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 ツアーの乗客は、重そうな荷物を持って、全員が港に降り立った。

 港には、小太りで丸めがねをかけた、ワイシャツ姿の日本人男性と、色黒で彫りが深い外国人が立って、彼らを待っていた。

 日本人の男性は、この暑い熱帯気候にもかかわらず、長袖のワイシャツにネクタイをしっかりしめているが、汗びっしょりである。頭は、申し訳なさそう程度に弱々しく細い髪の毛がついている。ほとんど禿げ上がった頭からは汗が噴き出している。その男はタオルでひっきりなしに汗を拭いている。見ているだけで暑苦しい彼は、華信旅行社の日本人スタッフの川尻という男だった。


「皆さん!お疲れ様です!!こんな遠くまでよくお越しくださいました。いやぁ、暑い・・。私は暑いのが苦手でしてね。アハハッ・・。今日、明日はどうぞゆっくり、ハマニリゾートでごゆっくりなさってください。ビーチでゆっくり過ごされるもよし、カジノで遊びまくるもよし。三日後には大自然の中でのサバイバル生活ですから、それに備えて英気をやしなっておいてくださいね。」


 川尻はあまりの暑さに、すぐその場から離れたいようで、説明も早口で済ませた。


「こちらは皆さんのツアーコンダクターを勤める、現地人のフランソワ君です。フランソワ君は日本の大学に留学して観光などを学んでる優秀な人です。日本語も英語もぺらぺらですよ。ハマニ島の出身ですから、この島や周辺の島々のこともよく分かってます。分からないことは何でも彼に聞いてください。」


 フランソワはニッコリと笑って手を上げた。


「ミナサン、ヨロシクオネガイシマス。」


 フランソワは水色の半そでのポロシャツを着ていた。胸板が厚く、腕の筋肉も盛り上がっていた。ポロシャツはぴったりとその肉体に張り付いていて、彼のたくましいボディラインを強調していた。汗はまったくかいていない。川尻とは違い、さわやかな青年だ。


 確かに女性客の目はフランソワに釘付けだ。フランソワは一番重そうな荷物を持っていたサチとナホの近くに寄っていった。


「オニモツ、オモチシマショウ」


 二人の重そうな荷物をいとも軽く持ち上げ進みだす。


「では、皆さん、ホテルに向かいましょう。チェックインしていただいたら、皆さん、活動はご自由に。


 川尻を先頭にして、客はホテルへぞろぞろと移動をはじめた。

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