ソウタの視点

 門限の時間はとっくに過ぎていた。ケータイも何度も鳴ってた。でも取れなかったんだ。

 僕は、運転手が乗っている嘘の映像を窓に映した車の後ろに乗って、遅くなった理由を一生懸命考えていた。

 まさか本当に怪獣と闘ってましたなんて言えないし……


『大丈夫か、ソウタ』


 僕が困っているのに気付いて車――ガルザクスがそう言った。


「うん……やっぱり迷子になってたって言うのが一番いいような気がする」

『そうだな。私もそう思う』

「怒られるのはしょうがないから、我慢する」


 するとガルザクスはすまなそうな声で言った。


『君とご家族には本当に申し訳ないと思っている。子供という存在が親という存在にとってどういうものであるか、よく解っているつもりだ。しかし我々が奴等と闘うには、他でもない、ソウタの力が必要なのだ。だから君の身を危険にさらしているという事実を、君のお父さんとお母さんに知られるわけにはいかない。我々が君と引き離されたら、地球は終わりだ』

「うん、解ってるって。確かにテレビと違って本物は怖いけど、僕が頑張らなきゃ地球がヤバイし。それに危険で本物だからこそ、勉強になったこともあるしね。だからパパとママのこともどうにかうまくやるよ」

『頼む』


 そう話している内に、家の近くに着いた。車から降りて、走り去るガルザクスに手を振る。

 そして玄関前まで来て、まずは深呼吸。

 ――よし、行くぞっ。


「ただいま……」


 家に入って、そーっとリビングのドアを開ける。中を見るとパパとママの目と合った。


「そこに座りなさい」


 パパに言われ、僕はパパの前に正座する。

 うぅ、怒られる……分かってるけど、やっぱり怖い。怪獣と闘うより怖いかも。

「今何時だ?」

「……七時十五分……」

「門限は五時だったな?」

「うん……」

「なんで遅くなった?」

「迷子に、なって……」

「ケータイはどうした?」

「ある……」

「なんで出なかった? なんでかけなかった?」

「……自分で帰れないのが悔しかったから……」

「なんで門限を五時にして、ケータイを持たせてるか分かってるか?」

「外は暗くなると危ないから……」

「分かってて電話に出なかったんだな」

「……うん」

「馬鹿野郎」


 パパの声は、静かだったけれど、硬くて怖かった。僕は泣かないように手をぎゅっと握った。でも目に涙が浮かんできた。怒られると分かってても、しょうがないと思ってても、やっぱり悲しかった。

 パパの顔を見れず、握った手をただ見ていると、パパは僕を抱き締めてくれた。


「心配させやがって……でも、無事で良かった」


 もうパパの声は怒ってなかった。なんだかほっとして、そして嘘をついてることがパパとママに悪いような気がして、そして怖くても我慢して闘わなくちゃいけないことを思い出して、僕は泣き出してしまった。

 泣き止むまで、パパは僕の背中をずっとさすってくれた。






 僕は頑張らなきゃならない。パパとママを守るためにも。泣きながら、すごく思った。

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