第33話 展望タワー

ファエトンと並んで歩く。

この光景は、すっかり近所の定番となっている。

僕とファエトンの、(表向きの)関係を知っているので、

誰も、冷やかしてこない。


ありがたいが、少し寂しい・・・


「透くん、どこへ連れて行ってくれる?」

「どこへって、買い物でしょ?」

「えっ?」

「荷物が多いから、荷物持ち・・・だよね・・・」

ファエトンは、驚く。


「そっか・・・透くん、私の事を、そんな風に見てたんだ・・・悲しいな・・」

泣きはじめた・・・

違うのか?


「冗談よ。半分はその通り」

「もう半分は?」

「純粋に、デート」

正確には、デートと言わないと思うが・・・


デートとは、男女が待ち合わせをして遊びに行く事。

この、待ち合わせというのが、極めて重要。

相手が来るまでの、ドキドキ感も含まれる。


デートしたことないので、わからないが・・・

ファエトン意外とは・・・


「で、ファエトンさん、連れて行ってほしい場所は、決まってるんでしょ?」

「さすが透くん、その通り」

「場所は、新しく出来た展望タワーですね」

「正解」


僕は高い所はあまり好きではない。

少々、高所恐怖症だ。

タワーとかならまだいいが、つり橋はアウト。

歩けなくなる。


まだ夏休みだが、平日。

仕事をしている人が大半なので、それほど混んでいない


ただ、学生のカップルが多いが・・・


タワーにはエレベーターで行く。

階段もあるが、螺旋階段なので無理。

歩けない。


タワーの最上階に着く。

ファエトンは早速、窓のところへ行く。

(有料の)双眼鏡も、設置されている。


「どれ・・・」

僕は、お金を入れようとしたが、

「あっ、透くん、いいよ」

「いいの?」

「うん。私の視力は、2.5だから」

視力は関係ないと思うが・・・


そういうことなら・・・

僕は後のベンチに腰掛けた。


楽しそうにはしゃいでいる。

やはり、高い所が好きなんだな。


微笑ましくなった。

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