第28話 これから先も

気がつくと、僕は白い道の中央にいた。

周りは真っ暗だ。

道の先はない。


(透くん、後ろを見て)

姿はないが、ファエトンの声がする。

「ファエトン?」

(いいから、後を見て)

言われるままに、後を見た。


そこには、数多くの枝分かれした道があった。


(透くん、今君がそこにいるのは、君がこれまで、

数多くの選択肢を選んだ結果、

それで今の君が、そこにいるんだよ。)

「ファエトン?」

(じゃあ、次は前を見て)

言われるままに前を見た。


そこには、いつの間にか、いくつにも枝分かれした道があった。


(透くん、君はこれからも、数多くの選択肢に出くわす。

どの道を選ぶかは君次第。

でも、どの道を選んでも、間違いはない。

その時の、君にベストな道を選択するように出来てるんだよ)

「ファエトン?」


(後で、後悔するかもしれない。でも、それは違う。

君の選択した道に、外れはないんだよ)


眼を開けた。

いつも通りの、ファエトンがいた。


「ごめんね。えらそうに・・・」

「いや、いいんだ。全く、その通りだな・・・」

「エヘヘ」

悪戯っぽく笑う。


よく聞く話がある。

「親の敷いたレールが、一番安全だと」

でも、その親はいつまでも、生きていない。


もし、親がいなくなれば、その先のレールは自分で敷かないといけない。

果たして、僕に出来るのか?


「透くん、じゃあおまじない」

ファエトンはそういうと、僕を抱き寄せた。

これは・・・ハグ?


「君は、自分だけの宝石を持っているんだよ。

今は、まだ光ってないけど、自力で光らせて・・・

私も、お手伝いをするから・・・」


しばらくの間は、こうしていたかった。

言葉はなかったが、とても温かい・・・


どのくらい時間がたったのだろう・・・

気がついたら、朝になっていた。


ファエトンは、いなかった。

ただ、手紙がおいてあった。


【透くん、見守ってるよ、いつまでもね・・・】


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