異世界転移者を狩る者を狩る者
地平線と空の境界が交わる部分を見ながら、女は遠い目をしている。
そこは石造りの重厚な城の屋根の上。
ホントにこの女は高い所が好きである。
馬鹿となんとかはか高い所が好きと言うが本当である。
「濁す方をまちがってるわよ」
あ、ホントだ。
眼下には運動場のような広場があり、そこには場違いな制服姿の高校生達が、ワラワラと各々のスキルを磨く為の訓練をしていた。
「今度助けるのはこの子たち? 見たところ……クラス丸ごと異世界転移ってヤツね」
女は、蟻のように小さい点のように見える子供達を見下ろし、独りごちる。
そして一つ、ため息を漏らした。
──やりたくなきゃやらなくていいよ。
「やりたいかやりたくないか、なんて……私の気持ちなんて関係ないでしょ。
アンタが、私が『やりたい』って思うよう設定にすれば、私はなんの疑問も持たず喜んであの子達を助けるわよ」
うーん……
「何よ」
それじゃつまんないよね。
そういえば名前も、つける途中だったよね。
あの名前が嫌なら、他何がいい? クラピ──
「だからヤメろっつってんでしょうがっ」
女は屋根の上で立ち上がり、長い髪をサラリと後ろへと流した。
その目は、迷いなくまっすぐに高校生たちを見下ろしている。
「名前なんていらない」
え?
「だから名前なんていらない。私は『女』で充分よ」
不便じゃね?
「そこはアンタの筆力にかかってるだけでしょ。せいぜい、誰が誰だか分からなくなるような描写だけは避けてよね」
え……難しい。
「アンタには期待してんのよ、
う……うん。頑張る。
「じゃ、いくわよ!」
女はそう言って屋根を蹴る。
自由落下を始めた身体から手足を精一杯伸ばして風の抵抗をうける。
「私はハン◯ー×ハンター! 異世界転移者を狩る者を狩る者!」
全力でそう叫び、高校生たちが集う広場へと落ちていった。
……着地どうすんだろ。
そんな事は、女はきっと気にしてないのだろう。『
作者冥利に尽きる。
──私は、その期待に応えるべく、淀みなく滑らかにタイピングする。
彼女の為に。
そして、夢想した作品を公表する人達の為に。
きっと、そのうち何か素晴らしいものが生まれるのを期待して。
了
異世界転生を狩る者を狩る者 牧野 麻也 @kayazou
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