娘』リアナを守ることが、彼の精神の安定につながっているのかもしれない。


 「俺についてこい」を王タイプ、「いつでもあなたの側にいて守ります」を騎士タイプとするとして、なぜ騎士はヒロインを全力投球で守るのか。ヒロインの魅力、と言えればいいのだけれども、たぶん、それ以上の理由が必要なのではないか。(リアナの世界に「騎士」という職業はないが、便宜上)


 そういう背景をあれこれと考えた結果、自分でも自分の気持ちがよくわかっていないような、はっきりしない面倒くさい男ができあがった。


 騎士といえば「誓い」だけれども、フィルバートの場合、あまりロマンチックな背景はなく、いろいろと血なまぐさい事情でやむを得ず立てた誓いによってリアナを守っている。


 誓いは彼の生活を縛っているが、同時にそれがあることによって生きやすくもなっている。(「立てた誓いが重いほど、それは困難のなかで生きのびる力を与えてくれる」) 彼にとってオンブリアは生きづらい国で、そこで戦って生きていくためには「誓い」のようなルールが必要不可欠なのだった。

 だから、第一部の時点では、誓いの対象は別にリアナでなくてもかまわない。


 この「誓い」を立てるにいたった〈竜殺し〉への罪悪感や、孤独感、戦争体験でのトラウマを乗り越えて、一人の女性を愛せるようになることが、この物語でのフィルの目的になる。



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