第40話 星に願いを

12月に入った。

街はクリスマスムード一色。

クリスマスが来れば、ファエトンに願いを叶えてもらう。


しかしそれは、彼女との別れの日でもあった。


学校での、ファエトン・・・愛美ちゃんの正体は、誰も知らない。

普通の女の子で通している。


「透くん、いい」

「ああ」

ファエトンが、僕の部屋に入ってくる。


「願い事決まった?」

「だいたいね・・・両親と瑠奈は?」

「もう、叶えてもらったて・・・」

「願いを?」

「うん」

ファエトンは、天井を見上げた。


「お父さんとお母さんは、娘が欲しかった」

「うん」

「瑠奈ちゃんは、お姉ちゃんが欲しかった」

「うん」

「だからもう、満足だって・・・」

「そっか・・・」

気を使ってくれたんだな・・・


でもおそらくは、「このまま一緒に」が、本音だろう・・・


「透くんは?」

「クリスマスイブの日に、お願するよ」

「決まったの?」

「ああ」

「よかった・・・」

ファエトンは、安堵のため息をついた。


そして、クリスマスイブになり、お別れ会が営まれた。

いつものような、レストランではなく、自宅でしんみりと行われた。

両親は、「予約が取れなかった」と言っているが、照れ隠しだろう・・・


お別れ会の後、ファエトンは母さんと瑠奈には、挨拶をし、

父さんの頬にキスをしていた。

父さんは喜んでいた。


まあ、男なら嬉しいだろう・・・


両親と瑠奈は、気を使ってくれて、僕とファエトンを、ふたりきりにしてくれた。

しばらくの間、談笑をした後、ファエトンが告げた。


「じぁあ、そろそろ行くね」

「うん。でもどうやって帰るの?」

「迎えが来るから・・・」

「そっか・・・」

ここに来るのか?


「じぁあ、透くん、願い事をお願い」

「うん、わかったよ。僕の願いは・・・」




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