第27話 素敵な夢

7月も20日になると、夏休みになる。

瑠奈は、はしゃいでいるようだ。


でも、僕は一応受験生・・・

遊んでばかりもいられない・・・

ていうか、まだ進路を決めていない。


クラスメイトの殆どは進学するらしい。

理由は、「みんなが行くから」

いかがなものか・・・


大学を出ても、その後が怠惰なら、干されてしまう。

世の中は、そうだ・・・


世間体はとっくに捨てている。

世間は、悪い風にしか見ない。

どうせ悪くみられるのなら、やりたいようにしたい・・・


「お前は、進路はどうする」

案の定、両親に訊かれる。

まあ、さすがに放任は出来ないだろう。


「まだ、わからない」

「そっか・・・お前の人生だ。好きに生きろ。

ただ、後悔だけはするな」

「わかった」


最近の親にしては、物分かりがいいと思う。

自分達も、反対を押し切って作家になったから、えらそうに言えないだろう。


「透くん」

ファエトンに呼ばれた。

「何?」

「透くんは、前に言ってたね」

「何が?」

「トラベルライターになりたいって・・・」

少し違うが、まあ、そんなところだろう・・・


「でも、どうして言わないの?素敵な夢じゃない」

「世間の目を気にしてるの?」

「いや・・・そうじゃない・・・」

「なら、どうして?」

僕は、答えが出てこなかった・・・


ファエトンは、しばらく考えているようだ・・・


「透くん、眼を閉じて」

「えっ?」

「いいから閉じて・・・」

言われるままに眼を閉じた・・・


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