ぼくらのヒーロー
みやしろん
パパの視点
仕事が終わって六時過ぎに家に着くと、いつもならいるはずの息子の姿がなかった。
ソウタはまだ十歳だ。うちでは五時までに帰ってくるように言い聞かせている。そして息子はそれを守ろうと努めていた。
加えて今日はソウタが毎週楽しみにしているロボットアニメがある日だ。六時といったらテレビの前にかじりついて離れないのだが。
「ソウタは?」
俺がそう尋ねると、夕飯の準備をしていた妻が苦笑いを浮かべた。
「四時頃に怪獣退治に行ってくるって言って出かけたっきりよ」
「……怪獣退治、ね」
そう呟きながら、俺は沈黙していたテレビのスイッチを入れた。
リポーターがロボットと怪獣の闘いを実況している。仕事着のまま立ち尽くしてそれを眺めていると、妻が「やめてよ」と言ってきた。
「気になるわ」
しかしもう手遅れのようで、妻は諦めてメシ作りの手を止め、キッチンから出てきた。
「俺もガキの頃、ロボットアニメ夢中で見てたよ」
「私もよ。よく男子に混ざって“ごっこ遊び”してたっけ」
「俺もやったなぁ。主人公が決まって小学生だったんだよな。俺もロボットに囲まれてヒーローになりたいとか思ってた。まぁ、実際になっちまうと、物語じゃねぇからいろいろ危険なんだけどな」
「そうね……」
その時、ヒーローロボットが怪獣の攻撃をまともに食らいそうになった。思わず俺は「あっ」と声を上げた。妻も同じ反応をしたようだった。しかしロボットは間一髪避けて反撃。直撃を受けた怪獣はしばらく動けなくなり、そこへロボットがトドメの必殺剣を繰り出す。やられた怪獣は光になり、それはロボットの胸で輝く宝石に吸い込まれて消えた。
無意識のうちに俺は安堵のため息をついていた。妻も同じようにため息をついたので振り返ると、視線が合った妻は照れ笑いを浮かべて俺の腕を小突いた。
「ほら、だから言ったのに」
「だな」
たぶん俺も同じように照れ笑いを浮かべていたと思う。
「それより、アニメ録画してるみたいだけど」
「えぇ。今の特番で中止になったから、来週に延期ね」
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