物語は『箱庭』の中で

『箱庭』(Box-ing)はスポーツであり、 創作活動だ。二人の作家がリングに入り、お互いの言葉や情熱を拳に込めて打ち合う。それによって世界を生みだしていくというものだ。


 高校生のリュウは情熱をもて余して無軌道な生活を送っていた。他校生とケンカをしていたところをその高校の生徒であるケンに止められる。憤りをぶつけようとするがケンは自分は箱庭作家を目指していることを告げ、去る。リュウはケンと戦うためだけに箱庭作家を目指す。


 リュウは高校の中で箱庭を知っている者や箱庭作家を目指す者を探し、箱庭について知ろうとする。その中でケンが天才と呼ばれていることを知りさらに闘志を燃やす。

 箱庭の練習をするなかで作ることの楽しさを知り、自分の力としていく。ケンを倒すための「属性(スタンス)」も獲得する。


 ケンの家は箱庭作家の養成所出会った。両親ともに箱庭作家であり、幼い頃から英才教育を受けてきた。しかし、技術はあってもケンにとっては求めたことではなく、情熱に欠けていた。毎日養成所で生徒の相手をしている。


 ケンはある日リュウが自分と闘うことを望んでいることを知らされる。そして今まで誰からも感じたことの無いほど大きな情熱と短期間で成長したリュウの才能を感じとり、己の中に燃え上がる何かを感じた。ケンは技術を伸ばし、リュウと最高の作品を作ることを目指す。


 情熱と才能を真っ正面からぶつけるリュウと、技術と経験であらゆる力を受け止めるケンによる箱庭が始まる。

 一進一退、戦いの中ですら成長を続けるリュウ。それを受け止めながら的確にダメージを与える続けるケン。

 打ち合いは日をまたぎ、両者が同時に倒れることで終了する。


 月日は流れ、リュウは教師に、ケンは作家になっている。リュウの情熱は創作ではなく育成に向いていた。時たま創作意欲が出たときにとある養成所に立ち寄る。


 お互い母親になったんだけど、これは止められないよね。

 止めるくらいなら夫を追い出すわ。


 今日も言葉と情熱を拳に乗せて、箱庭の中で世界が生み出されている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る