ぼくらのヒーロー

ママの視点

　私と夫は何も知らぬ振りをしようと決めた。

　小さな体と心で一生懸命闘っているこの子を現実に引き留め、この家に無事に帰って来させるために。

　私達が理解を示したら、ソウタは子供ではなくなってしまう。完全に地球を守るヒーローになってしまう。そうなれば、小さなソウタに安穏な場所はない。それにヒーローの自己犠牲精神の餌食になってもらっては困る。

　本当は知っていると教えた方があの子のためなのかもしれない。でも私達では判断しきれなかった。悩みに悩んだ結果、きっといずれ運命の流れがその時の訪れを知らせるだろうと……だからその時までは黙っていようと決めた。

　ソウタ。私とあの人の大事な大事な愛しい息子。

　貴方の未来はこれからよ。今はただの通過点にすぎないの。乗り越えたその先には、人としてのあらゆる可能性が満ちている。ママとパパはその土台となるために、いつでもここにいるから、ちゃんと帰ってくるのよ。