第38話 千里の道も・・・

10月も半ばになる。

クラスの殆どは、進路を固めた。


まあ、当たり前だが・・・

大半は、大学へ進学する。

後、夢が既に固まっている者は、その専門学校へと進学する。

美容師とか、看護師とかがあげられるが・・・


でも、僕はまだ、固まっていない・・・

情けないと思う。

でも、安易には決めたくない。

人生は、一度しかない・・・


「透くん、いい?」

「うん」

ファエトンが入ってくる。


「まだ、迷ってるんだね」

「うん」

「私は、何も言えないけど・・・ただ・・・」

「ただ?」

「もう、君の中では、答えは決まってるんでしょ?」

「えっ」

ファエトンは、微笑む。


「わかるよ。もう10か月以上も、同じ屋根の下にいるんだよ」

「ファエトン?」

「今の君は、目的地は決まっている。迷っているのは、そこまでどう行こうか・・・」

「どういう意味?」

「つまりね。今君は、目的地を大阪に定めている。

そこまで、飛行機で行こうか、新幹線で行こうか、バスで行こうか・・・」

さすがに、鋭いな・・・


僕は、逃げていたのかもしれない。

迷っていれば楽だからな・・・


でも、それだけでは、成長しない。

成長するためには、一歩を踏み出さないと・・・


千里の道も一歩からだ・・・


「ありがと、ファエトン。おかげで決まったよ」

「ううん、私は何もしてないけど、ただ・・・」

「ただ?」

「ううん、何でもない。応援してるね」


ファエトンの寂しそうな表情に、僕は肝心な事を、忘れていたのを思い出した。



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