シリーズ全体② 三角関係プロット
「対立する恋人同士」が主軸のストーリーを作るのはなかなか難しく、「性格の違う二人が、衝突しながらも、協力して目的を追うなかで恋に落ちる」という、よりわかりやすいストーリーのほうへ動いていきました。ロミオとジュリエットから、バディものへの変換という感じです。
恋愛関係については、もうひとつ「三角関係」のプロットがあります。
シリーズ全体を通して、プレミス(売りになる文句)を作るならば「昼ドラ展開」と「三角関係」は外せません。第二部と第四部は、ストーリーの中心といっていいほどです。とはいえ最初から三角関係を書こうと思っていたわけではありません。
「対立する恋人同士」から残った設定のひとつは、どちらも「自分が周囲を引っ張っていく王様タイプ」という点です(そのせいなのか、デイミオンとリアナは、いわゆる「ケンカップル」でもあります)。
そういうわけでこの二人には、それぞれサポート役が必要になります。突っ走っていく二人を止めたり、お膳立てしてあげたり、時にはお説教したりという「女房役」です。フィルバートはそういう役割として出てきました。
女性向け恋愛小説のヒーローは大きく、ヒロインを引っ張っていく「王」か、ヒロインを陰に日向に支える「騎士」に分けられるという話がありますが、その場合デイミオンが「王」、フィルバートが「騎士」の役割になります。
ただ、大まかなプロットを考えている時点では、あまり三角関係を書きたくなかったので(前作も泥沼の三角関係だったから)、フィルと恋に落ちないようにといろいろ策を練っていました。「男性に見えるが実は女性」とか、「そもそも性別がない」など。
「実は女性」案は第一稿まで残っていて、そのときの名前は「オフィリア・スターバウ」でした。第一部だけ読んでもらうと、フィルが女性でも実はストーリー上問題ないことがわかっていただけると思います。
しかし、「孤独で、ヒロインに忠実な剣士」というフィルのキャラが立ってくると、これで女性と言い張るのは無理があるなと感じ、結局、男性にすることにしました。同時に、これはたぶん三角関係不可避だなと観念しました。
フィルが「恋愛対象外」とみなされる設定は、〈ハートレス〉という設定に形を変えて残っています。あと、名前の略称が「フィル」というところも。
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