第36話 苦痛

9月末の日、僕の高校では体育大会が行われる。

体育祭ではなく、体育大会。


どう違うかと言えば、はっきりいって徒競争とかリレーとは、走るだけの種目だけ。

借り物、障害物、パン食いなど、見ていて楽しい種目は、全くない。

ただでさえ、スポーツが嫌いな僕は、さらに憂鬱だ。


なので、自主休校するつもりでいたが・・・


ファエトンがいると、そうもいかない。

渋々参加した。


僕ら3年生は、息抜きとばかりに喜んでいるが・・・

負ければ責任は、僕のような、運動音痴のせいになる。


小学生の頃からそうだった・・・

で、もし努力して結果を出せば、「生意気」といじめをうける。

世の中狂ってる。


「透くん」

「何?」

「体育祭だね」

「祭りじゃない。大会だ」

「どう違うの?」

「僕のようなタイプは、さらしものってことだよ」

ファエトンは、悲しそうな顔をしている。


「どうして?」

「スポーツ万能の、君にはわからん」

そう、こればかりは、わかないし、わかってほしくない。


で、当日となる。来なくてもいのに・・・


「さあ、透くん、がんばろうね」

「がんばりたくねーよ」

「どうしたの?ご機嫌ななめ?」

「ああ、傾いてるね」


ファエトン・・・もとい、愛美ちゃんは、スポーツ万能で、

殆どの種目に出場して、テープを切っている。


僕の後ろには、誰もいない・・・


あまりに遅いので、新しいテープを用意される。

ものすごい、嫌味だ・・・


「透くん、大事なのは、全力を尽くすこと」

いつもの励ましも、この日ばかりは、重荷にしかならない。


嫌な時間は、長く感じる。

ようやく終わった。

永遠に思えた。


愛美ちゃんことファエトンは、みんなから祝福を受けているが、

僕は、さすがに辛いので、先に帰った・・・






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