5 マツール島 2日目 ⑤

 とりあえず、腸と、毛のついた肉片はイノシシのもの・・。


 そういう結論で皆がまとまった。フランソワは安堵した。

 だが、さっき涼香は高田に耳打ちして、何を彼に告げたのだろう?涼香は自分のことを信用していない、と言った。まだ俺を疑ってるのか?彼女は何を知ってるんだ?

 涼香に詮索されるのを警戒しながらも、平静を装い、フランソワはツアー出発の準備を始めた。


「こんな状態で、何がツアー続行だよ!連絡してくれよ!あの薄らハゲデブのところによ!警察呼べ!警察!!」


 ダダっ子のようにシンゴは他の者がツアーの準備をしているにもかかわらず、座り込んで文句ばかり言っている。


「警察呼んでもらいましょうか?」

 鈴木が見かねて、高田に言った。


「もし警察なんか呼んで、あの内臓を調べたらイノシシのものでした・・。なんてことになったらしゃれにならないぞ。それどころか、ひょっこり3人で一緒に帰ってきたら、どんなことになるか・・。」

 高田が何か言おうとしたのをさえぎるかのように山崎が言った。

「とりあえず、フランソワのいうことを信用しようということになったんだから。われわれも当初の予定どおり動こうじゃないか。とにかく食料を確保しないと。まず、山へ入って食べられそうな植物をとったり、罠をしかけたりしよう。そうしながら3人を探す。それでいいんだね?」


 山崎の言葉にフランソワは無言で相槌をうった。


「そうじゃなきゃ、自由行動の時間がどんどんなくなってゆくよ・・。やれやれ・・。」


 そういうと山崎もいろいろと準備にかかった。


 それぞれが立ち上がりながら、リュックをしょいはじめる。しかし、まだシンゴは座っている。


「出発するよ!」

 涼香が促すが、ぜんぜん行こうとする様子を見せないシンゴ。


「俺は行かねえよ!誰もいないうちにレイが戻ってきたらさびしがるだろ!」


 涼香がシンゴを引っ張ってでも連れて行こうという勢いで彼に近づくが、山崎がそれを止めた。


「それも一理ありだ。3人が戻ってきたら私たちが居なくなって心配するに違いない。それに、もう一人女の子がテントで寝ているし。ボディガードが必要だよ。」


 涼香は鼻で笑った。

「こいつがボディガードっ!ふっ!」


 涼香は立ち上がって、森のほうへ向かって歩き始めた。

 その後を追って、山崎、鈴木、高田も向かっていく。

 フランソワ涼香の更に先で他のものを待っていた。


 涼香が歩みを速めて、フランソワのもとまでたどり着き、すれ違いざま


「お待たせ。行くわよ」


 とだけ言葉を投げかけてフランソワを追い越し、先頭を進みだした。

 フランソワは怪訝そうな表情を浮かべる。


 涼香がまず向かおうとしているところ。それは昨日、ナホが化け物に襲われた森の、現場だった。

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